昨年のブルースカイヘブン2014で日本導入が発表された話題の水冷ハーレーダビッドソン、ストリート750の発売日が2015年2月27日に決定した。それを受けて、去る2月2~4日の日程で横浜のJACK-CAFEにてメディアローンチが開催され、そのローンチでは国内初となる試乗会が行われた。果たしてその乗り味とは!? 気になる価格はビビッドブラックが税込85万円、ブラックデニムとファイヤーレッドが税込87万2千円と発表された。
昨年から話題になっていたハーレーダビッドソンのニューモデル、ストリート750がついに日本でもデビューを果たすことになった。ニューモデルとひとことで言っても、毎年発表されるリニューアルモデルではない。水冷750ccのSOHC4バルブ・挟角60度Vツインユニットを搭載するストリートは、H-Dとしては2002年のV-ROD以来となる完全新設計モデルである。
このマシンの開発コンセプトは①アーバン・モビリティ ②オーセンティック・ハーレーダビッドソン ③ダークカスタム・ソウルの3つ。都市の移動手段というイメージ。真なるハーレーダビッドソンであること。現在人気の高いマシン全体をブラックアウトしたダークカスタムシリーズ。35才以下という若いライダーをターゲットとし、日本を含む世界各国3500人の声を集めたうえで開発されたのだという。
実際に車両を目の当たりにすると、そのフォルムはハーレーダビッドソンというより日本製のネイキッドバイクを思わせる仕上がりだ。ベーシックなスポーツバイク。エンジンもVツインではあるが、挟角は60度だし、フレームダウンチューブにセットされたラジエターを見るまでもなく冷却フィンの形状から水冷であることが分かる。跨ってみても然り。目に入るハンドルバーは1インチのハーレーに対して7/8と国産同様で(もちろんグリップも細い)、バー&シールドが文字盤に刻まれるシンプルなスピードメーターも小ぶりなもの。やや前よりのステップに足を置くと、ボリュームあるフューエルタンクはうまい具合に股に収まり、自然とニーグリップする姿勢となる。肉厚のシートはクッション性に優れ、ホールド感も極めて高そうだ。
イグニッションをひねると“ウィーン”とフューエルインジェクションの作動音。それが消えるのを待ち、セルボタンを押す。キュルキュルキュルッとセルモーターが軽々しく回り、トトンッといとも簡単にエンジンに火が入った。タッタッタッタッというアイドリングは確かにVツインエンジンのものだが、“ハーレーダビッドソンのVツイン”をイメージすると拍子抜けするほどマイルドだ。クラッチを握り(驚くほど軽い)、シフトペダルを踏み込んでロー(ガシャンッではなくカシャッ、だ)、クラッチをミートして走り出す。スロットルを開ける。オオッ! ハーレーに乗りなれた者にとって頼りないほど軽いすべての操作感覚からして、エンジンもマイルドだろうと勝手に想像していたが、ところがどっこい、その加速は意外なほど力強い。そして右手をひねるに従いぐいぐいと車速は増していく。シフトアップ、スロットルを大きめに開けると再び猛然と加速。コイツは侮れないな……。
試乗した横浜の街並みは、まさしくこのバイクのコンセプトである“アーバンモビリティ”にうってつけの舞台。フロント17/リア15インチというハーレー初のタイヤセットアップが生み出すハンドリングは軽快そのもので、230kgという軽量な車体と相まってタイトな曲がり角でも大きなコーナーでも意のままに操ることができる。街中をしばらく流し、首都高速へ。料金所を過ぎて上り坂のランプで全開をくれてみた。グオオッという排気音とともにすさまじい加速。2速、3速、4速とシフトアップを素早く繰り返し、あっという間に制限時速を大きくオーバーしたまま本線に合流。スロットルをパーシャルに戻すと荒々しさはふっと消え、振動もないジェントルなクルージングへ。こりゃ楽しいゾ!
1時間ほどじっくり走らせたのだが、ストリート750、とにかく楽しいのだ。アイドリング+αからでもスロットルにリニアに反応して、フラットなトルクが跨るライダーをぐいぐい押し出していく。取り回しはいたって軽く、ハンドリングはクセらしい癖もまったくなく、気兼ねなくマシンを振り回せる。
試乗に向かう道すがら、正直俺はこのストリート750にさして期待していなかった。しかしそれはまったくもって、喜ばしい方向に裏切られたといっていい。ドコドコしたエンジンフィールやドドドンッというエキゾーストノートと言った、いわゆる“ハーレーらしさ”を期待してストリートを走らせるのは間違いだ。しかし一台の“モーターサイクル”として評価するなら、ハーレーダビッドソンカンパニーが世に生み出したこの一台は、圧倒的に良く出来ている。たとえばあちこち剥き出しになったハーネス(配線)やら、(横からは実にシャープなのに)上から見るとのっぺりとデカいフューエルタンクのデザイン、鉄板をプレスしたフットコントロールなどなど、細かい部分に不満はあるが、そういったことを帳消しにしてしまう“ライディング・プレジャー”がこのバイクには溢れている。
V-RODに次いで“レボリューション”と命名されたエンジンを搭載するこのニューカマーにとってのライバルは、同じH-Dのスポーツスターではない。メイドインジャパンの“ナナハン”はもちろん、オーバーリッターのネイキッドスポーツも十分ライバルたりえるパワーフィールを備えている。
町を流すのは文句ないし、ワインディングに持ち込んでもかなり攻めた走りを堪能できる。荷物を括り付けて長い旅に出るのもいいだろう。若者をターゲットにしているとはいえ、モーターサイクルとしての完成度はたとえば俺のようなうるさ型のベテランライダーをも最高の気分にさせる魅力に満ちているし、取り回しの軽さは女性やビギナーにも扱いやすいはずだ。
オートバイという乗り物が与えてくれる様々な楽しみの中で、“クルージング”性能のみに特化したのがハーレーダビッドソンだが、つづら折れのワインディングを右に左に深くリーンしながら駆け抜けたり、意のままにバイクを振り回す歓びを味わえるストリート750は、走る楽しみを広い範囲で与えてくれるオールラウンダーに仕上がってる。
雑誌バージンハーレーおよびホットバイクジャパン編集長。1987年にスポーツスターを購入してハーレーダビッドソンとの付き合いをスタート。現在の愛車は1948年式パンヘッドのチョッパーだが、スポーツスターのレーサーも2台所有し、かつて世界各国で開催されていたワンメイクレースでは日本代表としてデイトナバイクウイークのワールドチャンピオンシップに参戦した走り屋。また日本はもとより世界20ヶ国以上をバイクやレンタカーやバックパックで放浪した旅人でもある。