こんにちは、道祖神の菊地です。さて、ツアー2日目からいよいよツーリングがスタートします。この日は、ミュンヘンからアウトバーンを走り、オーストリアに入国。冬季オリンピックも開催され、中世の面影も残す街インスブルックを目指します。かの有名なアウトバーンの様子や交通事情、独特のルールなどについても触れますので、これから海外ツーリングを予定している方は読んでおいて損はないと思います。それでは始めましょう。
期待に胸膨らむ出発の朝、我々一行はBMW本社のレンタル部門で、予約しておいたオートバイを受け取ります。新車と見間違うほどコンディションの良いBMWがズラリと並んでいるので、見ているだけでも壮観です。係員からそれぞれの車両の取り扱い説明を受け、車検証を受け取るといよいよ旅がスタートします。BMW本社からは5分ほどでアウトバーン。本線に入るための加速車線は十分な距離が確保されているので、安全に本線に合流することができます。また、標識が大きく見やすいので、ローマ字さえ読めればまず迷うことはありません。もちろん、事前に詳細な地図をもとにしたルートのブリーフィングを重ねるのは言うまでもありませんが、さすがヨーロッパと思わせる部分です。
日本では「アウトバーン=速度無制限」と思われがちですが、実際は交通量の多い地域やカーブが続くエリア、インターチェンジやジャンクション付近などでは100キロから120キロの制限速度がありますから注意が必要です。ツアー1回目の集合場所はそのアウトバーンで最初のサービスエリアに設定されており、ここではいつも参加者の皆さんが興奮気味で話も弾みます。我々が160キロで走っていても、ベンツやポルシェなどが200キロオーバーの猛スピードで追い抜いていくというシーンが繰り返された後ですから当然かもしれません。ちなみに、流れている車両の平均速度は120キロ以上だと思われます。
しばらくアウトバーンの走行を楽しむと、いつの間にか国境を越えてオーストリアへの入国です。この日の目的地インスブルックはイン川のほとりに位置しており、周りを山々に囲まれた美しい街です。中世の面影を色濃く残す市街に入ると、時おり現れる石畳が気分を盛り上げてくれます。しかし、舗装路とは違い滑りやすいのでスリップには十分な注意が必要。ホテルに到着してチェックインを済ませたら、地図を片手に市内散策に出かけることをオススメします。荘厳な16世紀の街並みですから、ツアー参加者の皆さんも写真撮影に夢中です。一通り撮影を終えたら、宿のスタッフに教えてもらった若者で賑わう食堂へ。夕食は地元の名物料理を楽しむとしましょう。ちなみに、ツアーのホテルは地域によって3ッ星から5ッ星までをご用意しています。このクラスなら快適なホテルと言えますのでご参考までに。当ツアーを新婚旅行として参加された方にも好評です。
翌朝は時差ボケの影響もあるのでしょうか、日の出と共にカメラ片手に町を散歩される方も。薄暗くても安心して歩ける治安の良さを実感します。さて、出発の準備を整えたら朝食です。ヨーロッパでは、ホテルで食べるビッフェスタイルの朝食も楽しみのひとつです。季節の果物や豊富なチーズ、ハムなどがとても美味しく、ついつい食べ過ぎてしまことも。おなかが満たされたら今日も出発です。いつも出発は8時半頃ですが、天候や走行距離によって時間は変更になることもあります。今日からはいよいよ憧れの地、アルプスを目指して走り出します。
この日は、インスブルックから南下してブレンナー峠を越え、イタリアに入国。地中海まで注いでいるアディジェ川を西に見ながら、さらにいくつかの峠を越え、アルプスに囲まれたステルヴィオ国立公園を目指します。街を抜けると交通量はグッと減り、牧草地帯にすばらしいコンディションの道が続きます。片側1車線のローカルルートでもその多くは制限速度80キロと高速。日本では考えられないですね。ところが、村の入り口から制限速度は一気に40キロに。このメリハリは日本にはないので注意が必要です。ヨーロッパでは都市部を除くとほとんど信号機がなくなり、代わりにロータリーが現れるようになります。ロータリーとは、一方向に回転しながら進路を変更する環状交差路のことで、進入は常に左車線側の車両が優先というのがルール。しかし、他の車両が来ていない場合は止まる必要がないので、田舎道ではスムーズな進行が可能です。これも日本では見られない光景です。
目的地が近づくとアルプスのすばらしい景色に目を奪われます。しかし、高度が上がるにつれて気温は下がってきますから、ライダーにはしっかりとした装備が必要です。周りの山々には残雪が現れ、近くには氷河も。峠にはシーズン中のみ営業するカフェがオープンしますから、是非お試しください。我々もここでヨーロッパ中からアルプスの走行を楽しみにやってきた多くのライダーに遭遇します。BMWに乗った日本人は珍しいのか、片言英語で話しかけられることも。でも、たいてい質問は決まっていて、「そのバイクはどうしたの? どこから来たの?」です。「ミュンヘンのBMWでレンタルした」と答えると、皆納得・・・交流が深まっていきます。ちなみに、地元の若者は日本製のスーパースポーツですが、中高年のカップルはBMWに乗っていることが圧倒的に多いです。しかし、老若男女共通しているのは、上下とも皮のスーツをきっちりと着こなし、決してジーンズのライダーはいないこと。ライダーの安全に対する意識が高い証拠ですね。(続く)
神奈川県横浜市生まれの49歳。1980年9月に道祖神に入社し、バイクツアーの企画業務をこなしながら多くの国を訪問している。現在その数は163カ国、通算の滞在日数は5000日に及ぶという旅の達人