VIRGIN HARLEY |  ハーレーダビッドソンカスタムで習得した独自技法を駆使し、現代アートの世界に打って出る作家「クワイ華」トピックス

ハーレーダビッドソンカスタムで習得した独自技法を駆使し、現代アートの世界に打って出る作家「クワイ華」

  • 掲載日/ 2024年12月19日【トピックス】
  • 取材協力/UNDULATION  取材・写真・文/ 成田 恒一

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「クワイ華」とは何者なのか?

独国を中心としたユーロカスタムの手法をいち早く取り入れ、それまでアメリカ一辺倒だった日本のシーンに新たな風を吹き込んだ神奈川県のハーレーカスタムショップ「BAD LAND」。その功績は計り知れず、1998年の設立依頼、一貫してユーロカスタムに拘り続け、25年もの長きに渡り我が国のハーレーカスタムシーンの第一線を走り続けている。

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BAD LAND代表のクワイケイイチ氏は、職人気質のカスタムビルダーではない。もちろん板金加工や金属造形などの作業も行うが、主な業務はカスタムのプロデューサー、兼ディレクターという立ち位置でスタッフを束ね、コンセプトの構築からパーツ選び、予算や工数管理など、1台のカスタムマシンが完成するまでのすべての責任を負うことが氏のメインタスクである。

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そんな業務の傍ら、オリジナルの特殊塗料や表面処理材などの開発にも積極的に着手し、その商品化を実現。前出のユーロカスタムの浸透に加え、ハーレーカスタムビルドの世界に新たな表現方法を確立してきた。

「もっと自由に、もっと情熱的に」という想いのもと、さまざまな制約に縛られた工業製品である「モーターサイクル」を離れ、純粋なアートブランドである「UNDULATION(アンデュレーション)」を2023年に設立。作家名として新たに「クワイ華」と名乗り、BAD LANDでの業務と並行し、自らの魂を込めた創作活動に挑んでいる。作家名の「華(ハナ)」とは、今は亡き愛猫の名で、最後までまっすぐに力強く生き抜いた彼女の剛毅さにあやかって付けられたものだ。

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そして2024年12月13日〜16日の4日間に渡り、六本木PHILLIPS東京ギャラリー(東京都港区六本木6-6-9ピラミデビル4 F)にてクワイ華氏の新作発表会が開催された。純粋なアートピースをメインにカスタムバイクやギターなども含め、約40点もの作品が展示された。

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展示会場に足を踏み入れ作品を目の当たりにすると、その得体の知れないパワーに圧倒され、畏怖の念を覚えたというのが正直なところ第一印象であった。どこか「和」テイストであり、オリエンタルな雰囲気も感じられるのだが、真っ先に脳裏をよぎったのは「鬼気迫る尋常ならぬ作品群」というものだった。作品について氏に伺うと、メインのモチーフは遠い記憶の断片にある「龍(神)」であり、渦巻き状のシンボルは神社の境内などにみられる狛犬がイメージソースなのだという。「一対の狛犬に守護された龍神」という構想が、一貫したコンセプトとなっている。

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作品をつぶさに見ると、幾重にも塗り重ねられた色が複雑に絡み合い、いくつもの線(うねり)となり、まるで水が縦横無尽に流れるような構図になっていることがわかる。使用されている塗料はソリッド、キャンディー、そしてバイクのカスタムペイントなどでよく見られるフレーク(ラメ)などで、さらに24Kをベースにした特殊塗料によるゴールドペイントもアクセントに用いられている。

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バイクのエクステリアにも氏のオリジナル技法による装飾が施されている。こちらの車両には前出した狛犬の写真に見られるフレイムスのようなデザインをエクステリア全体に配置。ベースマシンは巨匠アレン・ネスが1980年代後半に手掛けたショベルヘッドのLAクルーザーで、光の陰影により、まるで宝石のような輝きを放っている。

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ジャパニーズレジェンド、1972年式のカワサキZ1には、狛犬をモチーフにした渦巻き状のデザインがエクステリアに配されている。シンプルなブラックベースのカラーリングであるが、オリジナルの特殊表面処理などにより得も言われぬ金属の質感が表現されている。

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バイク以外にも「木」をモチーフにしたアートピースも展示された。ワイヤーで基本骨格を作成し、1930年代に技法が確立された特殊ハンダにより肉盛りが行われ、美しい樹形を構築。この作品にも水の流れのようなものが見て取れる。さらにギターのボディにもオリジナル技法による装飾が施されている。ひと目で氏の作品だとわかる圧倒的な個性。このギターのオーナーには、アメリカの著名なギタリストが決定しているという。

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取材終了間際、あらためて氏の作品を眺めていると、第一印象で感じた畏怖の念のようなものは完全に消え、体温がじわりと上がるような温もりや包容力、優しさのようなものを感じるようになっていた。それは龍神や狛犬といった作品のモチーフについて氏本人から伺い、これらの作品に頭と心で真正面から向き合えるようになったことが大きく関わっているのかもしれない。

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「BAD LANDらしいな……」

氏の作品群の印象はこの言葉に尽きる。25年もの歳月を費やしBAD LANDが培ってきた金属造形技術や特殊塗料を駆使し、すべての作品が形作られているのだから当然といえば当然だ。カスタムバイクという形態ではなく、現代アートという異なるアウトプットになったのだと考えれば合点がいく。

「クワイ華とは何者なのか」と問われれば、それは「クワイケイイチなのだ」と答えよう。

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