カスタムを制作する上で常に遊び心を失わないモミアゲスピードは、特に旧型のスポーツスターを素材としたモデルには、さまざまな可能性を見出している。しかしシルエットは変われども、このショップが掲げる称号でもある「ハンサム」は、ビルダーの関口氏が認める車両のみに与えられてきたものだ。
2012年の秋に完成したこのモミアゲハンサム 10 号。全体にブラックアウトされた外装やノーマルのキャストホイール。ガソリンタンクに加工を施して低く抑えたシルエットなど、シンプルで男らしい構成である。そこでカスタムが終了すれば「ハンサム10号」とはならず、当然エンジンにも手が入れられている。
ベースはツインプラグが標準装備の XL1200S だ。元々スポーティ路線まっしぐらのこのモデルだが、高回転域で威力を発揮するカムプロファイルと、ツインプラグ独特の細かい振動が通常走行時のネガティブ要因になっていた。そこで関口氏はシリンダーヘッドを乗せ換えてシングルプラグ化。カムもアンドリュースの中速寄りのものに交換して、一般道を走行する場合のトルクフィーリングを大幅にアップさせたエンジンをセッティングしている。キャブレターはミクニの HSR を選び、リニアなスロットルフィーリングと力強いトルク感を表現。HSR キャブレターは、ノーマルの CV タイプに比べて細かいセッティングが可能な上に、操作性も軽くパワーアップも大きいという定番チューニングパーツなのである。
タイヤは firestone を選んで、ファットな足回りを持つボバー。余分なもののないシンプルなシルエットは時代の変化に関係ないカッコ良さとなっている。
オーナーは若い男性で、彼女とのタンデムも楽しむことから、選んだシートは小振りなダブルシート。赤にこだわったのはオーナーで、デザインモチーフは 1950年式 年代初頭のキャデラックを渋くカスタムした感じだという。なるほど、アメ車が煌びやかになる前のキャデラック。丸い車体に小さなウインドウ、中を覗くと少しゴージャスな赤いシートがセットされていた時代だ。そんなクルマとコラボしたようなイメージで、エンジンは最新鋭。これが「モミアゲハンサム」なのである。