ネット上で話題の「北米マフラー」に
独自のノウハウを持つパインバレー
ここ数年ネット上で話題になっている「北米マフラー」をご存知だろうか。北米マフラーとは、ハーレーの米国仕様の純正マフラーのことであり、ノーマルハーレーのスタイリングを維持したまま、程よい排気音量のアップと絶妙なサジ加減のパワー感(抜けの良さ)を実現するとても手軽なカスタマイズ・アイテムとして人気となっているのだ。
この北米マフラーの取り扱いでパイオニア的な役割を果したのが、横浜・本牧の「パインバレー」である。同社は創業当初から米国サンフランシスコを中心に、良質な商品を確保できる独自ルートを確立。膨大な数のユーズドマフラーのなかから良質なもののみをチョイスして日本に直輸入、常時100セット以上を在庫しているという。また、ユーザーのリクエストに応じて、音量や抜けを微妙にコントロールする「パンチアウト加工」の無料実施もパインバレーが最初に行ったものだ。パンチアウトとは、マフラー内部の隔壁に穴をあける加工のことだが、マフラーを傷つけず適正な場所にドリルを通すには細心の注意とノウハウが必要となる。同社では専用の工具を開発することによりこの問題を解決、均一で正確な作業を実現した。さらに、マフラーの連結管を塞ぐことでより強い鼓動感が楽しめる「テイストアップバルブ」なども同社のオリジナル商品として注目されている。
取材協力:パインバレー
〒231-0821
神奈川県 横浜市中区 本牧原 12-1
ベイタウン本牧5番街1階
フリーダイヤル:0120-918-469
FAX番号:045-305-4006
Mail:vh@ypv.co.jp
URL:http://ypv.co.jp
アクセスも容易なベイタウン本牧5番街に移転を完了したパインバレー。北米マフラーなどを装着した試乗車もある。また、初心者向け交換作業マニュアルも完備するほか、希望者には必要な工具も廉価で販売してくれる。
「北米マフラーのことでしたら、フリーダイヤルで何でも気軽に問い合わせてください」と語るパインバレー・テクニカルマネージャーの秋山直輝さん。
純正日本仕様と北米仕様を乗り比べ
さて、その北米マフラーに対する評価だが、オーナーの間でも賛否両論あるようだ。「音、抜けともに心地よい」と評価する声もあれば、「あまり効果が体感できない」という意見も。果たして、噂の北米マフラーは日本仕様のマフラーとどの程度の違いがあるのだろうか。そこで今回はパインバレー協力のもと、日本仕様のノーマルマフラー、北米マフラーのパンチアウトなし、北米マフラーの12ミリ径パンチアウトあり+テイストアップバルブ装着の合計3組のマフラーを乗り比べてみた。条件を揃えるため車両は1台のみ(2007年型スポーツ
スター)を使用し、3組のマフラーを交換しながら試乗。北米マフラーは外観がノーマルそのものなので、音量や音質、パワー感(抜けの良さ)など、あくまでも「体感」できる効果を重要視した。シャーシダイナモで計測された数値的なテスト結果は、最大出力で9.7馬力アップ、最大トルクで1.1kgmアップ(北米・パンチアウトあり)というもので、これも見逃せないパフォーマンスと言えそうだが、実際に試乗した印象は下記の通りとなった。
音量はかなり抑えられているものの、低く歯切れのよい音質はやはりハーレー。スチール製マフラー特有の重厚な響きはノーマルマフラーならでは。ジェントルで上品なサウンドは捨てがたい魅力を持つと再認識した。しかし、今や世界一厳しいとも言われている日本の騒音規制をクリアするための消音と抜けの悪さに関しては如何ともし難く、牙を抜かれているという印象は否めない。多くのオーナーが「あと少し…」と感じてしまうのも致し方ないと感じた。もちろん、日本仕様に満足しているオーナーも数多く、その場合は無理にマフラー交換することをオススメするものではないが…
アイドリング時の音量はノーマルとそれほど大きな違いはなく、これなら近所迷惑にならないと思える絶妙なサジ加減。しかし、走り始めると音量が程よく増幅されているのがわかり実に心地よい。歯切れも良くなり、ハーレーのVツイン本来の鼓動感も存分に味わえる。また、エンジンのレスポンスが格段に良くなり、右手の動きに即座に反応するのでシフトダウンが気持ち良く決まる。口径を絞られた日本仕様よりも開け始めのトルク発生が穏やかで乗り易くなるのも意外な効果。乗り比べれば、このマフラーが本来の「標準」であることが誰でも実感できるぐらいしっくりとくるフィーリングだ。
ワイドオープンした時の歯切れ良さ、音量ともに格段にアップ。テイストアップバルブの装着により独立管となったことで、燃焼一発一発の排気音がクリアとなった印象がある。その一方で、アイドリング時は比較的ジェントルな音量で好感が持てる。パンチアウトなしと比較すると、エンジンのレスポンスに大きな違いはないが、アクセル開け始めのトルクがより穏やかに発生するようになり、エンブレ時のバックトルクも弱まるので、さらに乗り易さが向上する。乗り味自体はパンチアウト無しと好みの分かれるところだと思われるが、あくまでも音を重視するのであればこの仕様がオススメ。また、早めのシフトアップでワイドオープンを好む向きにもこの組み合わせがマッチするのではと感じた。
その特徴と効果について
北米マフラーのドラマチックな吹け上がりとサウンドをさらに強調するのがパンチアウト(穴開け)加工だ。穴の径はオーナーの好みにより調節できるが、スポーツスターの場合、パインバレーのオススメは12ミリ径。歯切れ良さがさらに強調され、元気の良さが格段にアップする。マフラー内部の隔壁に穴を開けると音量が大きくなりすぎることを懸念するかもしれないが、12ミリ径ならばアイドリング時のサウンドはパンチアウト無しと大差ない。これならばご近所の目を気にすることなくツーリングに出かけられるだろう。
マフラー交換は本当に社外品がベストなのか
愛車が奏でる排気音はバイクの魅力を語る上で欠かせない要素だ。特にハーレーの場合は、右手の動きにシンクロする歯切れの良いサウンドがVツインの心地よさと存在感を主張する大きな役割を担っているので、オーナーが自分好みの音を奏でてくれるマフラーを血眼になって探すというのも当然のことと言える。
しかし、サードパーティ製のいわゆる社外品のマフラーの場合、デザインが個性的となるのはもちろんのこと、排気音の音質や音量までがガラリと変わってしまうことが多く、「やりすぎ」になってしまうケースもあるようだ。何本もマフラーを試した
挙句、結局ノーマルマフラーに戻してしまったというケースも多いようで、やはり、やりすぎ感のない「ほどほど」のカスタマイズを好むオーナーも相当数いるのだろう。
事実、低くジェントルなノーマルマフラーの排気音はバイクを知らない人も含めて万人から支持される上品なサウンドと言って良く、これはこれで捨てがたい。この特徴を活かしつつ「あとほんの少し音量が大きく抜けがよければ…」というマフラーを探しているオーナーにとって、パインバレーの北米マフラーは最適な選択肢のひとつと言えるだろう。
北米マフラーはユーズド品だが、1本1本丁寧なクリーニングを施し出荷されるので満足度はとても高い。
北米マフラーに関する独自のノウハウを持つパインバレー