滝沢伸介が手掛けた数多のプロジェクトの中でも、今回のCBに出店されたご覧のチョッパーは異色だ。自他ともに認める「無類のハーレー狂」として知られる彼だが、昨今は「旧車」のイメージがクローズアップされるケースが多い。実際に彼の旧車に対する探究心は年を重ねるたびに加速しているのは事実だ。しかしこの男のハーレーへの飽くなき情熱を表する時、欠く事の出来ないファクターはと問われれば、ボトムラインはいつ何時もカスタムだと断言しよう。
「沢山のカスタムをデザインし乗り継いできたことで、改めてビンティッジの素晴らしさを再認識した。例えば30年代のナックル。そのディテイルを観察すればため息モノの機能美がそこかしこに見えてくる。デザインを生業とする者にとって、その美は他では得られない感動を与えてくれるんです。そしてその感動を糧に自分自身の創作を続けている」。
「H-D GENUINEの普遍的な美を“陽”と表するなら、それらを自分なりに消化し出てくるものは、なぜかカスタムやチョッパー的ないわば“陰”の美になっている……堂々巡りなんです(笑)」
ナックルを搭載するグースネックフレームを手に入れた滝沢は、エーシックスのビルダー田中の協力を得て新たなプロジェクトを始動した。「格好良さというより、むしろえげつない感じで」……コンセプトからすでに異色だった。エキセントリックなチョッパーが全盛を極めた70年代の米国西海岸でもそうそうお目にかかれないシロモノ。という具体化されたコンセプトを実現するべく、田中はモールディングの地獄へ突入。ペイントのヘルプに駆けつけたシェイキン清水を道連れにして。
かくして完成したチョッパーにオーナー自身が試乗を敢行。渋谷のド真ん中にあるスクランブル交差点。通行人の視線を釘付けにしながら疾走するその様は、スキモノにとって“えげつない”ほど魅惑的な光景だった。