2005年に公開されたアメリカンムービー“Sin City”をご存知だろうか。全編モノクロを基調とし、CGを駆使した斬新な映像で話題を呼んだ作品である。この52FLには、「Sin Cityに登場しても違和感ない真っ黒のバイク」という明確なコンセプトを掲げている。
製作には自在にCADを操りカスタムを展開するサツマサイクルワークスが担当。マシン最大のポイントは、ブラックで統一したカラーリングとフロント周りだ。
外装を始め内燃機からボルトナットなどの接合部品に至るすべてをブラックアウト。しかしこのブラック、実は異なる6種の表面加工で構成されている。ガーターフォークや内燃機の各カバーにパウダーコート/シリンダー、ケースには耐熱性の高いテクスチャーブラック(ちぢみ塗装)/ボルトナットなどにブラックメッキ/キャブやワッシャーに艶消しのミリタリーブラック/アルミパーツにブラックアルマイト/チェーンにパーカライジングである。徹底した拘りを持つビルダー石原裕通は「耐久性を考え、用途に合わせた結果そうせざるを得ない」とサラリと言う。
フロント周りにも石原特有の味付けが施されている。Zバーとライザーは丸みを付けた形状でレトロな雰囲気を演出した。そしてガーターフォークは19mmのスチールパイプを使い製作。注目は上下のロッカー部をはじめとした接合部の処理だ。通常はボルトナット止めとなる箇所を、ボタンキャップのボルトで装着(フラッシュマウント)。凸凹のないフラットな仕上がりがクリーンな印象を与えている。またスタビライザーの可動部にはブッシュでなくニードルベアリングを採用し、高次の機能性を確保。実際のハンドリングに関しても、CAD上でエンジン位置を基準にして重心を定めた上で、ベストなトレール量が設定されている。こうした手間隙掛けた緻密なフィニッシュこそがサツマの真骨頂であり、国内外のビルダーから一目置かれる所以である。