VIRGIN HARLEY |  アレン(クリーブランドモーターサイクル)インタビュー

アレン(クリーブランドモーターサイクル)

  • 掲載日/ 2005年07月28日【インタビュー】

ハーレーインタビューの画像

現代技術でクラシックバイクを造る
「Cleveland MOTORCYCLES」のコンセプト

今回ご紹介するのは「Cleveland MOTORCYCLES(以下、クリーブランド)」プロデューサー アレンさんだ。ハーレー純正の1340ccエボリューションエンジンを採用したクラシカルなオートバイを造り上げ、そのプロデュースで世界を飛び回っている。現在はクリーブランドのプロデュースで日本に滞在しているとの話を聞きつけ、インタビューをお願いした。アレンさんの目には日本のハーレーシーンはどう映っているのか、アレンさんとってハーレーというオートバイはどういう存在なのか、そしてクリーブランドというオートバイはどういうモノなのか、アレンさんの視点から見える景色を語っていただいた。

Interview

バイク王国でハーレーが認められる
「伝統や変わらない良さ」があるからでしょう

ー私はアメリカに行ったことがなくて、アメリカのハーレーシーンは雑誌でしか読んだことはありません。アメリカではどういう方がハーレーに乗っているのでしょうか?

アレン●日本とそれほど変わりませんよ。日本ではイージーライダースのイメージが強烈で「ハーレー=アウトロー」と考えている人が未だに多いようですが、平日はスーツを着て週末にハーレーを楽しむ、そんな人がほとんどですよ(笑)。

ーやはりそうなんですね。どうしても「アメリカのハーレー乗り」と聞くと「アウトロー」をイメージしてしまいます(笑)。ショベルヘッドなどのビンテージハーレー(以下、ビンテージ)に乗っている人が多い、というイメージもありますが、それも間違いでしょうか。

アレン●エボリューションやツインカムの車両に乗っている人がほとんどですね。ビンテージに乗っている人は古くから乗り続けている人か、マニアな人たちです。ショベルヘッド以前の車両はどうしてもトラブルが出てきますから。「エボリューション以降からハーレーの信頼性は上がった」というのはよく知られていますから、エボリューション以降の車両が多いのは仕方がないでしょうね。日本に来て、ショベルヘッドやパンヘッドがこれほど街を走っているのは驚きですよ。ひょっとすると、日本のハーレー乗りの方がビンテージに対しての思い入れは強いのではないでしょうか。

ー日本にはビンテージが多すぎると思いますか?

アレン●街で見かけることは多いですね。眺めるために持っているのではなく、何十年も前のビンテージで毎日街を走っている。「スゴイな」と思います。ビンテージが多いだけでなく、高年式のハーレーや他のメーカーのオートバイも多い「やはり日本はオートバイ王国だな」と思いますね。アメリカでは街でこれほどオートバイを見かけることはありませんから。だから東京の街を見ていると面白いですよ。信号待ちで最新型のレーサーレプリカとビンテージハーレーが並んでいる、そんな景色を当たり前に見ることができますから。

ー言われてみれば、最新のオートバイと何十年も前のオートバイが並んでいるのは変わった景色なのかもしれませんね。

アレン●「オートバイ王国」の日本でハーレーを愛する人がこれほど多いのも驚きです。私は日本製のレーサーレプリカに長く乗っていましたから、日本製のオートバイの性能の高さはよく知っています。そんなオートバイを造り出す国でもハーレーは認められている、しかも世界で2番目にハーレーが売れているわけですから。日本のオートバイ乗りは「最新の技術で造られた性能」だけではなく「伝統や変わらない良さ」も認めているんですね。

ー日本でなぜハーレーが認められているのか…。ハーレー独特の鼓動などもあるでしょうけれど、自分の好みにいくらでもカスタムできる。それもあるでしょうね。

アレン●その点はアメリカも日本も同じですね。ハーレーをレーシングバイクのようにする人、チョッパーにする人、ビンテージっぽくカスタムする人、どんなスタイルでもOKですから。今、アメリカでも日本でもワイドタイヤを履かせるのが流行っていますが、他のメーカーのオートバイで同じことをやりたいと思ってもできないでしょうね。やりたい、と思うことが実現できる膨大なパーツがあること、それを形にできる技術を持ったショップがあること、それがハーレーのスゴイところなのでしょう。

メーカーではあるけれど
量産車は造らない

ーアレンさんは今、「Cleveland MOTORCYCLES」のプロデューサーをされていますが、クリーブランドとはどのようなブランドなのでしょうか。

アレン●1902年にアメリカで誕生したモーターサイクルカンパニーです。ハーレーやインディアンと同じ時期に誕生し、1000ccのモデルを生産していた時期もありました。車両の生産を行っていなかった時期はあったのですが、今再びオートバイを造りだそうとしています。かつてのオートバイのクラッシックな良さ、伝統を現代の技術で復刻しようとしているモーターサイクルカンパニー。それがクリーブランドです。

ーなぜクリーブランドの心臓部にはS&Sやレブテックなどの社外エンジンではなく、ハーレー純正のエボリューションエンジンを採用したのですか?

