サドルバッグ、なかでもデグナーのアイテムが高い評価を受けるのには理由がある。それは純粋な「道具」としての優れた利便性だ。バックパックであれ、ウエストバッグであれ、どんな小さな荷物でも身体に装着していれば少なからずライディングを阻害し、肩こりや疲労の原因となりうる。愛車にサドルバッグがついていればそうした問題からは完全に解放され、さらに荷物が低い位置に積載されるため、バイクの安定性も損なわれない。これらの基本的なメリットはどんなサドルバッグでも同じだが、デグナーはここからが違う。
まず、デグナーが2輪業界で初めて採用したワンタッチ金具(バックル)の使いやすさ。サドルバッグにマッチするベルトバックルを残しながら、開閉は実にスムーズ。まったく力を必要としないため、ネイルが気になる女性ライダーにも最適だ。次に構造。デグナーのバッグ内部にはPEボードが内蔵されており、大容量モデルをチョイスしても型崩れの心配がない。さらに、ハーレー純正のフェンダーレールのほか、専用サドルバッグホルダー、サードパーティ製レールを使用しての装着にも対応しており、車両を選ばないという点もデグナーらしい設計だ。
そのほか、標準装備のレインカバーやベルト類、ワンタッチ金具など、多くのパーツが補修用として単品購入できる点も心強い。高い利便性はもちろん、ユーザーが長く使うであろうことを想定した製品の設計とサービス。ベテランをも納得させてきた道具としての実力に死角はない。
デグナーと言えば、今やオートバイ関連用品のブランドとして非常に有名な存在だが、その歴史は1987年、京都山科の50平米ほどの店舗から始まったという。バイク用レザースーツを主力商品としつつ、その製造技術を活かして徐々にレザー製のアパレルや用品、小物などを生産するようになる。そして、その取り扱い商品が増えるにつれて我々一般ライダーへの認知度も高まっていき、今のようなブランドに成長したのである。
この24年の歴史のなかで特筆すべきは、デグナーは素材と真摯に向き合ってきたということ。近年では京都という地の利を活かして、金襴織物と革のコラボブランド「花山」を立ち上げるなど斬新な動きを見せているが、その一方で世界中のタンナー(皮革製造業者)と地道にコンタクトをとり続け、良質な素材のみをチョイスして製品化しているのだ。
優れた皮革製品は長年の使用に耐え、使い込むほどに色と表情が変化して味わいが増すという愉しみがある。しかし、それは「なめし」から「仕上げ」に至る何十もの工程を丁寧に施されてきた良質な皮革にのみに与えられた特権。だからデグナーは素材に徹底的に拘るのだ。
わかりやすいキャッチーな要素ではないが、こんな地味な部分にもブランドとしての誇りが感じられる。
クイックな開閉を可能にした
ワンタッチ金具
デグナーがオートバイ業界で初めてサドルバッグに採用した、オリジナルのワンタッチ金具。バックルで長さ調整もできるうえ、確実なロック性能とスムーズな作動性を兼ね備える。
良質レザーを
世界中のタンナーから調達
「タスマン」に採用されている希少なアメリカバイソンのレザー。デグナーが世界中のタンナーと太いパイプを持つ証だ。野性味溢れるシボと独特の艶が最大の特徴となっている。
標準装備のレインカバーは
専用設計
デグナーのレザーはタフだが、それでも雨天は気遣ってやりたいもの。各モデルにサイズ専用のレインカバーが標準装備されるのは有り難い。専用設計のため、走行中のバタつきも少ない。
豊富なサイズ展開も
魅力のひとつ
デグナーのサドルバッグは豊富なサイズ展開も魅力。実に4L~32Lまでをカバーしているので、自分のデザイン的好みや用途にマッチしたぴったりの容量をきっと見つけられるはずだ。
デグナーのサドルバッグはデザインが優れているということでも定評がある。すべてのアイテムは車両と一体化した状態でデザインが完成するように配慮されており、あたかも装着しているのが当たり前であるかのようだ。
素材の風合いやステッチ、ベルトや金具のデザインなど、優れたディティールの集合体は愛車の一部として眺めていても一切の破綻がない。バッグの裏側や底、内張りまでも完璧に仕上げられ、ハーレーのデザインを崩すどころかオーナーのセンスや拘りを示す良いアクセントになる。
そして、より個性を主張したいライダーのために生まれた派生ブランドが「スクエアフィート」と「タスマン」だ。タスマンは、西部開拓時代の乱獲により絶滅寸前にまで追い込まれたという貴重なアメリカバイソンの皮革が素材。野性味溢れるシボとそれに負けない風格あるデザインが最大の魅力だ。
一方、スクエアフィートの革は昔ながらの「天然タンニンなめし」で丁寧に仕上げられており、丈夫且つ風合い豊かな革を編み込んだバスケットレザーがメイン素材。スタイリッシュなデザインが持ち味だ。荷物を入れるという道具でありながら、オーナーの拘りを演出するデザイン性も兼ね備えるデグナーのサドルバッグ。それは、レザーで作られたカスタムパーツだと言えるのかも知れない。
自分の愛車に余計なモノは一切つけないという美学にも共感できる点は多い。しかし、あまりにストイックに接していると愛車との関係に疲れてしまうこともあるはずだ。スタイルを気にして、頑なにバックパックやウエストバッグなどに携行品を詰め込んでツーリングしているライダーも多いが、今シーズンは少し肩の力を抜いて愛車と旅を愉しんでみてはいかがだろうか。
たとえ僅かな量であっても、バイクに荷物を気軽に積めるという意味はとてつもなく大きい。バッグを身につけない爽快感、普段なら携行しない荷物を持つ余裕…。愛車の挙動も心なしか軽く感じられ、走行中もこれまでとは違う視界が広がるはずだ。ツーリングだけではなく、ちょっとした買い物など、これまではクルマで出かけていたような場所にもバイクで行くようになるかもしれない。
デグナーのサドルバッグを一度使ってしまうと手放せなくなってしまうオーナーも多いというが、それはあらゆるシーンで愛車と過ごす時間がより濃密になるからに違いない。道具としての高い利便性、愛車の質感にバランスする厳選された素材、カスタムパーツと言えるほどの優れたデザイン性…。もはや装着しない理由が見当たらないほどデグナーのサドルバッグは魅力的だ。