2022年のミッドイヤーモデルとして電撃デビューを遂げたナイトスターが、早くも2023年モデルでブラッシュアップ。さらには上位モデルにあたるナイトスター スペシャルが追加された。今回はそのナイトスター スペシャルにターゲットを絞り、考察及び試乗インプレッションを行っていきたいと思う。
空冷エンジンを搭載した旧スポーツスターファミリーが生産終了となり、水冷エンジンを搭載したスポーツスターSが登場したのはナイトスターよりも一年早い2021年のこと。空冷エンジンでは考えられなかった怒涛のパフォーマンスや、剛性力の高いシャシーなどにより、スポーツスターの新時代を見事に表現した一台だった。
がしかし、そのスタイリングに関してはモダンさが過ぎたとも思われ、従来のスポーツスターファンとするともはや別物として受け入れられた節も見受けられた。そのような中登場したナイトスターは、空冷スポーツスターを連想させるオーソドックスなスタイリングでありながら、しっかりと”新しさ”が感じられるパッケージとなっており、幅広い層から支持されたのである。
まずは2023年最初のトピックスモデルとして登場したナイトスターとナイトスタースペシャルの特徴、並びに違いから見てゆくことにしよう。
ナイトスターは従来ヘッドライトに備わっていたスピードカウルが撤廃されたほか、これまでグラフィックがあしらわれていたダミータンクがバー・アンド・シールドエンブレムへと変更された。これによりより一層オーソドックスな雰囲気がもたらされている。
注目のナイトスタースペシャルは、スピードカウルが採用されたほか、パッセンジャーシートとタンデムステップも標準で装備する二人乗り仕様となっている。特筆すべきは充実した電脳装備の数々である。メーターとインフォテインメント機能を集約する4インチ丸型TFTスクリーンを搭載し、スマートフォンやヘッドセットなどとBluetooth接続も可能。スポーツ、ロード、レインとユーザーカスタム2種の5つのライドモードが用意される他、空気圧センサーやクルーズコントロールまでも装備している。中でもスマートフォンに専用アプリをダウンロードし、接続することでディスプレイ上にナビゲーションマップを表示させることができるのは、とても便利な機能となっている。それではナイトスタースペシャルに実際に乗り、感触を確かめていきたいと思う。
ナイトスタースペシャルのカラーリングはビビッドブラック、ブラックデニム、イエロー系のシルバーフューズと、今回テスト車両となったビリヤードブルーの4色が用意されている。特にイエローとブルーはビビッドな印象でありながらも、どこか懐かしさを感じさせるノスタルジックな雰囲気も兼ね備えている。それはダミータンクサイドにあしらわれたショベルスポーツスターを連想させるレインボーグラフィックのメダリオンエンブレムによることも大きい。
ナイトスタースペシャルのシート高はスタンダードモデルと比べて10mm高い715mmだが足つき性は良い。跨り車体を起こしてみると、225キロという車重がありながらも、それほどの重さが伝わってこない。これについては走り出した後から、どうしてなのかが良く分かったので後述しよう。
エンジンを始動し走り始める。クラッチレバーは軽く低回転からトルクがあるので、ビギナーや女性ライダーでも扱いやすいだろう。3000回転程度で小気味よくシフトチェンジを行ってあげれば、十分ストリートで快走を楽しめる。ただエンジンの面白さが頭角を現すのは5000回転から先の世界だ。すべてを一気に後方へと置きざるような加速感を楽しめるのはレボリューションマックス975Tエンジンの醍醐味と言えるものである。
ただミッションをニュートラルポジションにし、スロットル全閉状態からブリッピングであおってみると、低回転での”ツキ”に若干のだるさが見受けられた。これはきっとレギュレーションをパスするための設定であったり、ドンツキを抑制するものと考えられる。エンジンのポテンシャルには余裕があるので、気になるならコンピューターチューンを行えばよいだろう。
そうそう、ナイトスターとナイトスター スペシャルの違いであまり触れられていないのだが、ハンドル位置が異なる。ナイトスター スペシャルの方が高い位置にセットされているのだ。実は今回のテスト試乗の直前にスタンダードモデルのナイトスターに乗ったのだが、低くセットされたハンドルバーは抑えが効いて扱いやすく、Uターンも楽にこなせた。一方のナイトスター スペシャルはハンドルが高い分、リラックスしたライディングポジションとなり、長時間に及ぶツーリングなどでも疲労度が少ないと思えた(両車を乗り比べてナイトスター スペシャルの方が若干力強く思えたものだが、多分ライディングポジションの違いによりそう感じたのだろう)。
