デビューから3年を経た今も高い人気を誇るスポーツスター XL1200X フォーティーエイト。メーカー自ら手を加えたファクトリーカスタムモデルの代表格で、ハーレーダビッドソンのラインナップにおけるバンディエラ(旗手)となりつつある存在だ。ファットタイヤを履かせた前後16インチという足まわりに容量7リッターのピーナッツタンク、ロー&ロングなフォルムと、どこをとっても申し分ないスタイリングに秀でた一台と言える。
ゆえに、カスタムが難しい。
完成度が高いスタイルゆえに、中途半端に手を入れるとそのバランスを崩しかねない。実際、街中やイベントなどで見かけるフォーティーエイトは、ほぼノーマルのままで乗られていることが多い。カスタムはハーレーライフを楽しむうえで欠かせない要素でありカルチャー。このフォーティーエイトをよりスタイリッシュに昇華すべきか――そんな命題に対し、カスタムスタイルの定番とも言える“カフェレーサー”というテーマを引っさげて挑んだのが、ルードロッドの若きビルダー 榊 和道だ。
「若い頃に親しんだバイクのスタイルだったということもあり、カフェレーサーというテーマは割りとスっと出てきましたね。とにかく気をつけたのは、フォーティーエイトらしさを損なわないということ」
まずはオーナーのライディングフォームを投影するところからカスタムがスタート。座位置、ステップ位置、ハンドルポジションを決定し、そこに合わせて各パーツを加工装着していく。定番であるローランドサンズデザインのセパハンキットもそのまま取り付けるのではなく、フロントフォークの内側からバーが出るようマウント加工を施した。ベビーフェイス製バックステップも、ライディング時にあまり負担がかからないよう通常より少し前めに取り付けてある。「走行時に体が後ろにずれないよう」と熟考を重ねたワンオフのソロシートも見どころだ。
ダークにまとめたボディは全体のフォルムを一層引き締め、フォーティーエイトが持つダーティさを増した感さえある。この後、チェーンドライブ換装などカスタムメニューが控えているこの一台、その完成形を夢想するのが楽しみでさえある。