VIRGIN HARLEY |  宇野 修輔(OFFTIME)インタビュー

宇野 修輔(OFFTIME)

  • 掲載日/ 2004年08月22日【インタビュー】

ハーレーインタビューの画像

工夫すればできるかもしれない
なら、考え抜きたいんです

これが今回インタビューをさせていただいた「オフタイム」オーナー宇野さんの哲学だ。ハーレーに加え、自動車の4WDのカスタムも手がける彼は、バイクの世界だけを見てきたわけではない。だからこその哲学があり、彼の「カスタムショップ」に対する視点は面白くなる。宇野流「カスタムショップ」スタイル、その面白さを堪能して欲しい。

Interview

「カスタムショップ」ってのはね
世の中になくてもいい商売なんだよ

ー先日の「長瀞ミーティング」では先導をありがとうございました。しかし「オフタイム」さんはいつ来ても入りやすいお店ですね。お客さんとして初めて来たときも、すんなり入れましたから。外観とかは普通のショップさんと変わらないんですけれど。

宇野●そう思ってもらえるのは嬉しいですね。バイクのカスタムショップって、初めての人には入りづらいショップがまだまだ多いように思います。僕はそこを何とかしたいなぁ、と思っていましたから、なおさらです。ハーレーに限らず、何かの専門店に行こうとしてそこに常連さんがいると入りにくい、っていうことありません? 僕もよくあるんですが「自分はこのお店では新参者だから」っていう変な気後れを持ってしまうから入りにくいのかな、って思うんです。そういうお店があっても「こだわりのお店」なら「まぁ仕方がないかな」と皆さんは思うかもしれませんが、僕はそれって変だと思うんです。

お店の人がちゃんと、初めての人と常連さんを繋いであげれば、皆が気持ちよく過ごせるじゃないですか。そういう雰囲気作りはお店の人の勤めなんじゃないかな、と思うんです。きちんとつないであげれば常連さんも初めて来た人も気持ちよく会話できるんですよ。自分のショップはそんなお店にしたいな、と思うんですよ。

ー確かにそうですね。私もハーレーを買ってからしばらくはカスタムショップさんには行きづらかったです。私はそれが当たり前だと思っていましたが、ショップさんがそこまで考えてくれるのだとしたら、うれしいですね。

宇野●僕ら「カスタムショップ」っていうのは「世の中に無くても大丈夫」な商売なんですよ。バイクってノーマルでも充分性能はいいですし、楽しく乗れてしまうわけです。別に「カスタム」なんてしなくてもいいんですよ。でも自分のお小遣いの中から、わざわざお金を出して「カスタム」しようとしてくれる人がいる。その人の期待や不安はすごいものだと思うんです。技術面で応えるのは当たり前。来てくれるお客さんは技術にお金を払っているんだから。でも、だからって技術以外は放ったらかし…というのはダメだと思うんです。お話をして、まずは「お店に来てよかったな」と思って欲しいわけです。

それから少しずつ「カスタム」のお話をしていけばいいんじゃないかな。部品を少し交換するような「カスタム」から始めて、いろいろ自分の好みの方向性を一緒に探していくのは楽しいですよ。そういう時のお客さんの顔って、人を幸せにするんですよ。もちろん、僕も豊かな気持ちになれるんですよね。

ー自分は最近「カスタム慣れ」してしまっていて忘れていましたが、昔乗っていたバイクの最初のカスタムはミラーとウインカーを変えただけでした。でも、それだけでも自分のバイクが相当カッコよくなった気がして嬉しかったですね。そういう小さな「カスタム」から今の私の「カスタム病」が始まったんでした(笑)。

宇野●そういうお客さんが大多数なんですよ。「カスタムバイク」っていうと「ショーバイク」を想像される方もいらっしゃるでしょう。けれど、ほとんどの方は「今月はお小遣いに1万円余裕があるから、これで何か変えよう」だとかで、楽しみながらコツコツ変えてらっしゃるんですよ。「フルカスタム」もいいですが「プチカスタム」もいいですよ。「自分のバイクをちょっと変えてみたい」。その気持ちがあれば、それは立派な「カスタム」ですから。

特に私のお店に来られるお客さんには、ハーレーの純正のスタイルが好きで買っている方が多いんです。「スポーツスターの形が好き」、「ソフテイルの形が好き」でハーレーを購入し、その形を崩さないで少しずつカスタムしたい、という人が多いですね。私は、そういうオーナーさんの好みを大事にしてカスタムのお手伝いをしています。

付かないパーツを付けられるようにする
それって最高に“自由”でしょ!

