2022年モデルで新たにツーリングファミリーに加わったストリートグライドST。ハンドルマウントとされたアイコニックなバットウイングフェアリングを持つ最新のプレミアムバガーとして、高い注目を集めている。ポイントとなっているのは、なんといってもハーレーダビッドソン史上最大排気量を誇る、ミルウォーキーエイト117エンジンが搭載されていることだ。1923ccのVツインエンジンは、他を圧倒するパフォーマンスとラグジュアリーなフィーリングを併せ持っている。そのストリートグライドSTを触れる機会に恵まれたので、さっそく詳細をお伝えしよう。
電動バイク開発プロジェクトや小排気量モデルの追加、昨年はハーレーダビッドソン初となるアドベンチャーモデル、パン アメリカ1250の導入と、さらに水冷エンジンを搭載した新時代スポーツスターの発表など、新たな道を模索し、歩み始めている印象を受けるハーレーダビッドソンだが、先だって発表された2022年イヤーモデルの内容は、ツーリングファミリーとソフテイルファミリーの伝統的なビッグツイン系モデルでのニューモデル導入(しかもCVOを含め8モデル!)というものだった。もちろん未開拓のステージへ進出することは素晴らしいことではあるが、やはり昔からハーレーに憧れを抱き、実際に触れてきたようなファンの多くはこのラインナップに納得したことだと思う。今回はそんなハーレーダビッドソン2022年イヤーモデルの中から、ストリートグライドSTをピックアップし、試乗テストを行うこととなった。
ニューカマーであるストリートグライドSTは、バットウイングフェアリングを持つバガーモデルなので、パッと見たところストリートグライドスペシャルとそう区別がつかないと言う方もいることと思う。しかしよく見てみると結構異なるキャラクターとなっていることが分かってくる。例えばソロシートに変更されていることや、ツアーバッグもエンド部が延ばされたストレッチタイプではなく、オリジナルスタイルが採用されているところなどから、よりスポーティなスタイリングとなっている。そして最大のポイントとなっているのが、総排気量1923cc、ハーレーダビッドソン史上最大のVツインであるミルウォーキーエイト117エンジンが採用されていることだ。どのような仕上がりとなっているのか実際に触れ探っていくことにしよう。
これまでにストリートグライドスペシャルやCVOストリートグライドなどに幾たびか触れたことがあるが、どのモデルも特有な威圧感があったことをよく覚えている。仕事柄日々様々な大型バイクを乗り回すにも関わらず、である。それはストリートグライドSTでも同様だった。その上ブラックアウトされたボディのため引き締まった印象を受け、さながら筋肉の鎧をまとったアスリートのような佇まいである。
車体に跨るとストリートグライドスペシャルと比べて少々腰高なイメージだ。それもそのはずで、シート高は20mm引き上げられており、シングルシート仕様ということからも”良く走る”ことを連想させてくれる。ストレッチされていないツアーケースが採用されていることも相まって、テール周りに演出された軽快感はなかなか魅力的だ。
フェアリングの内側はピアノブラックで艶やかに塗装されており、4連メーターが並び、さらに最新のインフォメントシステムやスピーカーが置かれている。非常に高級感のあるコクピットであり、それだけで気分が高められる。
エンジンを始動しやや気を使いながら発進する。それと言うのもハーレーダビッドソン史上最大排気量となる1923ccのミルウォーキーエイト117エンジンを搭載しており、これは168Nmを誇る最大トルクを僅か3500回転で発生させると言うではないか。以前試乗テストを行ったCVOストリートグライドも同エンジンではあったが、それも半年以上前の話だ。どれだけ凶暴な性格なのかと探りながら走り進めると、意外にも従順なキャラクターに纏められていることが分かった。少々スロットルを開くだけで豊かなトルクを得られるために、セコセコしたような走りをしなくてよいのだ。
市街地をある程度走り感触を得たうえで高速道路へとステージを変える。合流時にスロットルをワイドオープンすると、レッドゾーンが刻まれている5000回転オーバーまで一気に吹け上がる。一瞬脳が置いていかれるほどの怒涛の加速感だ。しかし一方で6速トップギアで時速100キロ巡行をすると2000回転少々であり眠気を誘うほどのリッチなクルーズを楽しむことができる。
