1960年代、ロッカーズが集うロンドンの『エースカフェ』を舞台に、速さを競う若いライダーから生まれたカフェレーサーというカスタムスタイル。これをアメリカ流に解釈すると、1977年に生まれたハーレーダビッドソン XLCRとなるように、それぞれの国が持つモーターサイクルカルチャーによって違った姿で表現される。
「今回手がけたこの一台は、ヨーロピアンでもアメリカンでもない“ジャパニーズカフェレーサー”。街で見かける日本らしいカフェレーサーに仕上げてみた」
そう語るのは、シウンクラフトワークス代表の松村友章氏。ビンテージハーレーのチョッパーというイメージが強いシウンだが、年に1~2台はカフェレーサーを手がけるなど、このスタイルへの思い入れは人一倍強い。全長が長くなるタテ置きVツインエンジンのスポーツスターをベースとするため、そのままヨーロピアンスタイルを取り入れるのは違和感があるし、かといってXLCR風にしてしまうのも芸がない。「80年代のバタくさいスタイルを目指した」と、確固たる定義を持つ松村氏だからこそ生み出せた一台と言える。
個性的な外装に目が行きがちだが、キモは前後の足まわりとカラーリングにある。「ここだけは譲れない」と、前後ホイールはフロント19/リア18インチという仕上げに。「このビジュアルを取り入れたかった」と、リアタイヤはかつてカワサキZ750GPにも使われたダンロップK427をチョイス。それに合わせてホイールは1978 XLCRのそれを換装している。
車体を印象づけるブラウンメタリックにも注目されたし。「カウルとタンクの陰影がくっきり出るよう、調色にこだわった」と、メタリックの種類を徹底的に追及。その要望を受けた関西のペインター、ウォールナインによって仕上げられたこのカラーリングは、名古屋で開催された『JOINTS 2015』にて、プロのペインターをも唸らせたほど。
最低限のカスタムメニューとしつつ、譲れないところは徹底的にこだわったシウン渾身のカフェレーサー。新しいオーナーを得て街を駆け抜ける姿を早く見てみたい。