北海道最後の夜は、日本海を望む丘の上のキャンプ場。テントを張り、飯の支度も終わった頃に空がオレンジに染まり出した。海に沈んでゆく夕陽を眺めながら、カメラ片手に缶ビール。一本空けた頃に水平線の下に太陽は隠れる。雲が多い空は落ちた太陽の光を受けてオレンジからマゼンタ、そして数分後には夜空の深く暗いブルーに変わっていく。いろいろな場所で何十年間、何度となく見ている数分間の空のドラマ。旅をしているんだ、ということを実感できる時間なのかもしれない。
初めての長旅で北海道に来た頃は、こんなにゆっくりと夕陽や夜空を眺めた記憶はあまりない。走るコト、楽しむコトにしか興味がなかったのだろう。二十数年という歳を重ねて心や自分的時間に余裕ができたのか? お気に入りのキャンプチェアに座って、空を眺めながら缶ビールを数本空ける。約10日間、長いような短いような旅だったけど、濃い時間が過ごせたのだろう。心残りなのは、やはり天気。でも、それで良いのだ。また来年、この北の大地を走ろうと決めたから。
ツーリングマガジン アウトライダー など二輪誌を中心に雑誌、広告等で活躍中のカメラマン。愛車は 2010年式 FLTRX ロードグライドカスタム。日本の古典芸能やアメリカインディアン等の文化から多大なる影響を受ける。バイクによる旅の写真や水中写真をライフワークとし、日本やアメリカ、ルート66などの風景を自らバイクで走って撮影するスタイル。「職業=旅人なんて書きたいけど、そこまで旅できていない」という。なぜか誌面に顔を出していること多し。