VIRGIN HARLEY |  VRSCF V-Rod マッスル試乗インプレ

VRSCF V-Rod マッスルの画像
HARLEY-DAVIDSON VRSCF V-Rod Muscle(2010)

VRSCF V-Rod マッスル

何より目を引く“マッスル”の異名
スタイリングだけじゃない魅力に迫る

ハーレー初となる水冷DOHC1,250ccエンジンを搭載したVRSC(V-ROD)ファミリーが登場したのが2003年。以来さまざまな新化の過程を経て個性的なモデルを輩出してきたこのファミリーに、2009年新たな車種が加わった。それがこのVRSCF V-ROD マッスルだ。伝統的なロー&ロングのスタイリングを保ちつつ、これまでにないオリジナルデザインのパーツを各部に配したフォルムは、他モデルと一線を画す存在感を放っている。何より気になるのは“マッスル”という異名ではないだろうか。果たしてこの名はデザイン面だけを差したものなのか、はたまた違う側面を持っているのか。インプレッションを通じてそのマッシヴなボディを吟味してみた。

VRSCF V-Rod マッスルの特徴

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デザイン、性能ともに申し分なし
未来を切り開く革新的モデル

近未来をほうふつさせるVRSCファミリーの高いデザイン性は、これまで登場したいずれのモデルにも共通しているものだったが、このVRSCF V-ROD マッスルはそれらを土台にさらなる上乗せを行ったグレードアップ版と捉えていい。まずはメーター周り。LEDターンシグナルがミラーステーにビルトインされたパーツはマッスル独自のもので、視認性はバツグンに高い。これほどのグレードを誇るアイテムが標準装備という点に驚きを覚える。さらに配線が中を通るハンドルバーはVRSCファミリー中でもっとも低くマウントされており、エアクリーナーカバー(他モデルならフューエルタンク)を抱え込むようなライディングフォームを生み出すなど、その姿は同ファミリーの基本スタイルであるドラッグレーサーそのもの。フォークには高剛性倒立フロントフォークをチョイス、さらに新デザインのフロントホイール&フロントフェンダーが備えられるなど、フロント周りだけで他モデルと一線を画していることが伺える。

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そして注目のポイントはボディパネルからリアへと続くラインだ。オリジナルのエアクリーナーカバーにスピーディな印象を与えるサイドエアインテーク、そしてラジエーターサイドカバー、シートとすべてマッスルのためにデザインされたパーツがずらり取り付けられている。リアフェンダーも240mmワイドタイヤに合わせて幅広の造りになっているだけでなく、フェンダー一体型LEDコンビネーションライトが装備。さらにVRSCファミリー初の左右2本出しとなるデュアル・エキゾースト・マフラーなど、デザイン面だけでこれだけ特筆すべき点があるモデルも珍しい。現行モデルの多くに取り入れられているテールライトとウインカーが一体化したライトの導入なども含め、これらの内容からハーレーダビッドソンのマッスルに対する期待の大きさが伺えるというもの。こうして最先端の技術を多く取り入れたモデルなわけだから、“当然ながら”ABSも装備している。またシフトダウン時の後輪ロック防止とレバー操作時の負荷を軽減するスリッパークラッチを採用。エンジンブレーキをかけてもその暴力的なパワーを的確にコントロールできるわけだ。これに全体を引き立てるデザイン性を兼ね備えているV-RODマッスルは、遠くない未来を見据えて生み出された革新的モデルと言える。

VRSCF V-Rod マッスルの試乗インプレッション

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ドラッガーとして十分なパワーを有する
まるで格闘家のような魔性の一台

