はじめまして。「V-Factory」の呑海と申します。今回はシート選びの解説をと「バージンハーレー」さんより依頼され、担当させていただくことになりました。よろしくお願いいたします。
ショップやミーティングなどの駐車場でハーレーを眺めるとよくわかりますが、シートを交換しているハーレーは珍しくありません。シートを換えるだけでハーレーの雰囲気はガラリと変わりますし、乗ったフィーリングも大きく変わりますから当然のことなのでしょう。しかし、海外のメーカーから国内のショップオリジナルまで多くのラインナップがあるので、どれを選べばいいのか悩んでしまいませんか? 革の張り方、デザイン、スポンジの厚み、スポンジの材質…などなど選ぶ基準はたくさんありすぎますよね。そこで、今回はシート選びの基準をいくつかご紹介いたしますので、皆さんが何を基準にシート選びをすればいいのか、じっくりとお考えください。
シートは大きくわけるとシングルシート、ダブルシートの2種類しかありません。しかし、それぞれのジャンルの中に「スタイル重視のシート」、「乗り心地重視のシート」、「両方のバランスが取れたシート」があります。皆さんのハーレーの乗り方によって最適なシートはそれぞれ違うでしょう。1日で100kmも乗らない人はスタイル重視で選んでもいいでしょうし、ロングツーリング中心の人は乗り心地を軽視してはいけません。まず、皆さんがハーレーとどんな風に付き合っているのかを思い出してみてください。シングルシートとダブルシートのご説明に戻りましょうか。
リアフェンダーがシートで隠れず、リア周りをスッキリさせることができるため、人気があります。「たまにはタンデムもします」という方のために、メーカーによってはタンデム側だけのシートがシングルシートのオプションで販売されています。また、「ピリオンパッド」という吸盤で貼り付けるタイプのシートも出ています。なお、シングルシートの場合、リアフェンダーの上に荷物を直接載せると傷が付いてしまいます。たくさんの荷物を積載する人はキャリアを用意した方がいいでしょう。
タンデムが可能で、シートの上に荷物を載せることができ、使い勝手がいいためダブルシートをお使いの方が多い気がします。ダブルシートの中でも、快適に乗ることのできる厚みと幅を持っているシートや、デザインを重視したシートなど、メーカーによってシートが持つコンセプトはさまざまです。ダブルシートのラインナップは豊富ですから、じっくり探せば最適なシートがきっと見つかるでしょう。ちなみに、ダブルシートの中には「KING&QUEEN」、「コブラ」「ガンファイター」などとメーカーの垣根を越え、共通の名前がつけられている定番のシートもあります。
女性や身長が低い方には「足つきがいい」シート選びをオススメします。足つきのよさ、を手に入れる方法は2つあります。まず、シートの厚みないものを選び、足つきをよくする方法。次にシート幅や形状を工夫し、シートの厚みはそのままに足つきをよくする方法です。厚みのないスッキリとしたデザインが好みなのか、厚みのある快適なシートのまま足つきを確保したいのか、どちらかを決めた上でシート選びを行いましょう。ただ、あまりに薄いシートを装着した場合は、少し距離を走っただけでもお尻が痛くなる場合がありますので、ご注意くださいね。
シートの皮を剥がすと、ウレタンで形作られたスポンジを見ることができます。このスポンジの作り方が、シートの特徴を大きく左右しています。メーカー独自に作られたスポンジ、低反発素材のシートへの利用、インジェクション製法と呼ばれる発泡スポンジの使用など、メーカーによって製作手法が違います。
硬さなどが異なる、スポンジを重ね合わせ、ハーレーに合ったシートを製作する方法です。アンコ抜き、などシートの加工ではこの方法が使われます。最近ではウレタンにかかる重みを分散させる低反発ウレタン・ゲルを使用したシート製作・加工もあります。
型枠の中でウレタンを発泡させ、へたりにくく、コシがあるシートを製作する方法です。ウレタンの外側と内側で密度が違うため、姿勢変化にも粘り強く反応してくれ、この製法で作られたシートの人気は高いですね。また、シートに張られている皮の材質、表面の加工方法でお尻の滑りやすさ、や腰の落ち着きが違ってきます。お尻がつるつる滑ってしまうシートだと姿勢が安定せず、いくらスポンジがよかったとしても快適なシートとはいえません。そこまで考えてお尻がすべりにくいよう、皮のデザインにまでこだわっているメーカーもあります。
シート選びの際はハンドルとフットポジションも考え、ベストなシートを選びましょう。背の高いハンドルを使用している人は、通常よりお尻に体重がかかってしまい、薄すぎるシートを選ぶと、すぐにお尻が痛くなってしまうでしょう。フォワードコントロールのハーレーにお乗りの方も、足先に体重が乗らないため、お尻に体重がかかるので同様です。ハーレーでは「シート」「ハンドル」「ペグ」に体重を分散して支えています。そのため「ハンドル」「ペグ」に体重がかからない場合、お尻に負担がかかってしまい、シートだけで乗り心地を改善するにも限界があります。また、タンデムが多い人はシートを選ぶ際にタンデムしてくれる人にも相談しましょう。買ったあとで「お尻が痛い」など喧嘩になってハーレーに乗ってくれなくなるかもしれませんよ。
「V-Factory(大阪府東大阪市)」代表。車輌販売からカスタムまで、何でも相談できる頼れるアニキ。大阪だけでなく、京都・兵庫などからもハーレー乗りが集まり、夜遅くまでいつも賑やかなショップ。