それと車体を起こした際に軽く感じられたという話だが、それは走らせると如実に伝わってきた。このことのポイントとなっているのは、燃料タンクがシート下に収められていることにより重心を低くできていることだ。低重心とマスの集中により軽快なハンドリングと安定感を両立できているのである。ちなみにダミータンク部分にはエアクリーナーボックスが収まっている。
スポーツスターSと同じメーターディスプレイの視認性は良く、様々なインフォメーションも伝わってきやすい。ライディングモード切替の他、各種設定も直感的に行うことができた。こういったスイッチボックスの使い勝手に関しては、長い歴史を使い進化してきたハーレーダビッドソンらしいと思える。
価格を見るとナイトスターが226万3800円からなのに対し、ナイトスター スペシャルは237万3800円からとなっている。高性能メーターディスプレイ、スピードカウル、タンデムシート及びステップ、これらを揃えると、11万円ではとうてい収まらないことを考えるとナイトスター スペシャルの方がお得に思えてしまうものだが、潔い佇まいのスタンダードモデルを元に、11万円分自分好みのカスタマイズを施すのも良さそうであり、この両車の選択はとても悩ましいものだと思えた。なお、東京、大阪をはじめとした今春のモーターサイクルショーの会場で展示されるので、是非実車を確認していただきたい。
ナイトスタースペシャルに採用されている4インチ丸型TFTスクリーンには、あらかじめスマートフォンにダウンロードした専用アプリと連携させることでナビゲーションマップを表示させることができる。
60度Vツイン水冷方式のレボリューションマックス975Tを搭載。97×66mmのビッグボア、ショートストロークタイプで、高回転まで元気良く吹け上がる。最高出力の89馬力を7500回転で、最大トルク95Nmは5750回転で発生させる。
大胆に肉抜き加工されたスタイリッシュな新デザインキャストホイール。空気圧センサーを備えているのもポイント。フロントタイヤサイズは100/90-19。フロントフォークの動きも良く、ナチュラルなハンドリングを楽しめる。
リアタイヤサイズは150/80B16。太さこそ違うものだが、フロント19インチ、リア16インチの組み合わせは、空冷スポーツスターでスタンダードなセットだった。水平方向に伸びたサイレンサーも空冷スポーツスターを連想させる。
4インチ丸型TFTスクリーンはスポーツスターSと同形状。ハンドルバーにハングセットされており視認性が良い。ライディングモードやギアポジションなど通常のインフォメーションの他、インフォテインメント機能の呼び出しもできる。
スポーティなイメージを助長するスピードカウルを装備。空力にも優れており、高速クルーズも快適。やや高めにセットされたハンドルとの相乗効果で、クラブスタイル的な纏め方にも見える。
シート高は715mmでスタンダードモデルのナイトスターより10mm高い数値だが、その差は感じられない。シート形状は同じで表皮の仕上げが異なる。ナイトスター スペシャルはタンデム仕様とされている。
ライザーの形状がナイトスターと違い、ナイトスター スペシャルの方がハンドルセット位置が若干高い。その分ライディングポジションはリラックスした印象。インフォテインメントシステムと連動したスイッチボックスを備える。
空冷時代からのファンの中には、スポーツスターと言えばツインショックという方も多いだろう。スポーツスターSではモノショックが採用されていることもあり、なおさらかもしれない。プリロード調整機構付き。
ナイトスタースペシャルは1970年代のトレンドを彷彿させるレインボーグラフィックのメダリオンエンブレムを採用。なお、燃料タンクはシート下にあり、このダミータンク内にはエアクリーナーボックスが収められている。
ステップバーはミッドコントロールにセットされている。コーナーリング時にステップ入力がしやすく、6段ギアとされたミッションの入りもスムーズだった。
ハーレーダビッドソンのアイデンティティとも言えるベルトドライブを採用している。ボックスパイプのスイングアームにツインショックというシンプルな構成なので、基本的なメインテナンスはしやすいだろう。
この角度から見ると、空冷時代のスポーツスターをしっかりと連想することができる。ナイトスター スペシャルは、乗って良し見て良しであり、ヒットが約束されたモデルと言えよう。
ライダー側のシートを跳ね上げると燃料給油口が姿を現す。軽快なハンドリングと低重心による安定感は、燃料タンクをこの位置にした恩恵が大きい。シート裏にはリアサスペンションのプリロード調整ツールなども用意されている。
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