全長2,410mmにホイールベース1,700mmというスタイリングは、他のVRSCファミリー同様にドラッグレーサーとしての直進高速性能を最大限に引き出すことを目的としている。その迫力は、実際に目の当たりにしたマッスルからひしひしと伝わってきた。始動した水冷DOHC1,250ccエンジン“レヴォリューション”から生み出される鼓動は、スポーツスターやビッグツインのそれとはまったく異質の、小刻みにじわじわと体全体に伝わってくる地鳴りのよう。ボディパネルからシート、リアへと流れるフォルムは確かにマッシヴなスタイリングとなっているが、いざ跨ってみると思ったほどファットではない印象だ。愛称こそ“マッスル”だが、どちらかと言えば体脂肪率の低い引き締まったボディを持つ格闘家といった風。アクセルを回すと、湧き上がるような力が240mmワイドタイヤへ伝わって力強く車体を推し進め、VRSCモデル独特の走行を始める。この時点から、マッスルの走りへの期待は一層膨らんできていた。

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街へと繰り出したマッスルは、なるほど他のVRSCモデルと同じく“強烈な直進走行性能”を追求するドラッグレーサー・スタイルを踏襲しているだけあって、シティユースはかなり苦手な模様。試乗前に抱いていたイメージほど曲がらないわけではないが、右左折や急カーブでは速度調整とハンドリングをバランス良く行うためのスキルを求めてくる。フォワードコントロールというフットポジションに307kgという車両重量をも考慮せねばならないので、長時間の街乗りはライダーに少なくない負担を強いるだろう。だがひとたび高速道路に入ってしまえば、マッスルは水を得た魚のようにアスファルトを踏み締めながら疾走してゆく。スーパースポーツのような切れ味鋭いスピード感とは違った、重量感溢れるパワフルな走りはドラッグレーサーそのもの。さらに体の芯に伝わるエンジンの鼓動が乗り手をさらに高揚させる、ある種“魔性のマシン”と言い表したい。

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ドラッガーとしての十分なパフォーマンスを有しながらグラフィックにも秀でた唯一無二のモデル、VRSCF V-ROD マッスル。未だVRSCモデルに乗ったことのない人がその乗り味を体感すれば、新たな価値観を植えつけられることは間違いない。

VRSCF V-Rod マッスル の詳細写真

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VRSCのスタンダードモデルVRSCAWと見比べると、全体的にデザインが刷新されているV-ROD マッスル。
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こちらはVRSCファミリー共通とされるメーターまわり。
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VRSCモデル中、もっとも低くマウントされたハンドルバー。配線はすべて中に通されている。
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斜めにスラッシュカットされたようなヘッドライト。
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一般的なガソリンタンクではなく、エアクリーナーボックスが収納されている。
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マッスル オリジナルのデザインシート。横幅が広いのが少々気になった。
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シートを開けると、下にはガソリンタンクが。
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フェンダーと一体になったLEDコンビネーションライト。
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ダブルディスクブレーキ搭載のフロントタイヤ。高剛性倒立フロントフォークも特徴のひとつ。
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レヴォリューションエンジンを定期的に冷却するラジエーター。サイドカバーも美しくデザインされている。
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フォワードコントロールとなるステップ位置。ドラッグレーサーらしいポジションだ。
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そしてVRSCファミリー最大の特徴である、水冷1,250ccレヴォリューションV-TWINエンジン。
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サテンクローム仕上げとされるデュアル・エキゾースト。マフラー。
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VRSCファミリー共通にしてオリジナルのリアショック。
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240mmのワイドリアタイヤ。迫力あるリア周りを演出する。

こんな方にオススメ

時代を切り開く使命を帯びたモデルには
命知らずの猛者がふさわしい

攻撃的かつ暴力的な高速走行性能は、細々とストップ&ゴーを繰り返す日本の道路事情にはまったくマッチしていない。まどろっこしいことを嫌う豪胆なアメリカ人らしい発想から生まれたマッスルには、前述したとおりカンパニーが描く未来の姿がそのまま反映されている。100年以上の歴史を紡ぐハーレーダビッドソンというメーカーは、当然のことながらこれからもその歴史を伸ばしていくわけで、マッスルは時代を切り開いていく存在たりえるわけだ。いつの時代もパイオニアと呼ばれる存在は、幾度も壁にぶつかってその身を削りながら突き進み、新しい価値観を生み出してきた。そう、マッスルのオーナーになるということは、ハーレーダビッドソンというカンパニーと共に時代の最先端に立つ運命を担っているのだ。マッスルのフォルムを見れば一目瞭然で、後ろを振り返ることなくただひらすら前進する命知らずの猛者を求めるモデルと言える。「オーナーには、パイオニアとしての覚悟が問われる」と言っても過言ではない。

プロフェッショナル・コメント

ホビーとして楽しめる稀有なモデル
体感すればその楽しさが分かります!

