1960年代のイギリス・ロンドンで、グランプリロードレーサーを模したカスタムバイクで速さを競い合った若者から生まれたカルチャー、カフェレーサー。当時はトライアンフやノートンにBSAがベース車両とされ、その後日本においてヤマハSRを中心に若いライダーの流行となったカスタムスタイルだが、昨今はスポーツスターに取り入れるオーナーも少なくないと聞く。
ヤマハSDRなどスピードを楽しむ若いオーナーがスポーツスターへと乗り換え、ブラッククロームのビルダー松本 悌一氏に「スピード感のある一台にしたい」とオーダーしたことから始まった2002年式 XL883Rのフルカスタム。普段から街乗りを中心に楽しむオーナーのライフスタイルから、カフェレーサーというキーワードが頭に浮かぶ。そこから、現代の都心の交通事情などを加味した”ブラッククローム流 カフェレーサー”というテーマがまとまった。バックステップ化は当然のチョイスとして、なかでも松本氏がこだわったポイントは、ハンドルの形状と全体のシルエットだという。
「カフェレーサーなら当然セパハンということになりますが、ここにはオリジナリティを持たせたかった。都心だと狭い隙間を縫うように走らねばならないし、だからといって操作性は損なわせたくない。思い描いたとおりの形状でまとまったと思っています」
と松本氏。こうしてライザーレスのシンプルなV型ハンドルが完成した。そしてシルエットだが、とりわけリアエンドのデザインには特異性を持たせたかったという。
「走り抜いたとき、後ろのライダーが見るのはリアじゃないですか。そのときに“なんだあれ!?”と思わせるインパクトを残せるようなものにしたかったんです」
イメージしたのは、2つの要素……アレンネスのフリスコフェンダーと、カワサキのZ系バイクのリアビュー。これらの要素をカスタムビルダー 松本 悌一なりに解釈し、取り入れたこだわりの逸品である。
最後に黒いグラデーションを加えたシャンパンゴールドでフィニッシュし、他にないブラッククローム版カフェレーサーがここに誕生した。夜の都会を駆け抜ける黄金色のネイキッドレーサー……抜き去られたライダーはもちろん、通りを歩く人々の目にも焼き付くこと請け合いである。