2018年モデルから端を発し現在も続いている現行ソフテイルフレームシリーズ。スポーティなモデルが多く存在したダイナファミリーと統合されたこともあり、今のハーレーダビッドソンラインナップにおいて中心的な存在を数多く輩出している。その中でも異端的な存在の一つとしていつも名を挙げられるのがブレイクアウト114だ。
ロー&ロングなフォルムに、21インチの大径フロントホイール、240mm幅の超ファットなリアタイヤ、ライダーに腕をまっすぐ前方へと伸ばすことを要求してくる一文字のドラッグバーハンドルなど、際立ったキャラクターで纏められたファクトリーカスタム仕様だ。
戦闘開始または強行突破などの意味を持つブレイクアウトというネーミングで、スタイリングは見る者を圧倒するほどのインパクトを持っているが、果たして乗り味はどのようなものなのだろうか。今一度、ブレイクアウト114に触れ、その感触を探っていくことにする。
クルーザーシリーズとして一元化された現在のソフテイルファミリー(一部他フレームも混同する)。2022年モデルで新たに仲間に加わったローライダーSTやその派生モデルと言えるローライダー・エルドラドなど注目のニューカマーのほか、ファットボーイ114やヘリテイジクラシックなど老舗看板的なメンバーも取り揃えているクルーザーシリーズだが、特に際立って異質なスタイリングを持っているブレイクアウト114の存在を忘れてはならない。
まるでビルダーが仕立て上げたカスタムショーモデルのようなブレイクアウト114のスタイリングは、どこにおいても映えるものである。
以前はミルウォーキーエイト107と114エンジンの2ラインとしていたが、現在のカタログシートでは排気量の大きなブレイクアウト114のみとされている。その裏にはブレイクアウトを求めるライダーが、よりアグレッシブなモデルを求めているということを意味していると考えることができる。インパクトのある見た目、そして強烈な走り、どのようなライダーがブレイクアウト114を手にするのだろうか。
低く構えたボディライン、手足を前方に投げ出し「つ」の字の格好となるライディングポジションなど、ドラッグレーサー的な雰囲気を感じさせるブレイクアウト114。ライセンスプレートよりもワイドに見える程太いリアタイヤを見ると、これは本当に思うように曲がることができるのかと、乗る前に考えてしまうことだろう。
シート高は665mmと抑えられており、足つき性は良い。重心も低く、車体に跨り起こしてしまえば安心して走り出すことができる。ただし、一文字形状のドラッグバーハンドル、フォワードコントロールにセットされたステップはどちらも遠いため、ある程度体格にも余裕があった方が、気持ちよく扱えるには違いない。
登場から5年以上の時が経ち、すでに成熟した感のあるミルウォーキーエイト114エンジンは、トルクの出方、サウンド共に申し分ない。以前は果敢なスロットル操作を楽しめるミルウォーキーエイト107の方が、ブレイクアウトのキャラクターに合っていると考えていたこともあったが、今では、ただ強い加速感だけでなくマイルドな面もしっかりと出せるようになったミルウォーキーエイト114エンジンも非常にマッチしていると思える。
テスト車両を乗り出すと、一つ目の交差点から”立ちの強さ”が気になった。車体を寝かせて曲がってゆくのだが、コーナー出口に向かってスロットルを開けると、車体が起き上がるとともに超アンダーステア傾向となるのだ。
これは前後タイヤサイズのバランスを考慮すると、当たり前と言えば当たり前のことでもある。しかし、それも乗り方が分かればなんてことはない。
まずコーナーに入る前に、思い切り逆ハンドル(曲がる方向と反対側)を切り、きっかけを作り一気に車体を寝かせる。コーナリング中はリーンアウトをイメージするとさらに乗りやすいだろう。そしてスロットルを開くと外に広がっていくことを念頭に置き、気持ちやや内側のライン取りを心掛ける。これだけで、ワインディングでもステップをするようなダイナミックな走りを楽しむことができる。
もちろんストレートでの強烈な加速も圧倒的であり、ステップとシートに体を突っ張らせていないと振り落とされそうになるほどである。
フロントサスペンションは正立フォークで、ホイールのデザインを露出したいということもあってか、シングルディスクとなっていることなどから、とりたててスポーツライディングを意識して作られているとは言えないが、しっかりとスポーツ走行の楽しさは味わえる。
しかも回転計を確認しながら走らせていると、普段使っているのは2000~3000回転で、引っ張ってもせいぜい3500回転程度なのだが、その範囲でスロットルワークの仕方次第で、様々な表情を楽しむことができるのだ。
普段色々なバイクのテストを行っているが、ミルウォーキーエイト114は非常に懐の深いエンジンだと思え、その心臓部と個性際立つブレイクアウト114のスタイリング、そして乗り味というセットは、確かに魅力的に感じるなものなのだと再確認することができた。
付け加えておくならば、カスタムビルダーがこしらえたものではなく、ファクトリーが作り上げたモデルという点での信頼性の高さというのも大きなメリットとなっていると言えよう。
排気量1868ccのミルウォーキーエイト114エンジンを搭載。102×114.3mmのロングストロークスタイルで、155Nmの強烈なトルクを発生させる。以前はミルウォーキーエイト104のモデル設定も存在した。
130/60B21サイズの大径フロントタイヤを採用。シングルディスクブレーキなので、ホイールの美しい造形を楽しむことができる。トレール量は145mmとフロントフォークは寝かせた恰好でセットされる。
カスタムライクな異形丸形LEDヘッドライトが採用されている。個性的なデザインなので、コンパクトでありながらも印象的なフロントマスクを生み出している。
ライダーの臀部をしっかりとサポートする形状とされたライディングシート。強力な加速でも体を支持することができる。パッセンジャーシートはセパレートタイプを標準で装備する。
ハンドルライザー上部に備えられたコンパクトな液晶メーターディスプレイ。セットされている位置や液晶の質がよく、視認性は良い。速度や残燃料、シフトインジケーターの基本インフォメーションの他、回転数や時間、距離計なども表示可能。
丸みを帯びた燃料タンクの容量は13.2リットルと十分。現行モデルでのカラーバリエーションは写真のガンメタリックの他、ブラックとミネラルグリーンの三色が用意されている。さりげないピンストライプがポイント。
リアフェンダーはショートにチョップされたデザインとされており、ライセンスプレートよりもワイドに見える極太リアタイヤを印象付けるのに一役買っている。ブレーキランプはモダンハーレーのアイデンティティと言えるウインカー内蔵式。
市販バイク最大値である240/40R18サイズの超ファットなリアタイヤは、ショートタイプのマフラーと相まって、車体を斜め後方から見た際に、特にインパクトのあるシルエットを生み出している。
ステップはフォワードコントロールにセットされている。かかとで踏ん張り、腰をシートに押し付けることで、体をホールドできる。なお、ブレイクアウト114は、コツを掴めば良く寝て良く曲がるが、バンク角は深くはない。
後方から見ると真一文字に見えるドラッグバーハンドル。かなりスタイリッシュだが、幅が広い上、遠くにセットされているため、上半身の前傾姿勢を強いられる。
現行ソフテイルフレームモデルに採用されているリアショックは、個人的に感触が良いと思っている。プリロードの調整も可能で、ライダーの体重にもよるのだが、通常はソロで無積載の場合、最弱で良い。
駆動系はハーレー伝統のベルトドライブ。外見上リアサスペンションが見えないハードテイルスタイルでまとめられており、すっきりとした印象を受ける。
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