マッスルを語る前に、まずVRSCファミリーの存在意義についてお話しさせていただきましょう。ご覧のとおりドラッグレーサー・スタイルであることと、水冷Vツインエンジン“レヴォリューション”を搭載していることが全モデルに共通する魅力なわけですが、H-Dシティ中野店にいらっしゃるVRSCモデルのオーナーの方々が魅せられたのはこれらではなく、“ハーレーなのにハーレーらしくない稀有なバイク”という位置づけが最大のポイントのようです。「普通のハーレー乗りとは違う」という希少性が優越感を生み、それゆえ VRSCファミリーのオーナー同士は非常に結束力があり、仲間同士でV-RODを語り合うなど独自の楽しみ方を有していらっしゃいます。またどちらかと言えば、“バイク”というよりは“ホビー”として捉えられている方が多いように見受けます。 その中で今回のVRSCF V-ROD マッスルについてですが、僕が注目したいのは高剛性倒立フォークとマッスル専用にデザインされたシートです。僕自身、2007年式 VRSCAW V-RODのオーナーでドラッグレースに興じている身なのですが、カスタムとして倒立フォークを装着するとなると1本10万円以上するんです。それが標準装備されていてなおかつVRSCファミリー中でもっとも安価というのは驚きと言うほかありません。そしてオリジナルのシートですが、いわゆる戦闘機のコックピットをほうふつさせる独特の形状から、ここを決め手としてマッスルを購入される方がいらっしゃるほど。どうしても“ハーレーダビッドソン”というブランド名を聞くとヴィンテージ風のビッグツインを思い浮かべる方が多いとは思いますが、あえてこのVRSCファミリーの面白さを体感してみるというのをオススメしたいですね。(ハーレーダビッドソンシティ中野店 芦田 剛史氏)

バージンハーレー読者のカスタムハーレー

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2009年式 VRSCF V-ROD マッスル / 島田 英治さん(神奈川県)

決め手は真っ黒なキャストホイール
よりダークにまとめていっています

以前はショベルのFXスーパーグライドに乗っていて、100周年記念モデルのVRSCAW V-RODからマッスルに乗り換えました。ほとんど衝動買いだったんですが、決め手になったのはデザイン面ですね。カスタムはほとんどしていませんが、購入時にディーラーの方から「カスタムペイントをやってみませんか」と勧められ、ちょうどデザインヘルメットメーカーのアルファレイズデザインに勤めて1年半が経ったところだったので、自分の腕を試す意味で挑戦したんです。ハーレーらしさを出すためベースカラーをオレンジとし、そこにスピンドルを演出したカッティングシートを入れたデザインに仕上げています。カスタムしたのはハンドルレバーとグリップ程度なんですが、見た目のインパクトからハーレーダビッドソン ジャパン主催のカスタムコンテスト2009で入賞することができました。今後カスタムしたいポイント? マフラーを換えようかと思っているんですが、まだコレといったマフラーを見つけられていません(笑)。

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【1】スピンドル風カッティングシートで高いデザイン性を追及したオリジナルデザイン【2】H-D純正のダイヤモンドブラック・ハンドグリップとハンドコントロールバーキット・ブラックを装着【3】エンジン本体にもアクセントとしてオレンジを配している 【4】カスタムコンテスト入賞を記念して、オーナーが勤めるアルファレイズデザインが同じデザインヘルメット「JCP-37 Custom Painting Spindle」を販売

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