今から110年前とは、どんな世界だったのだろう。
日本では明治36年にあたる 1903年、ヨーロッパにはまだオスマン帝国が存在し、アメリカでは前年のキャデラック社に続いてフォード・モーター社が創業、またライト兄弟が人類初の動力飛行に成功した。そして我が国にとっては、日露戦争開戦の前年であった。人類の多くが豊かさを求め、近代化へと突き進んでいた時代だった。
そんな近代化の黎明期に、アメリカ・ウィスコンシン州の都市ミルォーキーの片隅で、一台のモーターサイクルが産声をあげた。2人の若者 ―― ウィリアム・S・ハーレーとアーサー・ダビッドソンが自転車用バイクエンジンの開発に着手、そこにアーサーの兄ウォルターが加わり、シングルエンジンを搭載したシリアルナンバー1、そしてここから 110年の歴史を刻むモーターサイクルメーカー ハーレーダビッドソン が誕生したのである。
英国車との販売競争や AMF による買収、そして再独立など波乱の歴史を刻んできたハーレーダビッドソンは、今や世界でも指折りのモーターサイクルメーカーとして広く知られるまでになった。1909年の量産化から同社の代名詞となった V ツインエンジンは、歴史とともに熟成を重ね、時代にマッチするよう進化し、世界中の人々に愛されるモーターサイクルの心臓として今なお鼓動し続けている。
110年におよぶ伝説は、ハーレーダビッドソンというモーターサイクルが世界中の人々に愛され続けてきた証であり、それと同時にひとつの通過点に過ぎないとも思う。今回発表された 2013年モデルは、その歴史の集大成とも言えるラインナップなのである。そんな記念すべき今年のモデル群において、特筆すべきポイントをピックアップしていこう。