タンクのマウント加工という大作業が完了し、次は車体のローダウン加工へと進みます。フロントフォークとリアショックをそれぞれ調整しながら短縮し、車高そのものを下げるのです。なぜローダウン加工を行うのかと言うと、僕が「これがベスト」として指し示したTRAMP CYCLEのカスタム車輌 スポーツスター XL883 がローダウンして低くまとまったフォルムを形成していたから。別に足つきが悪いってわけじゃないんですけど、このスタイリングにする上で避けて通れないところなのです。
まずはリアショックから。ご存知(?)僕のスポーツスター XL1200R にはオーリンズのリアショックアブソーバー Type S36E ( 336mm )が装着されています。長岡さんはこれを「同モデルのショートタイプと同じ 296mm にしましょう」と。え!買い替え!? と一瞬戦慄が走りましたが、これをローダウン加工することが可能とのこと。早速当サイトで「サスペンション徹底解析」コラムを連載中のウノパーウノ尾山台店・我妻店長に問い合わせたところ、「その加工、ウチでやってあげるよ~」と嬉しい言葉をくださるではありませんか。早速お言葉に甘えようと、TRAMP CYCLEからリアショックだけ送っていただき、ウノパーウノに持ち込みます!
第1回 打ち合わせ編で述べましたとおり、「ローダウン = 足つきを良くする」と捉えられがちですが、実はリアショックの役割はそんな単純なものではなく、日頃の乗り方そのものに小さくない影響を及ぼすポイントなのです。パーツ交換だけのカンタンな作業でできてしまうのですが、万人に合う純正スタイルから ジオメトリー(※1) を変更するということは、同時にオーナーの使用用途、いわゆるバイクライフを限定することに繋がります。もちろんオススメしない、というわけではなく、ここで重要なのは繰り返しになりますが、「自分がどんなバイクライフを楽しみたいのか」という点。ロングツーリングを楽しみたいのか、ワインディングで峠を攻めたいのか、はたまた街乗り中心のバイクライフにしたいのか……。ここが曖昧なままだと、自分の楽しみ方にマッチしない乗り味になってしまいます。
足つき性を良くするためにリアショックを短いタイプに換えられる方がいらっしゃいますが、実はこれだけでは十分な効果はなく、右下の写真にもあるとおり以下のような弊害が生じることがあります。
後者のように前後ローダウン加工をすれば足つき性は向上しますが、ここまでしなくとも細身のシートへの変更が一番効果的だったりするんですよね(笑)。またこのローダウン加工そのものが持つもっとも大きな影響は、「サスペンションが短くなることで ストローク(※3) が減り、硬くなる & 動きにくくなる」ということに繋がります。つまり足つきは良くなるけど、走行時のショックを吸収する力が減少するのです。この辺りもぜひ念頭に置いてみてください。
リアショックだけを極端にローダウンすると、こうした構図に陥ってしまいます。
自分でサス交換をされる方は、必ず並行になるよう注意してくださいね。
そして今回はジャージーさんのリアショックをサイズ変更したわけですが、この加工も当然乗り味を大きく変えてしまいますので、以下のことにチェックするのをオススメします。
特に張り出しは重要で、後々チェックしたときに「ハ」の字になっているケースも見受けられます。リアショックの取り付け角度は必ず並行に! これは必須項目ですね。
※パーツ・作業工賃は2010年6月21日現在の価格(税込み)です。詳しくは下記までお問い合わせください。
問い合わせ先/(ウノパーウノ尾山台店)03-3701-9111
冒頭でもかなり字数を割いてお話ししましたが、リアショックというのはちょっと手を加えるだけでジオメトリーに影響を与えるなど、カンタンなカスタムポイントに見えて実はとても奥深いところなのです。ただ「触るな」と言うわけではなく、うまく付き合うことができれば快適な乗り味をキープし続けることにもなります。ここでは日頃のバイクライフを楽しみながらできる基本的なメンテナンス法をお教えしましょう。
① 2ピースを溶接整形しているリアショック(純正ショックなど)は溶接部が錆びやすいので、
定期的なチェックと防腐剤を薄く塗布しよう
② スティール製のリアショックは雨天走行または洗車後、
エアブロー ⇒ ウエスに防腐剤を付けて拭いてやる
③ ゴムダンパーが入っているものはゴムの劣化をチェック
④ ロッドが見えている隙間からオイル漏れが発生するケースもあるので、
ダンパーのユニットに入っている部分をチェック
若干難しめの内容かもしれませんが、できる範囲・分かる範囲でチェックをしてみてはいかがでしょうか。リアショックへのちょっとした気遣いが、皆さんのバイクライフをより良くすることに繋がると思いますよ。
Before / Afterでご覧いただくとこのとおり。今回はロッドを短いタイプのものに交換しただけで、シリンダーなどは 336mm のまま。それでもこうして長さを変えることができます。
前回の記事ですでに仮組みが完了していましたので、全景に大きな変化はないかと思います。そしてリアショックのサイズ変更も、まだローダウン加工の半分が完了した段階に過ぎません。次はフロントフォークの調整ですね。ジャージー号はリアショックだけを換えていたので、今回はローダウンとともにフロントのスプリングをローダウン仕様に換え、バランスを整えていきます。また今回同様、フロントフォークに関してその役割や重要性、そして気を付けておきたいポイントなどもご説明させていただければ、と思っておりますので、どうぞお楽しみに。
H-D 2008年式スポーツスターXL1200Rを所有するV-H担当者。バイクに関する知識は皆無なくせにバイクに乗るのは滅法好きという関西人で、東京⇔関西間をやたら自走取材するので走行距離は1年間で2万キロと伸びる一方。ようやくスポーツスター一台に絞ったにもかかわらず、H-Dの他モデル(特にダイナ)や原2バイクに心奪われることが多い。現在大阪の某カスタムショップで愛車をフルカスタム中。完成後の姿や如何に……。
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