10年という歳月のなかでさまざまなスタイルを模索し、到達したこのスタイリング。「スポーツスターを徹底的にブラッシュアップしたらどうなるか」という命題を抱え、そこから生まれたかのような姿に、威圧感を覚えずにはいられない。
オーナー自身も“走り系”へのカスタムを求めていたとのことで、課せられたお題目は「太いタイヤでスポーティに」。あたかも車両そのものを造り替えるかのごとく、Glory Hole のビルダー 佐川氏が大胆なカスタムを敢行。BITO R&D 製“MAGTAN”ホイールを装着するためにはノーマルのスイングアームでは干渉するおそれがあることから、アルミスイングアームを オーヴァーレーシングプロダクツ にてワンオフ製作。仏ベルリンガー社製の削り出しフロントブレーキマスターシリンダーに モトガジェット のメーター、SUNDANCE 製クァンタム リアショック、brembo 製ブレーキキャリパー、ワンオフ製作 削り出しトリプルツリーなど、一般のライダーでは到達できない強力な足まわりを手に入れている。
ビジュアル面での考慮も忘れない。米 STORZ 社製フューエルタンクにフレイムスを施してフォルムを一新。リアへと流れるアールを整えるべく、HOT-DOCK CUSTOM CYCLES のアルミ リアフェンダーを取り入れた。パーツブランドだけでもこの数である。それをひとつにまとめた手腕にはただただ脱帽するばかりだ。
もっともこだわったのがワンオフ製作したチタン製エキゾースト。音の大きさと音管を考慮して何度も作り直した一作で、重低音でヌケも良く、乗り手が心地よくなれるサウンドを奏でる。
Glory Hole のことをご存知の方には不要な説明かもしれないが、当ショップは「ハーレーだからこそ味わえる“乗って楽しい”を実現させたい」を前提にカスタムプランを練るというスタンスを採っている。“魅せる”こともハーレーのカスタムにおいて重要ではあるが、モーターサイクルであるという大前提から手を加える Glory Hole であるから、オーナーのショップチョイスにも納得できる。そこから生み出されたこのスポーツスター、その乗り味はハーレーの域をはるかに超えていた。ひとことで言えばハイパフォーマンス。佐川氏は「基本的にストリート仕様だが、サーキットでも十分通用する」と自信を覗かせる。確かに実力あるライダーが乗りこなせば、サーキットでも国産バイクと十分タメが張れるだけのスペックを有していると言っていい。
佇んでいるだけでも強烈な個性を漂わせるスポーツスター、まさしく“この一台、危険につき”である。