VIRGIN HARLEY |  USAイベント事情芦田 剛史のUSAディーラー・トレーニングダイアリー

USAイベント事情

  • 掲載日/ 2007年01月11日【芦田 剛史のUSAディーラー・トレーニングダイアリー】
  • 執筆/芦田 剛史
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本場ディーラーでハーレーを学ぶ USA Training Diarys 第9回

桁違いのパワーとサウンド
本場アメリカのドラッグレース

明けましておめでとうございます、メカニック芦田です。いよいよ2007年が始まりましたね。私のアメリカ修行も残すところあと1年を切ってしまいました、今年も新たなる挑戦を続けていきたいと思っています。さて、前回は少々難しい話題で終わりましたので、今年一発目の記事はアメリカの壮大なイベントやレースに関して書いてみたいと思います。

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渡米して以来、今まで幾つかのアメリカのイベントを見てきましたが、中でも強烈な印象に残っているのが「ドラッグレース」です。こう書くとやたらと詳しそうに思えるかもしれませんが、実はドラッグレースを見に行った当初はドラッグレースの知識は全くといっていいほどありませんでした。AZSS渡辺さん(第2回コラム参照)に誘われて興味本位で見に行ったところ、かつて無い衝撃を覚えてしまったんです。そのときのことは今でも鮮明に覚えています。会場内はもう物凄いお祭り騒ぎでして、ところ狭しとバイク関連のグッズのお店やパーツメーカーが軒を連ねていました。日本のお祭りに出る露店のような要領で、ヘルメットからサングラス、工具からピストンまで露店で売り出されています。「こんなイベントは日本にはない。日本のハーレー乗りにはたまらないだろうなぁ」と思いましたね。でも、貧乏人の私はよだれを垂らして見ているだけでした(笑)。一瞬で雰囲気に呑まれてしまうほど、楽しいイベントですよ。

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素人なりにドラッグレースを説明すると、アメリカでは「NHRA(National Hot Rod Association)」という団体が二輪も四輪も含めた全米のドラッグレースを主催しています。1/4マイル(約400m)の直線をいかに速く走り切るかを競う、いかにもアメリカらしいレースです。一概にドラッグレースと言ってもその中に沢山のクラス分けがあり、四輪で有名なのは「トップフューエル」と「ファニーカー」、二輪であれば「プロストックモーターサイクル」でしょうか。これらのドラッグレースにエントリーするマシンの特徴として燃料に「ニトロ」を使っているという点。より大きな出力を得るため使用されている燃料ですが「一般のガソリンエンジンとは比較対象外のこの代物。一体どんな燃焼を行うの?」という前々から疑問に思っていました。現地でドラッグレースを見てみると、そんな疑問はあっさりと氷解します。その燃焼のスゴサは体で実感できますから。強烈な排気音、というより衝撃波が私を襲ってきました。最初に私が見た場所はコースの真横でしたが、車両が通過した瞬間、鼓膜が破れる程の音圧がやってきました(笑)。会場内で耳栓が普通に売られていたわけがそのときわかりました。ガソリンエンジンとは比べ物にならない燃焼圧力が出ていることは容易に想像できる体験です。私が見に行った時のレースには、ハーレー業界でも有名なブルーパンサーの重松氏がレースに出場していました。レース終了後、近くで車両を見させていただいたのですが、車両を見たときの印象は「う~ん、何だこの怪物は?」でした。今までの僕のバイク常識範囲を吹き飛ばすそのルックス、デバイスに唖然としてしまいましたね。最初に目に飛び込んでくるのは、巨大すぎるリアタイヤ。駆動時には遠心力で直径が変化し、最終減速比を変えるという代物です。タイヤ表面はネチネチとしていて、ロードレースのスリックタイヤ以上のコンパウンドの柔らかさか?と感じました。レースが始める前にリアタイヤを空回りさせる、あの有名な「バーンアウト」も元々はドラッグレースで走る直前にタイヤの温度を上げてコンパウンドある程度溶かしてグリップを最大限まで引き出すという戦法だったのだとか。スパークプラグを見せてもらうと…溶けていました。「たった1/4マイルを走っただけで溶けちゃうの?」ガソリン混合ガスの燃焼温度とは比べ物にならないのでしょう、もう想像もつきません。最高峰のクラスにもなるとその最高出力は5000ps以上にもなるとのこと、化け物です。バーンアウトをやる時はちゃんと意味を知った上でやらないと恥ずかしいかも、と言うよりやらない方がいいでしょうね(笑)。

お馬鹿でクレイジーなモンスタートラック
真剣にここまで遊ぶのは見習うべきかも

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私が子供の頃には「ミニ四駆」というものがとても流行りました(今でもあるのかな?)。その中で、アメリカのモンスタートラックというレースをモデルにした「モンスタービートル」なるモデルがありました。小学生だった私は、それを夢中になって近くの空き地の悪路をサルのように走らせたものです。まさか、当時の私が大人になって実物を見ることになるとは想像もしませんでした。会場は球場を使っての競技となっていて、土の上に作られたジャンプ台や、廃車の上をいかに美しく豪快に(?)走り抜けるかがポイントになります。評価の点数は観客の声援の大きさに比例するところが多く、日本では絶対にありえない「クレイジーな」モータースポーツです。「クレイジー」という言葉をアメリカ人は多用しますが、日本では「キ○ガイ」とマイナスイメージしかありません。しかし、時にアメリカ人はこの言葉を「最高にカッコいい!」という敬愛を込めて使います。「奴らはクレイジーだ!」と。常人では思い付かない、できないことをやってのける、そんなレーサー達がモンスタートラックドライバーなのです。大人の男性の背丈ほどある巨大なタイヤを巨大なトルクのエンジンでぶん回しながら、豪快に廃車を踏み潰して行きます。豪快にジャンプしたかと思うと、勢いでサスペンションがブチ折れたりしてデッカイ車がゴロゴロ転がります。イメージできますでしょうか? クレイジーですね(笑)。

