カービングが施されたリジッドマウントのソロシートに腰を下ろす。ドッグボーンライザーに取り付けられたドラッグバーは、肩幅より少し広い印象だ。ステップはフォワードコントロールながらも、コンパクトな純正リジッドフレームなので遠いわけではない。タイトなポジションと言っていいだろう。
ストックのパンモーターにS&Sショーティ、オートアドバンスの台座を介してモーリスマグネトーを装着。リジッドフレームにスプリングフォークというハードなセッティングながらも、ストックモーターのスムースな乗り味を堪能することができた。絶対的なスピードではなく、五感に語りかけるこの滑らかなテイストが、’50年代のスタンダードなのだ。
リジッドフレームにハイマウントのスポーツスタータンク、フラットフェンダーという組み合わせはチョッパーの定番と言える。ただしタンクのマウント位置やフェンダーストラットの凝った造形に、ロナーセイジ中村實氏の個性が注ぎ込まれている。徹底的に手をかけてスタンダードに個性を宿す。これがロナーセイジの一貫した手法なのだ。さらに積み革グリップやビレット製コントロール、キックペダルなどにオリジナルパーツを配し、マシンの質感アップを図っている。
シルバーベースにキャンディタンジェリンをコーティングしたこのペイントワーク。パールホワイトのリーフにシルバーのピンライン。さらにラッピングにストーンペイントまで描かれたロナーセイジのフルコース。このデザインはオーナーの希望により、今から10年以上も前にロナーセイジが手掛けた’70年代テイストのパンヘッドがモチーフとなっている。当時のチョッパーシーンをイメージさせるこのマシンは、時代に消費されるものではなく、この先何十年とオーナーとともに時を刻んでゆくに違いない。スタンダードを超えたスタンダードは、もはやオリジナルである。