ハーレーに乗ることが楽しくなる
日本人のための新サスペンション
ハーレーダビッドソンというブランド力が持つ魅力は、計り知れないものがある。100年以上にもおよぶ歴史、アメリカという国が生んだバイク、さまざまなメディアでの登場など理由は多々あるが、バイクに乗っていなくてもその名を知る人は多く、他メーカーとは一線を画したオーラをまとっていると言っていい。さまざまなものが進化し続ける現代にあって、頑なに往年のスタイルを守るその哲学に惹かれたからこそ、私たちはハーレーに乗っているのだと言えよう。
バイクに乗るということ以上の意味を含んでくる“ハーレーに乗る”という事実。カスタムやファッションなど、ライフスタイルそのものをハーレーダビッドソンを基点に展開していくわけだが、それでも原点に戻ればハーレーはモーターサイクルである。“走る喜び、楽しさ”がベースになければ、ハーレーといえど本来の目的―― モーターサイクルとしてのあるべき姿を見失ってしまう。
バイクパーツメーカー ワールドウォークが開発に着手したのが、今回紹介するスポーツスター用リアサスペンションだ。アメリカのモーターサイクルであるハーレーダビッドソンが基準とするライダーはアメリカ人であり、平均的な日本人体型と比べると、身長、体重ともにひと回り以上も上だと考えていい。「日本人に合った仕様」にするには何ヶ所かハーレーの仕様について検討するポイントがあるのだが、ワールドウォークは「フロントフォーク」「インジェクションチューニング」「リアサスペンション」の3点を改善ポイントとし、そのひとつリアサスペンションについて、新商品をこのほど完成させた。
SHOP DATA
住所/東京都江戸川区南葛西2-17-2
Tel/03-5878-1918
Fax/03-5878-1897
営業/
[平日]10:00~18:00
[土・祝]10:00~17:00
取材担当者
VIRGIN-HARLEY.com編集部
田中 宏亮
2008年式 スポーツスター XL1200Rを愛車に持つ当サイト編集担当者。フルペイントや軽量化など何度かカスタムを繰り返し、現在はその愛車をサーキットに持ち込むなどハーレーライフの幅を広げることに腐心中。一方で、アメリカ取材にてツーリングモデルの魅力に目覚めるなど、ハーレーの世界にどんどんハマっていっている。
本来サスペンションが果たすべき役割とは、走行時に遭遇する段差やギャップが生み出す衝撃を緩和させること。そう聞くと「動きが柔らかいのが良いのかな」と思ってしまうところだが、それだけでは不十分。ただ柔らかいだけだと、衝撃こそ吸収するものの、いつまでもバネが跳ね続け、上下運動がなかなかおさまらないので、ライダーはもちろんバイク(エンジン)にも小さくない負荷をかけることとなる。つまり良いサスペンションの条件とは、その不快な衝撃を吸収しつつ、短時間でバイクを安定した状態に戻してやれること、である。
ポイントは“必要にして十分”
申し分ないコストパフォーマンス
ハイエンドなものになればかなりの価格になり、安価なものとなるとサス本来の役割に対して疑問符を抱いてしまう――。“ユーザーからあまり求められなかった”という背景からか、ハーレー用サスペンションを見るとこうした商品群だったように思う。ワールドウォークは、「ハイエンドなものでなくていいい、しかしサスペンション本来の役割を果たせる最低限の機能を持った製品を」と、このWXL-10を開発した。
注目すべきは。320ミリという長さの仕様のみというところ。「長いか、短いか」をサス選びのポイントとする方にとっては足つき性を懸念されるかと思うが、実は一般的なライダーが乗車した状態(いわゆる乗車1G)で沈み込むことを前提に設計されているので心配無用。ここに車高調整機能とプリロード調整機能が搭載、さらにフルオーバーホールまで可能としながら標準モデルの販売価格が49,800円(税込)と、コストパフォーマンスも申し分なし。
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ありそうでなかった絶妙なバランスの一品
目的がマッチすれば最高の相棒になりうる
“サスペンションの選び方”は、“愛車との付き合い方”とイコールだと思う。
ハーレーダビッドソンというモーターサイクルには、ファッション性やカルチャーといったライフスタイルを重視する雰囲気が備わっている。チョッパーといったカスタムカルチャーやハーレーに乗るときのファッションなど、他メーカーとは違った要素を有しているのがこのモーターサイクルで、だからこそハーレーの楽しみ方は千差万別なのだろう。
一方で、サスペンションとはバイクのスポーツ走行性能を左右する重要な部位だ。上記の図解にあるとおり、サスペンションの動きが煩雑だとライダーやエンジンへの負担は小さくない。柔らかく衝撃を吸収し、迅速にそのエネルギーを解放してやる。200キロ前後の車体とライダーの体重、そして走行時に生まれるGなどが合わさったパワーが前後のサスペンションにかかっていくわけだから、サスペンションがしなやかに働いてくれなければ、快適なライディングを楽しむことができない。
ハーレー用サスペンションという観点でマーケットを見渡してみると、高性能だけど高価か、安価だけど性能面はあまり期待できないものか、といった両極端な印象が否めない。もちろん高性能な製品には“お値段以上”の価値が備わっているわけだが、現時点では「性能面を求めるなら、そこから上しかないから」という選び方を感じなくもない。フォルムは維持しつつも着実に進化している現行モデルをより楽しむには、最低限の機能を備えつつ、値段が抑えられたものがいいのでは――。ハーレー専門媒体を担当している人間として、マーケットのちょうど中間に位置するような製品があればいいなぁ、と思っていた。
