日本では入手困難なリークダウンテスタ。
今回はビッグツインエンジンの脱着授業をご紹介します。この授業では、安全で正確な整備作業ができるようになることを目的とします。整備をするとき、エンジン、トランスミッション、サスペンションなどを降ろして作業することがあります。これら重整備を行うときは、自分と周囲の安全に十分注意をして行うことが重要になります。エンジンを降ろす前に正常に機能しているかどうかチェックが必要です。エンジンはガソリンと空気を圧縮させ、これに電気火花で点火し、燃焼させることによって動力を発生させています。ここでまず“コンプレッションゲージ”なる測定器を使用して、圧縮の数値が規定値内にあるかどうかを点検します。
ところで「圧縮」とはどの位の倍率になると思いますか?2倍?3倍?……答えは10倍前後です。牛乳パック1000mlの空気が100mlまで圧縮されることなのです。高圧縮ですね。もしこの圧縮の数値が規定値から外れている場合、“リークダウンテスター”を使用して、不具合箇所を推定します(この“リークダウンテスター”、なんと日本では購入できません。ハーレー専科ですので頑張って?揃えました)。不具合箇所は3箇所しか考えられません。①吸気バルブ ②排気バルブ ③ピストンリングです。圧縮した空気をシリンダー内に送り込むと、3箇所のいずれかから空気が漏れてきます。耳を澄ますと風船から空気が漏れてくるような音がします。
コンプレッションゲージによる測定。
さて、いよいよエンジンの脱着です。取り外す順序、取り外し状態、部品の保管等、現状を忘れないようメモを取ったり写真を撮って記録します。重量物なので安全に、かつ傷をつけないように注意します。粘着力を落としたガムテープ(そのまま貼ると塗装がはがれてしまう恐れがあるので、つなぎに一度張ります)やウエスでエンジンやフレームを保護してから、2人がかりで慎重に降ろします。80キロぐらいはあると思います。エンジンを降ろした車両は骨組みだけに……びっくりするくらい軽くなります。学生たちも「軽い!」と感激していました。この後エンジンを元通りに取り付けます。時間内に終わらなかった学生も放課後自主的に作業を続けます。「2年生になって意識が変化してきたな」と思う瞬間でもあります。