ハーレー史上最大排気量となる1923ccのミルウォーキーエイト117エンジンを採用したCVO以外のモデルの登場。これはハーレーダビッドソン2022年モデルの大きなトピックだった。それはローライダーS、ローライダーST、ストリートグライドST、ロードグライドSTを指している。その中でもローライダーSは、従来モデルから人気が高かったものの、ブランニューモデルではないために陰に隠れている感があるが、実を言うと別物として仕上がっている。それは新たなエンジンの搭載だけでなく、メーター類の取り付け位置変更や、全長を伸ばされたリアサスペンションの採用など、大幅に手が加えられているからだ。その新生ローライダーSを紹介してゆこう。
西海岸を中心に人気の高いクラブスタイルで纏められたローライダーSが登場したのは2016年のこと。当初ダイナフレームを採用したSシリーズとして名を連ねていたが、新型ソフテイルフレームの登場によりダイナファミリーがなくなり、ローライダーSも一度姿を消すこととなる。しかしファンからの期待の声に応えソフテイルとして2020年モデルにて復活を遂げた。そのローライダーSが、2022年モデルではミルウォーキーエイト117エンジンが与えられパワーアップが図られた。
そもそもローライダーSはクラブスタイルの中でも、市街地をガンガンに走り回るフリスコと呼ばれるタイプに当てはめることができるモデル(フリスコチョッパーズが手掛けたカスタムバイクが語源)。つまり走り屋系に特に好まれている一台だ。その戦闘力は高く、ハーレーダビッドソンのラインナップ中最高峰のスプリンターとして噂されている。そのローライダーSが排気量を引き上げられ、トルクを増強して登場したのだから、これはもう乗らずにはにはいられない。さっそく日本に上陸したばかりの2022年モデルローライダーSを試乗テストすることにした。
コンパクトなビキニカウルに細身のボディ、高い位置にセットされたバーハンドル、いつ見てもローライダーSはクールだ。2022年モデルではミルウォーキーエイト117エンジンが採用され、ハイパフォーマンスエアークリーナーの形状が変わったことや、従来モデルではタンク上にセットされていたメーター類がハンドルマウントとなったことなどにより、スポーティーなシルエットにさらに磨きがかけられた印象を受ける。
車両に跨り走り出す。実は直前まで2022年モデルの新型ストリートグライドSTに乗り高速の渋滞路で苦戦しており、それと入れ替えてスタートしたので、格段に軽く扱いやすく感じる。より排気量を拡大したエンジンの採用によりトルクは約5%増大しており、低回転で流すような走りは快適且つ安楽なものだ。
フロント19インチ、リア16インチというタイヤサイズなので、小回りはあまり得意ではないが、それでもバランスが良いために、すいすいと市街地を走り回ることができるものとなっている上に、スリムな車体を活かしたストリートホットロッド的な楽しみ方を満喫することができる。
首都高速道路の周回路へと進むと、ローライダーS特有のかなり”やり手”のキャラクターが頭角を現す。まず強烈なトルク、そして加速はノーマルとは思えないほどだ。高速道路に乗ったばかりは、しっかりとタイヤに熱が入ったことを感じ取りながら走らせていても、そしてトラクションコントロールが備わっていることを分かっていながらも、コーナーでのスロットル操作には気を使っていた。が、徐々にバンク角を深くしながら、スロットル操作もラフに扱えるようになってゆく。足つき性に関しては従来モデルと差を感じられなかったが、サスペンションが延長されトラベル量が増えたことにより、直線での加速に加えコーナリングにも磨きがかけられたのだ。ダイナ時代からこのアメリカンマッスルカーのようなダイナミックな乗り味が好きだったのだが、ここにきてそれが昇華したように思える。
2022年モデルのローライダーSは改めて惚れ直させる高い完成度を誇る一台に仕上がっている。兄弟モデルとして登場したローライダーSTの注目度が高いが、実はパフォーマンスの高さやカスタムベースとしては、ローライダーSの方が魅力のあるモデルだと感じている。
ローライダーSをはじめとしたニューモデル群はこれから開催される東京・大阪・名古屋のモーターサイクルショーで展示され実車を確認することができるほか、3月19日~4月3日まで全国のハーレーディーラーにて「UNITED WE RIDE 2022年最新モデルフェア」が開催されるので注目していただきたい。
ローライダーSは2022年モデルからミルウォーキーエイト117エンジンが搭載される。トルクは約5%向上しており、純正アクセサリーに用意されているスクリーミンイーグル製のパフォーマンスパーツを使いさらにパフォーマンスアップすることができる。
マットダークブロンズで仕上げられたキャストアルミホイールに110/90B19サイズの専用タイヤがセットされる。ブレーキはフローティングディスクをダブルで備えており、タッチ、効きも良好だ。
ローライダーSのアイデンティティとも言えるコンパクトなフロントカウル。小さいながらも防風性能は高く、その効果は少し走らせただけでも得られる。丸型ヘッドライトケースにLEDライトを組み合わせている。
形状、座り心地共に良いソロシート。腰を横にずらしてコーナーに入るような走らせ方もしてみたが、感触は良かった。なおシート高は20mm引き上げられ710mmとなっている。
従来モデルではタンク上にセットされていたメーターがハンドルマウントへと変更された。このことにより走行中のメーター視認性が格段に向上している。アナログとデジタルを組み合わせたシングルメーターとなっている。
フューエルタンクの燃料容量は18.9リットル。見た目よりも多く入る印象。コンソールからメーターが省かれた分、横から見ると薄く、スマートなスタイリングとなっている。
ウインカー及びストップランプはLEDを採用している。リアサスペンションが従来のローダウン仕様ではなく、ノーマル長のものが採用されたこともあり、タイヤとフェンダーのクリアランスも広がっている。
ローライダーSのスポーティーさを助長するショットガンマフラーも健在。メリハリの効いた良いサウンドを奏でる。排気量が引き上げられたからかは分からないが、音量が増大したように思えた。
ソフテイルフレームなので、リア周りはシンプルかつすっきりとした構成だ。リアタイヤは180/70B16で、フロントとは3インチのサイズ差があり、コーナーではリアタイヤから曲がっていく印象。
4インチライザーに1インチハンドルバーをセット。シートに腰を下ろし、前方にまっすぐと手を伸ばした位置にハンドルがある。このライディングポジションはアグレッシブな走りを掻き立ててくる。
φ43mmの倒立フロントフォークは動きが良く、フロントタイヤの状況がよく伝わってくる。特に高速での路面追従性能は高く、安心してスポーツライディングを楽しむことができる。
ステップはミッドコントロールでセット。荷重をかけるなら、もう少し手前(ライダー側)でも良いかとも思うが、見た目と操作性を両立したベターな位置だ。ギアチェンジもしやすい。
車体の下をよく見てみないと見つからないリアサスペンション。実は2022年モデルのローライダーSではエンジンの変更と同じくらい、この延長されたリアサスペンションがポイントとなっている。