ーオフタイムさんは「ワンオフ」でのパーツ製作もやられていますが、オフタイムさんの「ワンオフ」は一般的なショップさんが作る「ワンオフ」とは少し違いますよね。痒いところに手が届く、そんなパーツが多い気がしますが。

宇野●手の込んだ「ワンオフ」も手がけることはありますよ。ただお客さんの要望でカスタムをする時に「あったらいいな」と思うモノは、自分で作ってしまうんですよ。既製品を注文してつけるより自分で作った方が早いですから。造りたいものが、自分の得意分野でないときには、板金や塗装のプロが仲間にいるので力をあわせてやります。一人でなにもかもやるより、そればかりやるプロがそれぞれの得意分野で腕を振るったほうがいいものができますからね。

たまにお客さんが「このパーツは自分のハーレーにつきますか?」と、そのままでは着けられないパーツを持って来られることがあるんですよ。そういう時に「着きません」って答えるのは面白くないじゃないですか。「どうすれば着けられるだろ」って考えるのが「おいしい」ところ。ウチの工具や設備は他のショップさんと大して変わりませんが、完成品をイメージして自分の能力と設備、仲間の力をどう使えば完成品ができるのだろうって考えていく。そうすると、意外にいいアイディアが出て来るものなんですよ。

ー宇野さんのカスタムは「組み立てる」というよりは「造る」。いや、「企画製作」とでも言うべきなんでしょうか?

宇野●企画とまでは言われると褒めすぎだけど、「造ること」は大好きですね。組み立てるのも楽しいんだけど、やっぱり自分のアイディアを自分やプロの仲間たちと形にするのは面白い。しかもそれでお客さんに喜んでもらえるなんて。それは最高の瞬間だし、こういうお店をやってて本当に良かったと思えますね。

ー仕事自体を本当に楽しんでらっしゃるんだなぁって、すごく伝わってきます。

宇野●そうですね、楽しいですよ。楽しいから、自分が手がけたハーレーには、すべて愛着があります。そのハーレーにお客さんが乗ってお店に遊びに来てくれるのもいいし、そのお客さんと一緒にどこかに遊びに行ければもっと嬉しい。お客さんが気持ちよさそうに乗っているのを見たり、自分が造ったものが調子よく動いているのを眺めたりするのは気持ちいいですよ、ほんと。これからもお客さんが無理せず気軽に乗れるハーレーを造って、それでお客さんと一緒に遊びに行けたらいいな、と思います。いやぁ、こんな話をしていると造り出したくなっちゃいましたよ。

プロフィール
宇野 修輔
43歳。埼玉県所沢市にてカスタムショップ「オフタイム」を営む。ノーマルのスタイルを活かせるカスタムを主としている。ただ、付けていくだけのカスタムではない、工夫・考えるカスタムを信条としている。お客さんと一緒に走りに行くことがなによりの愉しみだという。

Interviewer Column

今回のインタビュー中に「ハーレーは寄り道をするのが苦にならないバイクですね」と、いう言葉をお聞きした。「昔はレース系のバイクに乗っていて路面やコーナーばかり見ていましたから」、「いい景色があったらUターンしてでも寄り道をする、そんな楽しみ方をするようになったのはハーレーに乗り出してからですよ」その言葉が非常に印象に残っている。「ハーレー」というバイクの良さはなかなか言葉にしづらいのだが、宇野さんのこの言葉で少し頭の中がスッキリした気がする。(ターミー)

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