これは一年生の実習の中でもナンバー1の難易度です。やり始めると、大抵の学生たちは「もう無理」、「もうやめましょう」と言い出します。なぜかと言うと、ハーレーのエンジンは空冷OHV・V型2気筒が一般ですが、今回は水冷DOHC・V型2気筒エンジンなのです。なんと!スーパーカーで有名なドイツのポルシェと共同開発したエンジンなのです。
SSTもかっこいい。
高出力が自慢なのですが、構成している部品数がとにかく多い。分解・組立には当然工具が必要となり、ハーレーで指定されている工具は、アメリカの Snap-on (スナップオン)。でも実は、このツールだけでは作業ができません。車種別毎に専用の特殊工具が必要なのです。同じアメリカの KENT-MOORE (ケント・ムーア) です。ちなみにハーレーでは特殊工具とは言わずに「SST」(スペシャル・サービス・ツール)と呼びます。今回のエンジンの分解・組立には、この「SST」がおよそ 40 種類以上必要になります。
これがまた高価な代物で、この代金だけでハーレーを一台購入できます。ハーレーと同様にとても綺麗でかっこいいです。まあ、「SST」がなくても、やろうと思えば作業はできるのですが、サービスマンの技量によって組みつけの精度に差が出てしまうのです。つまり「SST」は作業精度を均一化させるため、また作業効率を上げるために必要な工具なのです。国産車では多数存在しません。中には、「こんなものまであるの?」と思うような工具までありますが、ハーレーの品質へのこだわりを垣間見ることができます。
VRSC 専用の SST。
ところで、学生には先ず「どの SST をどこで使うか」を覚えてもらわなければなりません。全車種で 400 以上もあります。これを使い分けていくのです。まずはマニュアルをしっかり読みながら作業をしなければなりません。「ここにこの SST?」では困りますので。実習のために必要な「SST」を準備する私も大変です。とても、学生は大変な苦労をして完成させるので、組み付けてエンジンが始動したときの喜びようといったら別格です。
残念ながら、エンジンが始動できなければやり直し。全員が無事に終わるまで、私も関わっていないといけないので、私自身も体力的にかなりハードなのでした。