前後16インチに油圧式テレスコピックフォークという往年のFLらしさを残しつつも、無駄を削ぎ落とした個性がにじみ出ているボバースタイルは、「テーマは“大人のボバー”」とオーナーおよびビルダーが狙ったとおりのフィニッシュとなっている。
どこのビンテージカスタムショップのものかと思いきや、なんと手がけたのは神奈川・横浜の正規ディーラーである一国サイクルワークス。その昔、スポーツスターカップの常連として名を馳せたこともあり同ショップは走り系カスタムなイメージが強いが、ショベル以前のモデルでもこうして取り扱うし、そのノウハウも持ち合わせている。この一台は、一国のそんなストライクゾーンの広さを証明したと言えよう。
オーナーの米村さんは、ソフテイルデラックスやロードキング、スポーツスターなどさまざまなバイクを乗り継いでこのショベルに到達。車両選びからカスタムまでパッケージでオーダーしたそうだが、「米村さんからの要求をバランスよく車体に落とし込むのに時間を要した」と代表の梅島国彦さんは苦笑いする。ビルダーがもっとも頭を悩ませたのは、オートバイとしての性能をきちんと確保すること。その流儀とオーナーの要望をミックスさせ、一年の歳月を経て完成の日を見たという。
「今のところ、カスタムしたいところは特にないですね。このシルエットに十分満足しています。ビンテージモデルに対する不安も、今はまったくないと言えるほど絶好調なんですよ。梅島さんのおかげですね」
トラブルの気配すらしないショベルとの蜜月を送る米村さん。誰もが憧れるビンテージハーレーの世界は、やはり信頼できるお店との出会いが大きいのかもしれない。