ハーレーとはまったく関係ないこの話題を紹介したかったのは、アメリカ人の「クレイジー」な部分には見習うべきところがあると言いたかったからなのです。「カッコいい大人の男とは?」ということを考えると、仕事も家庭も円満にこなす平凡な男で収まりたくない、と思ってしまう私がいます。他の男には無いクレイジーな一面を持っている、遊び心のあるヤンチャな男になりたいなぁと思うのは私だけでしょうか? でも人に迷惑を掛けたりする意味ではないことは断っておきますよ。

技術的にはレベルアップした日本
アメリカ人の発想にはまだまだ敵いません

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毎年、アメリカ各地で行われている「インターナショナルモーターサイクルショー」にも足を運びました。実は前年度のカルフォルニア開催の際にも足を運んでおり、今回で2度目になります。というわけで前年度と合わせてご紹介いたしましょう。このショーは世界中のバイクメーカーの新年度モデルを展示し、一般客に見て触って、跨ってもらうショーです。バイクオタクの私にはこれまたヨダレ物の(下品な奴!)イベントなのです。普段、ハーレー漬けの生活を送る私にとっては他社のバイクに触れる大切な機会であり、またコンパニオンのお姉さんが…ムフフ(また始まったよ)。このショーには新型車だけではなく、アメリカのチョッパーショップが組んだチョッパーも多数展示されており、一度の来場でいろいろなバイクが見られる、なかなか多彩なイベントなのです。そのショーで1台の「クレイジー」なハーレーを見かけました。それ以前から存在は知っていた有名な車両ですが、ベース車両には「V-Rod」が使われていて、ムチャクチャな太さのリアタイヤを履いています(はっきり覚えていませんが380mmだったかな?)。DOHCのV-Rodにスプリンガーとサドルシートですよ、しかもラジエターが見当たりません(汗)。近年は日本のチョッパーの感性もアメリカを凌駕するレベルまできているようですが、そこはやはり先駆者アメリカ、彼らのこの豪快な発想はなかなか真似できませんね。

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こちらのイベントでもパーツメーカーなどが競って出展しており、日本ではなかなか見かけない商品もずらりと出品されています。各メーカーのエンジンやマフラーのカットモデルなども見ることができ、私のようなマニアックな人間は、それはもう舐めるようにカットモデルの奥の奥を覗き込んでしまいます。会場には家族や恋人と共に、ハーレーに乗って来場される方も多く、私は見ていてとっても羨ましくなりました(笑)。ツーリングがてら、こういったイベントにハーレーに乗ってやってくる機会があるということはなんと恵まれた環境なのだろうか、と。日本でも数々のハーレーのイベントがありますが、サービス業で土日祝日に休みが無かったこともあって、こういったイベント参加の経験が全くありません。今回の渡米でこのようなイベント参加出来たのは非常に嬉しく、貴重な経験でした。私と同じく、お客様の娯楽をサポートする立場のサービス業の方は同じ様な悩みを持っているのではないでしょうか? 日本ではハーレーを買ってはみたものの、忙しくて乗る暇が無い、という話はよく聞きます。そんな話をアメリカ人にすると「何故???」と首を傾げられるでしょう。彼らはたとえ何があってもしっかり休みは取りますから(笑)。 少々貧乏でもいいから、休むべき時はしっかり休んで、いつかハーレーに乗って家内と子供を連れてイベントにツーリングに行ってみたいです。周りの幸せも考慮できるのがカッコいい男なのでしょうからね(笑)。

今回は日本に無い物を取り上げすぎて、アンチ日本的な話になってしまいました。それは「日本人が『大切な気持ち』を忘れかけている」そんなように見えるからかもしれません。 ここ数年、青少年犯罪や教育環境が問題になっていますが、そんな彼らもどこか深い愛情や心情に飢えているんじゃないでしょうか? 受験勉強はそこそこで、もっといろいろな経験をして人生を楽しんで欲しいものです。いつかバイクに乗った若者と私が直接向き合って話をする機会でもあれば「大切な気持ち」をお渡しできるかもしれません。ハーレーダビッドソンについて、メカニックという仕事について、どれも夢のあることばかりだと思います。私自身がそれらに救われ、今ここに立っているのですから。あれこれと書いてしまいましたが、日本人の私はやっぱり日本が大好きです。海外に出て、前よりよく見えるようになった日本を、もっと生き生きとした国に変えるお手伝いを…微力ながらできればと思います。う~ん、やっぱり少し固い話になってしまいましたね。それでは次回もお楽しみに!

プロフィール
芦田 剛史

26歳。幼少からバイクと車に興味を持ち、メカニックになることを誓う。高校中退後、四輪メカニックとして4年の経験を積み、ハーレー界に飛び込む。「HD姫路」に6年間勤務、経験と技術を積み重ねたのち「思うところがあり」渡米を決意。現在はラスベガスHDに勤務。(※プロフィールは記事掲載時点の内容です)

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