現在のダイナシリーズまで延々続いている FX 系において、少数ながらも根強いファンを獲得しているのが FXR (スーパーグライド) と言われている。最初のモデルはショベルエンジンが搭載された後期モデルで、ラバーマウントされたエンジンが斬新だった。ビッグツインなのに極めて軽快な運動性を持たされたシャーシは、従来のハーレーファンからは不評だったものの、独特の乗り味に魅了されたオーナーが現在でも少なからず存在するのも、また事実なのだ。
ツインカムエンジンの FXR は本来存在しない。ベース車両は 1988年式 年型エボーリューションエンジンが搭載された車両である。しかし、経年劣化が激しく不人気車種ということもあって、普通ならばそのまま激安のベース中古車か廃車処分という行く末を、このショップ―−シウンはイチから否定するモダンカスタムへと昇華させてしまったのだ。
現代のダイナフレームに比べるとひと回り小振りな FXR のシャーシ。しかしそのコンパクトなフレームはラバーマウントされたエンジンが搭載できる。ならば、ツインカムエンジンを使用して、運動性の高い都会的なカスタムを制作してみてはどうだろうか。シウン代表の松村 友章氏は、そう考えた。モーター部分はツインカムだが、ミッションはエヴォリューションの5速。S&S 製ハイカムとケイヒン FCR キャブレターでライトチューニングされた心臓は、本来存在しない未来型 FXR として異彩を放つ存在となった。
外装には、シウンオリジナルのハイパイプや H-D純正のカスタムパーツであるフロントカウルが配された。そして左右をえぐられたガソリンタンクやチンスポイラーの装着等、スポーツ性を大きく強調したシルエットとしてまとめられている。
足回りにも抜かりはない。フロントフォークはフルアジャスタブルの XLH1200S 用をチョイスし、リアサスはオーリンズを選ぶ。ベースの FXR が持っている優れた運動性を、さらにスープアップさせた徹底仕様になっているのだ。
シウンクラフトワークスの仕事は、オールドテイストのチョッパーからツインカムベースのカスタム。電動モーターを搭載する未来型チョッパーまでと幅広い。代表の松村氏のポリシーは、「求められるイメージの一歩先を行くこと」である。それがビルダーとしての基本的な立ち位置としているのだ。この FXR は、大柄になった現代のビッグツイン系モデルに一石を投じる、シウンらしいカスタムなのだと思う。