ワインディングロードも好物だった。ハンドルに覆いかぶさるような乗車姿勢を取り果敢にコーナーへアタックを掛けると、フロントヘビーではあるが、良く効くブレーキと粘るサスペンションのおかげで気持ちよくコーナーをパスすることができる。もちろん重量級なので油断は禁物なのだが、コーナーリング中にシフトチェンジを行うようなタブー的な操作をわざと行ってみてもすんなりと許容してくれた。
これはある種のスポーツバイクであり、ラグジュアリーなクルーザーでもある。巨大で、重量級、そしてハイパワー、このパッケージは、乗り手を選ぶと言っても過言ではないだろう。このスペシャルなモデルは特別な人間にだけ許されているのかもしれない。しかしどうだろう、ストリートグライドSTを颯爽と乗りこなすために、フィジカルやライディングスキルを磨くというのはとても素敵なバイクライフと思えないだろうか。明日のライドを楽しむために己を磨く、それはむしろバイカー冥利に尽きるものと私は考えた。
この記事を見たのがモーターサイクルショー前ならば朗報だ。ストリートグライドST、ローライダーSなどの2022年ニューモデルが「東京・大阪・名古屋の各モーターサイクルショー」に展示されることになっている。さらに令和4年3月19日~4月3日までの期間、「UNITED WE RIDE 2022年最新モデルフェア」が全国のハーレーディーラーで開催される予定なので、ぜひ実車に触れてみて欲しい。
排気量1923ccのミルウォーキーエイト117エンジンを搭載。最大トルク168Nmを3500回転で発生させ、一発の爆発力そして瞬発力はかなりのもの。スロットル全閉時にハンドルやシートから伝わる振動が若干気になったが、慣らし運転が済めばスムーズになることを期待する。
しっかりとしたコシを持ちながら、ヘビーなフロント周りを支えるφ49mmのフロントフォークに、専用の19インチタイヤを組み合わせる。取り回しこそ重いが、走り出せばいたって快適に扱うことができるのは流石と言ったところ。コーナリングABSも標準装備する。
圧倒的な威圧感を演出するバットウイングフェアリング。歩くような速度で走る渋滞路やストップアンドゴーが多いシチュエーションではフロント周りの重さでふらふらとしがちだが、これがなくては始まらないとも言えるストリートグライドSTのアイデンティティだ。
バットウイングフェアリングの内側は、ピアノブラックで艶やかな塗装が施されている。視認性の良い4連アナログメーター、最新のインフォテインメントシステム、スピーカーなど、この上ない高級感を味わうことができる。
ストレッチツアーバッグではなく、スタンダードなツアーバッグであることから、スポーティな印象を受けるテールセクション。リアサスペンションもスタンダードタイプなので、ストリートグライドスペシャルより全長が短い。ラジオアンテナも撤廃された。
ストリートグライドSTは強烈な加速をした際にも、しっかりと腰を支えてくれる形状としたソロシートが標準となっている。シート自体はクッションが薄いものとなっているが、シート高は710mmと多少高い。
ツーリングファミリーらしく、ステップボードを採用。シーソーレバーではないがシフトチェンジはしやすい。問題は反対側で、フットブレーキ操作をした際に、エンジンから出るエアークリーナーボディに脛が当たるのが気になった。
容量22.7リットルと、とてもボリュームのあるフューエルタンク。ゆったりとクルーズを楽しむような走り方であれば、燃費は良いだろうが、スロットルをガバガバ開けるような走り方をしていたら、残燃料計の針がどんどん減っていった。ほどほどに楽しみたい。
ストレッチバッグでなくとも十分な収納量を誇るスタンダードツアーバッグ。使い勝手が良い上に着脱も二つのネジを回すだけといたって簡単。一度使うと手放せなくなる装備の一つだ。
インフォテインメントシステムはタッチパネルに対応しているが、左スイッチボックスを介しても様々な操作を行うことができる。純正のヘッドセットを組み合わせれば、さらに快適なツーリングを楽しむことができる。
プリロード調整ダイヤルを備えたツインショックリアサスペンション。体重72キロの私の場合だとスタンダードセットでは、やや硬めに感じられた。一度全部緩めて走ってみて、徐々に締めて調節すると良い。
フェアリングの内側には小物入れ兼、インフォテインメントシステムと有線接続するUSB電源も備わっている。さらに右下にはシガーソケットタイプの電源も確保されており、各種ガジェットの給電などに使うことができる。
ホイールの造形やカラーリングが良く、ツアーバッグやマフラーでほとんど見えないのが残念。タイヤはフロント130/60B19、リア180/55B18と絶妙なサイズが採用されている。
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