リジットのフレームに載せられたパンヘッドモーター。フロントフォークはスプリンガーで、一見オールドスクールチョッパーとも思われるが、実はそうではない。
シウンが製作したソルティボニーと名が付けられたこの1台は、まさしく塩平原ボンネビルを疾走するイメージを詰め込んだカテゴリーレスカスタムバイクである。最初のフィニッシュは2003年で、ショーに出品するためのコンセプトモデル。当時の国内ショーでの評価基準に疑問を感じたという松村氏が、ラスベガスのショーに出品して200台中19位という結果を残したバイクでもある。
その後、2回モディファイを経験して現在のスタイルになったが、現在もなおノンカテゴリーな存在には変わりがない。選ばれているパーツは大きく年代に幅があるが、全体のバランスをまったく崩すことのないデザインセンスでまとめ上げられているのだ。
細かい部分に目を配ると、電装系に LED を使用したり、リアフェンダー内をオイルタンクとして活用したりと、シンプルな外観を実現させるためのさまざまな工夫がされていることに気付く。フレームが作る造形をまったく邪魔しないガソリンタンクの形状や、シートの形状。その車体にオールドテイストなスプリンガーフォークを組み合わせて機能美を強調するという手法は、チョッパーが本来持っているアイデンティティを理解する松村氏ならではの設定だと言えるだろう。
「僕が作るのはチョッパーですよ。それは時代に関係なく、既存の物に反発するスタイリングでなくちゃ意味はない。時間がたって新鮮さを失うなら、それは何かの真似でしかないのだから、そうではないものを生み出したい。欲しいシルエットは人それぞれで違うけれど、バランスが崩れて走りにくいバイクは作らない。そして僕が作り出すチョッパーは、常に度肝を抜くものでありたいですね」
走って曲がって止まるというバイク本来の性能に微塵も手を抜かず、見る人や乗る人の度肝を抜くチョッパー。そのスタイルや性能には、やはりカテゴリーは存在しない。逆に言うと、仕上げられたバイクそのものにはカテゴリーが存在する。だからこのコンセプトモデルにはソルティボニーという名前が与えられているのだ。もちろんナンバーの取得可能な公道用カスタムと言う顔も持っているので、登録することもできるし、販売も可能である。