VIRGIN HARLEY |  第6回 エンジン廻りからの異音メカニック芦田のメンテナンス講座

第6回 エンジン廻りからの異音

  • 掲載日/ 2009年11月19日【メカニック芦田のメンテナンス講座】
  • 執筆/ハーレーダビッドソンシティ中野店 メカニック 芦田 剛史

最近同僚のメカニックに「飯を食うのが異常に遅い」と言われ、掃除の時間に給食を食べる少年の気持ちを知った芦田です。皆様いかがお過ごしでしょうか? 今回ご紹介するのは、メカニック中級編の<異音修理>です。ご飯を食べるのは遅くとも、お客様が来店して駐車場に止めるまでにこの診断を頭の中で終えたので、まずはヨシとしたいところです!

今回のクランケ:2001年式 FXST ソフテイル・スタンダード

ハーレーメンテナンス講座の画像

症状:エンジン廻りからの異音

6カ月点検での入庫で点検しましたが、何やら耳障りな音が…。気になる、気になりますよぉ。クラスで気になる女の子が隣りの席に座ったときほど気になります。車両の距離は5万キロを超えるなど、コンスタントに距離は稼いでいるようです。今回はメカニック中級編!<異音解析>の修理作業になります。

陥りやすいポイント:耳を澄ませば聞こえてくる奴の雄叫び

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いきなり意味不明な見出しで申し訳ありません! しかしながら、この修理でもっとも重要なポイントをお伝えできれば、と思います。今回のようなケースでもっとも強力な武器となるのは<経験値>です。以前に「経験さえあれば1秒で粗方の的を絞れます」と申し上げましたが、「そんな経験したことないさ!」という場合、「発生場所」「音の質」「大きさ」「間隔(パルス)」、そして「いつ」「どんなときに」「どのように」「何をしてから?」というところまで解析していきます。 ここで場所を間違えると逮捕されます(ウソです)。

補修手順を見てみよう!

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【01】突けば直る工具…ではなく、サウンドスコープです

兎にも角にも、問題がある場所が分からなければ話になりません! コンパ会場を探すほどのテンションで徹底的に探索していくのです! ボルトの頭など、アラユル場所から異音の発振源を推察していきます。
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【02】虎穴に入らずんば虎子を得ず

最少の時間で最大の確信を抱いたとき――つまり異音発生ポイントを見つけたとき、まさに確認に入る瞬間です。好きな子に告白するときと同じ。連続音、金属音、右側、常時、という材料からカムチェーンと確信。
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【03】走れますかいな?

きました、これです。旧型のテンショナー装着車は特にケアが必要で、使用状況にもよりますがこれが結構減ります。外国のお客様でしたが「ハシレマスカイナ?」と仰ったので「No way!」とお答えしました。
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【04】ガッツリ、ネットリ交換作業を開始!

まずはタンクを外し、ロッカーアームを分解して、プッシュロッドテンションをフリーにします(詳細はサービスマニュアルをご参照ください)。オイルリフターが下に下がらないように配慮しましょう。
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【05】落とすな危険!

奥様から落とされる雷より大きなダメージを生みますので、決して落とさないように慎重にかむサポートプレートを取り出します。可愛い赤ん坊を抱くように、そっと、そっとですよ☆ 私は抱いたことがありませんが。
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【06】視野を広く持って

ここから、他の部分にも目を向けます、カムベアリング、オイルポンプ、カム室…といった場所に異常がおよんでいないか、すべて入念にチェックします。他に兆候があれば、再度近い内に開ける羽目になります。
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【07】また会う日まで…

相当な割愛に驚愕されるかもしれませんが、後は組み戻すだけです。ここで重要なのは「忘れ物」。組み立て時には忘れ物をしやすいのです。できればアッセンブリーオイルを使ってベアリング等に給油してください。

防ぐためのメンテのツボ

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見えない拘り…

今回のトラブルケースは、割りと一般的に発生しやすい症状です。スプリング式テンショナー使用モデルはオイル交換頻度にもよりますが、端的に言ってしまえば消耗品の領域。現行モデルに関しては油圧式になっており、シューの材質も改良されておりますので、さらに長期的に使用することができると思われます。もし予算的かつパフォーマンス的に許されるのであれば、ぜひ現行モデルのモノか、S/E製のサポートアッセンブリーがオススメです。オイルポンプの送還量も強化されていますし、メリットもたくさんあります。言うことナシですよ!

プロフィール
H-Dシティ中野 メカニック 芦田 剛史

広畑日産自動車・H-D事業部で経験を積み、25歳のときに「アメリカのディーラーに勤めたい」と単身渡米。アリゾナ、ラスベガスと約2年間におよぶディーラー勤務を経て帰国。現在はH-Dシティ中野店でメカニック主任として活躍中。V-RODでドラッグレースに興じるなど、幅広いハーレーライフの楽しみ方を知っている。

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