ひとくちに「ツーリング」と言ってもシチュエーションはさまざま。何泊もかけて走るロングツーリングや日帰りで行けるショートツーリングのほか、前回コラムで想定したソロツーリングと今回のタンデムツーリング。特にご夫婦やカップルなど、パートナーをパッセンジャーとして乗せる機会が多いライダーは気になる点でしょう。ふたりで快適なツーリングを楽しむためのセッティング、お教えします!
前回は標準型である街乗り仕様としていたリアショックを、ソロツーリング仕様にセッティングしましたね。おさらいとして述べますが、ツーリング先では街中とは違う道路状況に遭遇することが多いですから、通常仕様よりアジャスターを2回転ほど上にあげてしなやかな動きを生むセッティングとしました。さて今回は荷重がアップするタンデムに合わせます。あ、体重のことは言っていませんのでご安心を(笑)。
「タンデムする」ということは、乗車する人間が2人になるわけですから、当然バイクへの荷重がアップします。しかもパッセンジャーの乗る場所がリアフェンダー上部ですから、リアショックへの負荷は格段にあがりますよね。そのため、ソロツーリング時のようなしなやかな設定にしたままだと沈み込みが深くなり、ストロークし切ってバンプタッチ(つまりサスの沈み込みを使い切ってしまうこと)してしまうことになります。そうなれば衝撃がダイレクトにパッセンジャーに伝わる最悪の現象を引き起こすわけです。
もうお分かりかと思いますが、2人分の体重を支える設定にせねばならないので、ソロツーリング時とはまったく逆の、硬めのセッティングにする必要があるのです。前回のソロ設定時にはバネレート(バネが跳ね返る力)を伸ばしてしなやかな動きを目指しましたが、今度はアジャスターを下へと巻いていき、バネレートを硬くして通常よりもストロークを抑えてやります。これにより、2人分の荷重に耐えられる強さが得られるのです。右のイラストをご覧いただければ一目瞭然ですね。
今回の例は、例えばキャンプツーリングなどで多くの荷物を積載する方にとっても流用できる知識だと思いますので、ぜひ取り入れてみてくださいね。
「セッティングを硬めにします」と聞いたとき、以前まで付けていたリアショックの衝撃を思い出したりして少々不安でしたが、実際にパッセンジャーを乗せて走ってみても特に妙な沈み込みもなく、言われていた硬さもまったく感じなかったですね。後ろに乗った人も「すごく滑らかで突き上げるような衝撃もないし、快適だった」とのことでした。これほど違和感もなく、ライダーとパッセンジャーが快適に乗ることができるというのは、“さすが”オーリンズのリアショックと言ったところですね。
繰り返しになりますが、タンデムツーリングの場合はライダーだけでなくパッセンジャーも快適かつ安心して乗れることが重要ですから、お互いが気持ち良く走りを楽しめる状態にせねばなりません。そうなるとリアショックだけでなくシートやステップ位置、シッシーバーなどプラスアルファの装備が重要にもなってきます。そういった状況下でリアショックが担う役割は非常に大きく、こうしたセッティングひとつでパッセンジャーのストレスを取り除くことができるのです。タンデムを楽しまれることが多い方は、ぜひ彼ら(彼女ら)の声に耳を傾け、その乗り心地が快適かどうか、気遣ってあげてください。
若い頃からさまざまなバイクを乗り継いできた、根っからのバイク好き。現在はスウェーデンのサスペンション『オーリンズ』のアジア・ディストリビューションである『カロッツェリアジャパン』の社員として、同社が運営するオーリンズ・サスの販売店『ウノパーウノ』尾山台店の店長を務める。