VIRGIN HARLEY |  高速道路2人乗り解禁二輪車研究室

高速道路2人乗り解禁

  • 掲載日/ 2005年01月20日【二輪車研究室】
  • 監修/全国オートバイ協同組合連合会

高速道路2人乗りの画像

日本の高速道路
その安全はいかなるものか?

現在、欧米を中心として高速道路での2人乗りは広く認められています。ヨーロッパにいると、2人乗りのオートバイをたくさん見かけることができます。友人や恋人同士、夫婦で高速道路を移動しているのです。週末や夏休みにいたっては、1人乗りよりも2人乗りの方が多いくらいにさえ思えます。

日本では、1965年に高速道路、自動車専用道路での2人乗りが禁止されてからというもの、そういった風景を見ることがなかったために2人乗りの解禁は「安全性で不安がある」と思われる方もいらっしゃるかもしれません。ですが、データで見ると決してそうとは言い切れません。むしろ、データではその逆のデータさえ出ているのが現状です。今回の調査レポートではそのあたりについて、報告します。

調査01:安全性の検証

オートバイが高速道路を走行するリスクは、一般道を走行するリスクの1/3。高速道路を走行することは、安全確保の面からも実は証明されています。データはドイツでのオートバイ交通事故死者の調査結果です。これを見ると、一般道の場合は1億台のバイクが1kmずつ走ると死亡事故は9.4人ですが、高速道路では2.9人であることがわかります。一般道は、交差点や死角を原因とした事故の発生がその率を高めているようです。高速道路にはそういった障害はありません。単純に速度が出ていることだけで、危険とはいえないことがわかります。

ドイツの二輪車事故死亡率 (道路別交通量当たり死者発生)

二輪車の交通量 二輪車搭乗中の死者 交通量当たりの死亡率
高速道路 15.4億台km 45人 2.9人/億台km
一般道 99.6億台km 936人 9.4人/億台km
(資料/社団法人 日本自動車工業会)
?※死者数は1999年の値。交通量は1995年の値
?※交通量は走行台数と走行距離を掛けた値「台km」であらわす
?資料:BAST(ドイツ連邦ハイウェイ調査研究所)、 IRF(世界道路連盟)

調査02:事故死者数の検証

高速道路では、通常の道路以上に速度を出して走行します。例えば、速度に応じて事故率も比例するのでしょうか。調査によりますと、ドイツでは例年8,000人近い交通事故死者が発生しています。ただ、このうち高速道路は1999年の1年間で6人と非常に少ないのが現状です。割合にして0.08%ですね。また、イタリアのミラノを州都とするロンバルディア州では、例年900人以上の交通事故死者が発生しているのですが、高速道路での2人乗りの死者は1999年1月で1人となっています(0.1%)。むしろデータでは、1人乗りの方が事故死者数が多いというのが現状です。一概に2人乗りが事故につながるとは言えません。

調査03:事故発生率の検証

イタリア警察が発表する資料では、1999年に高速道路で105件の事件が発生していることがわかっています。このうち、1人乗りの事故は83件(79.0%)、2人乗りの事故が22件(21.0%)。しかも、これは高速道路でのオートバイの70%が2人乗りといわれている中での調査結果ですから、事故率は2人乗りは一人乗りよりも低いと考えてもいいでしょう。

調査04:欧米と日本の高速道路状態の比較

ヨーロッパのオートバイ交通事情を見てきましたが、そもそも日本との道路状態が違えば意味がありません。日本とヨーロッパの高速道路の設計基準は格差がないのが現状です。日本と同様、ヨーロッパでも片側2車線の高速道路が大半を占め、またカーブや坂が多い場所もあり、舗装状態にもムラが多いようです。つまり、上記のデータはさほど変わらないと言えるでしょう。

各国の高速道路設計基準

日本 E roads
(AGR)
ドイツ イタリア イギリス フランス
設計速度・km/h 120 120 120 120 120 120
車線幅員・m 3.5-3.75 3.5 3.25-3.75 3.5-3.75 3.65 3.5
路肩(標準)・m 2.5-3.0 3.25 2.5-3.25 3.0 3.3 2.5-3.0
最小平面曲線半径・m 710 650 720 650 850 665
最大縦断勾配・% 2.0 5.0 4.0 5.0 3.0 4.0-5.0
最小視距・m 210 200 250 200
資料/社団法人 日本自動車工業会

規制解禁後に
行われる安全対策について

こちらはまだ未定の情報ですが、規制解除後、教習所での教習時限が多少延長され、高速道路での2人乗りについての教習が入ってきます。また、各地域で安全教習などのイベントも実施される予定です。万全を期する方は是非参加してみるのもよいでしょう。

高速道路の2人乗り解禁後も残る
規制(首都高など)について

高速道路の2人乗り規制は解除されますが、引き続き規制が残る道路もあります。こちらについては、十分に注意してください。以下に規制が行われる道路名称を掲載しておきますので、目を通して置かれることをお勧めします。特に首都高速は連結部分が多いため、ご注意ください。

各国の高速道路設計基準

首都高速 全線 (含会社線)
1号羽田線 上り線 (芝浦出口から都心環状線接続まで)
下り線 (都心環状線の接続から芝浦出口まで)
1号上野線 全線
2号目黒線 全線
3号渋谷線 上り線 (渋谷出口から都心環状線接続まで)
下り線 (都心環状線の接続から池尻入口まで)
4号新宿線 上り線 (新宿出口から都心環状線接続まで)
下り線 (都心環状線の接続から東池袋入口まで)
5号池袋線 上り線 (東池袋出口から都心環状線接続まで)
下り線 (都心環状線の接続から東池袋入口まで)
6号向島線 上り線 (向島出口から都心環状線接続まで)
下り線 (都心環状線の接続から向島入口まで)
7号小松川線 上り線 (錦糸町出口から6号向島線接続まで)
下り線 (6号向島線の接続から錦糸町入口まで)
八重洲線 全線
9号深川線 全線
11号台場線 全線
規制開始地点
?1. 首都高速道路の入り口は、一般道路との接点から規制
?2. 本線は、出口があるところからの規制。または、ジャンクション部での規制

総括

オートバイの高速道路2人乗りは、事故が極めて少ないというのが実態です。また、これらの調査を行ったヨーロッパと日本の高速道路の整備状況、安全性、また自動車・オートバイの普及状況を見ても似通ってもいます。こういったことから、今回の高速道路2人乗り解禁は、実施されたと言えます。

ただ、これはあくまで日本以外の国でのデータを土台とした論理であり、実際に高速道路が解禁されてから日本で交通事故(中でも死亡事故)が増加した場合は再禁止と言うこともありえます。せっかくオートバイが再び持ちえたこの権利を大切にするためにも、またみなさんの命を守るためにも、安全運転は心がけてください。 たとえ高速道路の事故率が低いとは言えども、無謀な運転は必ず事故につながる可能性があります。2人乗りで遠くを旅する。きっと皆さんのオートバイの楽しみ方の選択肢が増えると思います。規制解除の後は心行くまで、パートナーとまたご友人と風を感じるたびをお楽しみください。

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