今回ワールドウォークから登場したWXL-10 アジャスタブルサスペンションは、“ありそうでなかった”ちょうど良い塩梅の製品だと感じた次第だ。それも見た目だけで判断したわけではなく、実際にインプレッションで体感し、嬉しい驚きを重ねながら抱いた思いだ。
それでは、2008年式 XL1200Rでの比較インプレッションを検証してみよう。まず注目していただきたいのは、バイクにまたがったとき。乗車1G(ライダーがまたがって体重がバイクに乗せられた状態)で1センチほどサスペンションが沈み込む設計になっていて、ノーマルと比べても足付きになんら違和感はない。それよりも、撮影した足付き比較の写真を見て、明らかにノーマルよりも車体後方が沈んでいるという事実に驚きを隠せなかった。車高調整機能を有しているものの、320ミリの製品のみというところに、「ローダウン傾向が見られる現代のハーレーの世界にマッチしづらいのでは」という懸念を当初は抱いていたのだが、これならXL1200N ナイトスターやXL883N アイアン、XL1200X フォーティーエイトに装着しても足付き性に大きな違和感を抱かないだろう。
リアサスペンションということで、波状路や減速帯、そのほか歩道並みの高さから道路に降りる(というか落ちる)など、悪路での走行実験をいくつか行った。結論から言うと、「きちんとダンパーが効いている。悪路を走れば当然車体や体にストレスがかかるが、安定した状態に復元するまでの時間も早い」ということ。街乗りを想定した極端なシチュエーションでの実験だが、おそらくツーリングで試してみても同様の恩恵を得られるに違いない。
このWXL-10よりも高性能なアフターパーツがあるのも事実で、より快適なライディングを求めるのであれば、そちらを選択肢に入れるのもアリだろう。そこでポイントとなるのは、冒頭で申し上げた「愛車との付き合い方」に他ならない。もし僕がこのWXL-10をオススメするとすれば、「普段は週末に友達と日帰りツーリングに行ったり、街のカフェに走りに行ったりする程度で、ロングツーリングは年に何度か。高性能なものまで求めていないけど、現在装着しているサスでは走行時のストレスが大きい」という方だろうか。
開発者である相京氏は、「ひと昔前の高性能モデルを再現した、という表現が適切」と笑うが、それこそがハーレーの現行モデルを日本という土壌で楽しむうえで“必要にして十分”な性能を有しているのだと考える。このWXL-10は、ハーレーのマーケットに新しい風を吹き込むのではないか、と期待している。
もっと楽しくハーレーに乗りたい!
その一心で商品開発に着手しました
バイクには20歳のときから乗っていて、今のハーレー(スポーツスター)に乗るようになったのは、このワールドウォークを立ち上げるときのこと。もちろん商品開発のためという名目はありましたが、やっぱり人生で一度はハーレーに乗りたい!って思いまして(笑)。
ワールドウォークは、熟練した技術を持つ職人の開発力を武器に、ウェブを使った商品販売を展開することを強みとしています。ウェブでの販売を軸としたのは、ユーザーさんとの接点を直接持てることにメリットを感じたから。例えば私たちとしてベストと思える商品を世に送り出すと、それに対するユーザーさんの意見が必ず返ってきます。これが、同商品の改良や次の新商品開発へとつながり、現在に至るのです。自社でも高い技術を持つ職人や開発のための機材を多く取り入れていますが、これに加え、バイク用パーツを手がけられるさまざまな職人とのネットワークがあるので、ユーザーさんの声にダイレクトに応えることを信条に、ワールドウォークは運営されているのです。
今回のアジャスタブルサスペンションの開発も、ひとりのハーレー乗りである僕が違和感を覚えたことがはじまりでした。ちょっとした段差を越えるときでも、体が大きく跳ね上がるほどの負荷が発生します。もちろん市場に目をやれば、さまざまなタイプのサスペンションが販売されているのですが、“帯に短し襷に長し”で、必要にして十分な性能とコストのサスペンションは、ありそうでなかった。そこで、「じゃあウチで作れないか」ということで、パーツ開発者や某サスペンションメーカー勤務経験者と協議を重ね、一年におよぶ開発期間を経て、このアジャスタブルサスペンションが誕生したのです。
その性能はハイエンドなものではありませんが、“最低限これだけのものは欲しい”という車高調整機能とプリロード調整機能を備えながら、市場を見ても決して高くはない販売価格でのご提供ができたと思っています。いちユーザーとしてこの製品を試してみたとき、本当に自分が思い描いたものが作れたという大きな喜びが湧いてきました。まずはスポーツスター用ということで、世のスポーツスターオーナーの皆さんにはぜひ注目していただきたいと思います。
「快適なバイクライフのため」という社としてのコンセプトは変わりません。ハーレーだってもっと快適に走ることを楽しめるバイクだと思いますし、ワールドウォークとしてもっといろんなことを手がけられるはずです。今も新しい商品開発を進めている最中なんですよ。
品番/[メッキスプリング]wxl-10m [ブラックスプリング]wxl-10b
メーカー希望小売価格(税込)/49,800円
全長/320mm
機能/車高調整機能[320mm~295mm]、プリロード調整機能[無段階調整機能]、
減衰力調整機能[27段階調整]
※メーカー推奨のセッティングで出荷されます
[DATA]
車高調整機能:305ミリ (1Gで293ミリ、乗車1Gで290ミリ)
プリロード調整機能:2ミリ
減衰力調整機能:最弱状態から8クリック
■オプション設定
アジャスタブルサスペンション カラーオーダープラン
品番/wxl-10color
メーカー希望小売価格(税込)/59,800円(本体含む)