創業120年を迎え、ミルウォーキーエイトVVT121を搭載した新型CVOや、普通自動二輪免許で乗ることのできるコンパクトモデルX350の発表など、トピックスに事欠かないハーレーダビッドソン。その中の一つに、今回紹介するエレクトラグライド ハイウェイキングも挙げることができるだろう。
ハーレーダビッドソンのクラシックモデルをオマージュし現代に蘇らせる”アイコンモーターサイクルコレクション(以下アイコンコレクション)”の第三弾として2023年5月に発表されたエレクトラグライド ハイウェイキング。デザインモチーフとなったのは1968年に発売されたFLHエレクトラグライドで、当時の雰囲気を持たせつつ、最新テクノロジーを惜しみなく投入したプレミアムモデルである。1750台の世界限定生産とされており、その内日本には228台(オレンジ、マゼンタ各114台)が上陸した。その内の1台に乗る機会を得たので、ここでその感触をお伝えしたいと思う。
2021年のエレクトラグライド リバイバル、2022年のローライダー エルディアブロに続き、アイコンコレクションの第三弾として登場したエレクトラグライド ハイウェイキング。このシリーズは全世界のハーレー正規ディーラーに1台ずつ割り振られるように毎回約1500台が限定生産される。ただ今回のエレクトラグライド ハイウェイキングに関しては、ハイファイオレンジが1000台、ハイファイマゼンタが750台の合計1750台が生産された。
心臓部にはハーレーダビッドソンの現行ラインアップで主流となっているミルウォーキーエイト114エンジンを搭載し、オレンジ、マゼンタ共に発色の良いボディカラーとしながら、取り外し可能とされたウインドシールドのロアー部分までも同色とされている。タンクバッヂはFLHエレクトラグライドのものを再現、さらに下部にモノショックを備えるソロサドルなど、60年代のFL系を彷彿させながら、現代的な手法も多岐に渡り取り入れている。
ルックスからしてゴージャスであり、何といってもハイウェイキングというネーミングが、ハーレーの得意とする大陸的な長距離クルーズを連想させてくれ良いではないか。
テスト車両の借用時、何台か並ぶプレス向け試乗車の中にあってエレクトラグライド ハイウェイキングは一際輝いて見えた。そもそも私がオレンジというビタミンカラーを好んでいることもあるが、きらきらと眩しいばかりの車両を目の前にすると、なんだかとてもワクワクしたことを覚えている。
ノスタルジックな雰囲気を演出するソロサドルシートだが見るからに高く、跨ってみると身長178cmの私でも足つき性が気になった。これは一筋縄ではいかないかもしれない。そう思いながらミルウォーキーエイト114エンジンに火を入れて走り出した。
実際のところはハンドル、シート、ステップの位置関係から成るライディングポジションの整合性は高次元でバランスが取れており、走っている最中は快適そのものである。前後16インチのタイヤセットがもたらすハンドリングもオーソドックスなものであり、ヴィンテージハーレーに触れたことがある者なら、「そうそう、これこれ」と頷くことだろう。
ただやはり交通量が多く、ストップアンドゴーを繰り返す都市部では気を使う。半クラを上手く使いバランスをとるのだが、摩耗のことを考えるとあまりクラッチに頼りたくない。しかも意外なほど重心が高くフラッとすることがあるのも気になる。これが乗り出した際の第一印象。
しかしこれが慣れるにしたがって素晴らしい乗り味に変わってくるのだからエレクトラグライド ハイウェイキングは面白い乗り物であると脳裏に残っている。それでは続きを記述してゆこう。
ストリートを抜けて高速道路へとステージを移す。排気量1923ccを誇るVツインエンジンは、同エンジン搭載モデルでは低回転域からドカンとしたトルクを出す味付けがされることが多い中、385kgの車重と相まってとろけるような優雅な乗り心地をもたらしてくれる。だから2000回転程度で流れるようなクルージングは至福の時となる。このままどこまでも行こう。そういった気分にさせられる。もちろん強大なパワーも健在でスロットルを一度ワイドオープンすれば背中を蹴られんばかりの濃密な加速を楽しめる。
そしてもう一つエレクトラグライド ハイウェイキングの大きなポイントをお伝えしなければならない。それはシート下にサスペンションをセットしていることだ。現行FL系シャシーを使用しているため、リアサスペンションはツインショックだ。それとは別にシートにモノショックを備えている。これがクルージングの際に極上の乗り心地をもたらす隠し味の一つとなっている。ただしワインディングロードでコーナーを攻めるような走りをした際にはリアサスペンションの動きと別にシートのショックが働くことからトラクションの掛かり具合が伝わってきにくいと感じる面もあった。これに関しては両サスペンションのセッティングで処理できるかもしれない。
何にせよフロントフォークの2本のサスペンション、リアのツインショック、さらにシート下モノショックという合計5本のショックアブソーバーがもたらすライディングプレジャーは極上だと言える。そもそも限定モデルということであるからして、エレクトラグライド ハイウェイキングに乗ることができるのは限られたわずかな人だけではあるが、これは他のハーレーとはまた違った魅力を感じられるものに仕上がっているので、ゆくゆくはカタログラインアップモデルとなって欲しいと思う。
158Nmの最大トルクを3250回転で発生させるミルウォーキーエイト114エンジンが搭載される。ボアストロークは102×114.3mm、排気量1923ccのVツインエンジンならではの、ロングストロークを活かした特性を味わえる。
MT90B16サイズのフロントタイヤ。ホワイトウォールや大型のフェンダーがクラシックな雰囲気を助長している。ブレーキの効き、タッチはハーレーならではの懐の深さを感じさせつつ、絶対的な制動力を兼ね備えている。
フロントマスクの構成はロードキングと同様なのだが、脱着可能なスクリーンの下部が車体色に合わせたカラーリングとなっているのがポイントだ。
イグニッションスイッチ及び、メーターはタンクコンソール上にセットされている。アナログタイプの残燃料計などもクラシックな雰囲気があって良い。
メインヘッドライトの左右にレイアウトされているフォグランプ(補助灯)のスイッチがハンドル裏手に用意されている。山間部など暗い夜道を通る際など上手く活用したい。
プレミアム復刻限定モデルであるアイコンモーターサイクルコレクションの第三弾となるエレクトラグライド ハイウェイキングはオレンジが1000台、マゼンタ750台が生産された。
燃料タンク容量は22.7リットルとたっぷり。タンクの横幅が広いがむしろ太ももにフィットして良い。オレンジもマゼンタも特別感があり、どこでも映える。
ソロサドルシートもエレクトラグライド ハイウェイキングの大きなポイント。790mmというシート高は、跨ってみると数値以上に高く感じるが、走らせてみるととても快適。シート下にはショックアブソーバーを備えている。
サイドケースをあえてボディカラーと同色にせずホワイトにしているところもこだわりが感じられる。バンパーもマッチしている。どこかしらロードキングポリスに通じるイメージもある。
ワンタッチで開閉ロックができるサイドケースは一度使うと手放せない装備だ。長尺の荷物でもスッポリ入るため多くの場面で便利に使うことができる。
リラックスして足を投げ出すことができるフットボードが採用されている。ポジション的にも非常にバランスが取れている。シフトペダルは残念ながらシーソータイプではない。
ウインカースイッチはハーレー伝統の左右振り分けタイプ。オートクルーズ機能も備えており、ロングツーリングは特に快適。トラクションコントロールなど安全面も抜かりなし。
サイドケースを外すとリアショックが顔を出す。プリロード調整は簡単なので適宜セッティングを出すと良いだろう。ベルトドライブもハーレーのアイデンティティだ。
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