2014年6月に「Project LIVEWIRE」のネーミングのもと開発が進行していることが明らかになったハーレーダビッドソンの電動ロードスポーツバイク。翌15年には北米、ヨーロッパ、アジア、3大陸8か国にまたがる試乗会を開催し、筆者もこれに参加。その時点で強力な駆動力を発揮し、舌を巻いたのを覚えているが、すぐには発売にいたらなかった。その後、2018年のミルウォーキーでの115周年創業祝賀イベントで展示され、走行シーンも目の当たりにするなど動向を注視してきたが、ついに今夏アメリカにて発売。念願の市販版「LIVEWIRE(ライブワイヤー)」をライディングすることができた。
市販化にあたって改良点は多岐にわたっている。フレームやバッテリーは大幅に重量を減らし、車体は20kg以上の軽量化を果たし249kgに。ロードスターより1kg軽い。水冷式三層ブラシレスモーターは最高出力を31PSアップの105PS、51Nmだった最大トルクは倍以上となる116.6Nmとスペックだけを見ても4年の進化は大きい。停止状態から100km/hまでの加速は4秒以下と発表されていたが、これも3.0秒にまで縮めた。さらに100→129km/hは1.9秒、最高速は148→177km/hとスピードアップも目覚ましい。
100km以上と公表されていた航続可能距離も最大235kmにまで伸び、回生ブレーキの効果によってストップ&ゴーを繰り返す市街地走行の方がより長く走れる。電力を消費する一方の高速巡航では距離が短くなり、その認識はガソリンエンジン車とはまったく逆。WMTCモード値(シャーシダイナモ上を発進・加速・停止のパターンを取り入れて走り算出される使用実態に近い数値)では158kmとしている。
電子制御も充実し、ライダーはまず4.3インチカラーTFTタッチスクリーンを見ながらハンドスイッチでライドモードを選ぶ。予め設定されているのは「スポーツモード」「ロードモード」「レンジモード」「レインモード」で、それぞれでトラクションコントロールの介入レベルやスロットルレスポンス、回生ブレーキの効きが異なる。名を上げた順にエキサイティングな走りが楽しめ、ワインディングでは「スポーツモード」がジャストフィットした。
右手のグリップ操作と駆動輪がダイレクトに繋がっているかのようなクイックな加速ができ、コーナー立ち上がりからのストレートでしっかりスピードを上げられるし、カーブにさしかかったときの減速では回生ブレーキが強く効き、エンジンブレーキのかわりを果たしてくれるのだ。
トラクションコントロールの介入は低くなって、ゼロスタートでワイドオープンすれば簡単にリヤタイヤは空転するが、それもまたダイナミックでビッグパワーに慣れているライダーなら楽しめるはず。スマートなイメージのEVだが、ライブワイヤーのライドフィールは豪快でヤンチャでさえあり、さすがはハーレーダビッドソンと思わずにやけてしまう。
旋回力も高い。SHOWA製のフルアジャスタブルサスペンションにラジアルタイヤを履く前後17インチの足まわり、フロントブレーキはブレンボ製ラジアルマウントキャリパーと300mmディスクという豪華な組み合わせ。初期荷重からサスがしなやかに動き、ストロークの奥では余裕を持って踏ん張ってくれる。Vツインのような強力な接地感はないものの、トラクションコントロールの装備が安心感をもたらし、コーナリングABSまで備わっている。左右45度のリーンアングルは、右30.8度、左31.1度のロードスターを大きく凌ぐ。
車体は剛性感がしっかりあり、巨大なリチウムイオンバッテリーが軽量アルミフレームと強度メンバーとしての役割を果たしている。低重心なほどコントロールしやすいが、高いところまでバッテリーがせり上がって重心が高いのは否めない。しかし、サイドスタンドから引き起こすときに重さを感じるものの、走行中はハンドリングが軽快となってディメンションの設定に時間を費やしたことがわかる。アップハンドルによって入力が少なくとも、車体は素直に言うことを聞いてくれるのだ。
電動ならではの強力な加速力やレスポンスの鋭さがもちろん大きな魅力だが、運動性能の高いロードスポーツとしたシャシーも目を見張るものがある。今後、エレクトリックバイクを拡充する方針だと聞いたが、Vツインスポーツへの可能性もまだまだ無限大だと感じた。楽しみでしかない!!
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