ソフテイル、ツアラーとは異なり、スポーツ志向のビッグツインがこの『ダイナグライド』です。ルーツは、1971年に登場したショベルヘッド時代のFXシリーズで、現在でも人気を誇る「ローライダー」もこのファミリー。精悍なルックスとパワフルなエンジンパワーでツインカム96になった今も大きな支持を得ているんです。また、ダイナファミリーはラインナップも豊富です。スポーツ向きのFXDやFXDC、ロー&ロングのFXDL、個性的なフロントマスクのFXDFなど。今回はこの多彩なラインアップを持つダイナ・ファミリーについて、解説していきますね。
ダイナって、実はフレーム名が由来なんです。ダイナグライド・フレームを採用している車種は、ダイナグライドというんですね。ダイナグライド・フレームは、それまで採用されていたFXRフレームを改良したもので、ハーレー社初のコンピュータ設計。高い剛性と美しいラインを実現しています。このフレームは、1991年のFXDB(スタージス)から採用され、1993年よりダイナ・ファミリーとしてレギュラー化されました。ちなみに、それまでダイナファミリーは「ダイナグライド・ファミリー」と呼ばれていました。ただ、2006年モデルのインジェクション&6速化のタイミングから「ダイナファミリー」に変更されています。
そうそうダイナと言えば知っておきたい人物がいます。それはダイナの父とも言える人、ハーレー社のウィリー・G氏です。ウィリー・Gは、ローライダーやファットボーイなど今でも大人気のモデルを企画・デザインした方で、生きながら伝説になりつつあるほど。豆知識として覚えておいてもいいでしょうね。
ソフテイルの記事で、ソフテイルは全ファミリーの中ではビンテージにポジショニングされていると書きました。私の考えでは、ソフテイル系はビジュアルを優先したモデルであり、カスタムが好きな方はベースにもってこいなんです。それに反してダイナモデルは一言で言うなら質実剛健! アイドル付近の力強い振動、高回転での気持ちの良い振動の収束、と言う相反した性格を併せ持つ…そう、乗って初めて良さがわかるモデルです。低速から高速までが素晴らしい、理想的なハーレーといえるのではないでしょうか。
ラバーマウントという言葉に馴染みがない方も結構いらっしゃるのでは? 説明しましょう。オートバイはエンジンをフレームに載せています。この載せ方がラバーマウントってことなんですね。え? よくわからない。すいません、実はハーレーの場合は、エンジンをフレームに載せるときに直接フレームに固定するか、振動対策などでラバー(ゴム)を介して固定するかがあります。そう、そのゴムを介して固定する方法をラバーマウントって言うわけです。
でも、なぜそんなことをするんでしょう。それは、ソフテイルは「ツインカム96B(※)」というエンジンの不愉快な振動を消すバランサーシステムが搭載されているのに対して、ダイナやツアラーはそれがついていないのです。ダイナの場合、エンジン名称も「ツインカム96」と“B”がついていませんよね。このため、振動がソフテイルに比べて大きく、アイドリングや低速走行時にはボディを揺さぶるような振動があります。これがハーレーらしくて最高という人も多いですね。しかし、これではエンジンの回転があがる中高速域では、不愉快な振動が激しくなってしまいます。そこで、ダイナはゴムを介してエンジンを搭載することでアイドリングや低速時には荒々しい野性味ある振動を残しつつ、高速時にはラバーで振動を収束させるシステムをとっているのです。
FXDL(ダイナ・ローライダー)です。1977年に鮮烈なデビューを果たした初代ローライダーは、約30年たった今でも、ハーレーのトップセールスモデル。短いリアサスペンション、フロントフォークを寝かしたロー・アンド・ロングなスタイルは、発売と同時に空前のヒットとなりました。このローライダーは、もともと当時デザインを担当していたウィリー・Gが、イベントなどで見るハーレーユーザーの乗るカスタム車を見てヒントを得て、自ら、メーカーとしてカスタム車両を造ろうと思ったことがきっかけといわれています。現在でこそ、ファクトリー・カスタム(メーカーがカスタム車両を製作すること)はよくありますが、当時は非常に斬新であり、ローライダーはそのきっかけとなった記念すべき1台でもあるのです。