コンセプトは1970年代のカフェレーサー。ベースは1952年式モデルK。チョッパーが主流を占める国内のシーンにおいて、ひと際異彩を放つ1台だ。
手掛けたのは、熊本県阿蘇郡に居を構えるレッドホット・モーターサイクル。代表の村上優氏はLAのガレージカンパニーで5年働き、2008年5月に帰国。渡米前から営んでいた同ショップをリスタートさせた。英車や国産旧車にも傾倒する村上氏。このマシンはサーキット走行をイメージし、タンクやシートカウルなど外装がワンタッチで外れる仕様だ。
はやる気持ちを抑え、マシンに跨る。タイトなポジションだが、尻を確実にホールドするようシート最後部に座り、低めにセットされたクリップオンハンドルを握る。タンクの上に覆いかぶさるかの慣れないポジションに苦痛を覚えた。前方を見据えるため、意識して首を持ち上げなければ視線は瞬く間にタンク上へ下がってしまう。
750ccのフラットヘッドはキック一発で目覚めた。シフトは4速、左足でなく右足でのシフトチェンジ。バックステップに変え、リンクを逆さまに付けているためシフト操作も逆。ニュートラルから上に1速、下でシフトアップ。慣れない尽くしで戸惑うものの、走り出せばそのライドフィールが心地良い。高回転で走りたいオーナーの希望でローギアードとされるが、ワイドオープンしたところで、やはりXLモデルのパワーには明らかに劣る。が、牧歌的ともいえるそのフィーリングは、今まで感じたことのない優しさだった。
カウル越しに広がる広大な阿蘇の風景。前を見据えてスロットルを開ける。……あの瞬間、1970年代当時のオーナーがKモデルで、週末サーキットへ向かうシーンを見たような気がした。