取材日は、まだ夏の残り香のある初秋の午前中だった。暑かった日差しが少し和らいでくる季節は、まさしくバイク日和。待ち合わせた自動車専用道路のパーキングには様々なオートバイが停められていた。しかし、ひときわ年季の入ったオーラを放つハーレーが2台。オーナーは、共にハーレー歴が40年以上にもなる、竹内さんと山崎さんである。
「君もけっこう古いハーレーで来たねぇ。年式は俺たちのと同じくらいか?」
笑顔で近づいてきたのは竹内さん。ベージュのFLTCが愛車である。マルーンのFLTは、山崎さんの愛車。この時、筆者が乗って行ったハーレーは、85年のFLTなので、3台の初期型エボリューションモデルが揃ってしまったのだ。
「休日はよくこのパーキングに来るんだよ。すると知った顔がいたりして、少し走ってランチだな。その後は陸友モータースに立ち寄って帰るんだ。もう何年も前からずっとそんな感じさ」
東京から横浜までのバイパスである第三京浜。この自動車専用道路の保土ヶ谷パーキングは、かつてバイクブームだった時代には休日の夜に何百台ものバイクが集まり、社会問題にまで発展した。今はもうそんな騒ぎはほとんどないが、やはりバイク乗りはここを待ち合わせポイントにすることが多いのだ。竹内さんたちは、そんな時代の流れとは無関係にハーレーに乗り続けてきて、単なる流行などは横目で見ながら、キングオブハイウェイの真髄を楽しんできたのである。
「よく遠くにも出かけたよね。九州とか北海道とかさ。ショベル時代から乗っているから、このエボリューションが出た時は革命的だと思ったよ。以前のモデルとは巡航速度の快適性が違うんだ。きっと今のモデルはもっと良いだろうけど、俺達はこれで充分だな」
山崎さんのFLTは88年型で、エボリューションの中初期モデルだ。二人共、スピードメーター内の距離カウンターは2周目となっていて、10万キロ超えの走行距離だが、エンジンも車体も絶好調。高速道路での走りっぷりも、まったく古さを感じなかった。
「乗り方は工夫してるよ。都会と郊外じゃ違うんだ。ゴー&ストップが多い場所は優しく乗って、空いてる道路はけっこうアクセルを開けていく。相手は機械なんだけど、生きものみたいなもんさ。ハーレーは特にね。メンテナンスは、優秀なメカがいるディーラーに任せてあるから安心なんだよ」
竹内さんのFLTCは、13万キロの時にエンジンの分解整備を行ったが、ほとんどどこにも問題がなかったという。それは日頃のメンテナンスと、手慣れたライダーのおかげだと思うが、ハーレーを長く乗る秘訣でもある。
「今日は天気が抜群だから、取材がなければもっと遠くに行けたんだがなぁ」
そんなふうに笑うお二人は、本当に楽しそうである。毎月第2土曜日はナイトツーリングも企画していて、夜の7時集合で走りに出かけるそうだ。
どんなに歳を重ねても、心の中は青春時代の気持ちと何ら変わらない。それが生粋のバイク乗り。ハーレー乗りの姿なのである。