アレン●S&Sやレブテックはハイパフォーマンスなエンジンです。しかし、伝統がありません。クリーブランドが再びオートバイ造りはじめて、まだ日は浅いです。ただ、1902年から続く「Cleveland MOTORCYCLES」の名前を冠する以上、歴史を重ねてきたハーレーのエンジンを採用することしか考えていませんでした。かつてのクリーブランドのオリジナルエンジンを復刻することもできましたが、それではただのノスタルジックなビンテージにしか過ぎません。あくまで現代の技術でクラッシックなオートバイを造りだす、それこそが価値あることだと考えています。ですから現代に通用するクリーブランドのオリジナルエンジンがない今は、我々の思想に合致するハーレーのエンジンをクリーブランドに装備しているのです。

ー「現代の技術で造られたハーレーのエンジン」であればエボリューションではなくツインカムなのでは?

アレン●ハーレーの歴代のエンジンの中で、信頼性とエンジンの個性のバランスがもっとも取れているのはエボリューションだと考えるからです。ツインカムは大変素晴らしいエンジンです。エボリューションより信頼性が高く、大排気量で高速巡航は快適です。しかし「エボリューションの方が『オートバイらしさ』では上なのでは?」と我々は考えています。ツインカムが現行の今でも、アメリカでも日本でもエボリューションの根強いファンは多いですよね。ツインカムほど高性能でなくてもいい、エボリューションの信頼性でも充分なんだと思います。一日1000キロの道のりも安心して走り抜くことができます。「いかにも」という独特の風格も持っています。しかも、乗った感覚も素晴らしい。

ー新車で買えるエボリューションエンジン。しかもカスタムやメンテナンスは近くのハーレーショップでもお願いできる…。魅力的ですね。

アレン●確かにハーレーのエボリューションの新車はもう手に入りません。エボリューションを買おうと思えば、発売から5年以上は経っている中古車を購入するしかありません。カスタムやメンテナンスでもハーレーの技術を持っているショップであれば、見てもらえます。まだまだ現役のエンジンなので、エボリューションの技術を持っているお店はアメリカでも日本でも多いですからね。そこは確かに魅力ですが、それだけがクリーブランドの魅力ではありませんから。

ーというと?

アレン●クリーブランドは、エボリューションエンジンを使っている単なるコンプリートバイク、キットバイクではない、ということです。ほとんどオーダーメイドと言ってもいいくらい、オーナーの希望に沿った一台を造り上げます。ラインナップは「タランチュラ」と「ブラックウィドウ」の2モデルしかありませんが、それはあくまでベースモデルに過ぎません。オーナーとじっくり話し合い、世界に一台のクリーブランドを造り上げています。「メーカーではあるけれど、量産車を造っているわけではない」それが我々の誇りです。

ーオリジナルにこだわるのであれば、クリーブランドオリジナルのエンジン開発も視野に入ってくるのでは。

アレン●オリジナルエンジンの開発はすでにスタートしています。すでにフレームはレーザー技術を使用して製作されたオリジナルですし。この先、我々がこだわっていく部分にはオリジナルが採用されていくでしょう。オリジナルエンジンを採用するモデルも近々発表できるかもしれません。この先、どのようにクリーブランドの舵を取っていくのか、はまだ未定の部分も多いですが「Cleveland MOTORCYCLES」という歴史ある名前に見合う、質の高い車両をこれからも造り続けていきますよ。楽しみにしていてください。

プロフィール
アレン
35歳。アメリカのレーシングパーツメーカーに勤務し、パーツのデザインを学び。その後独立、バイク輸出入に携わる。そこで培った海外とのネットワークを見込まれ、現在は「Cleveland MOTORCYCLES」のプロデューサーを務め、世界中を飛び回っている。

Interviewer Column

英語が話せない私が英語しか話せないアレンさんにインタビュー。国際ジャーナリストになった気分でなかなか面白いインタビューだった。アメリカ人のアレンさんの物の見方、考え方は、日本人の私にとっては刺激的だった。言葉や文化の違いから、視点が違ってくるのか、それともハーレーが生まれ育った国の人だから視点が違うのか。どちらなのかはわからないが、この小さい島国からほとんど出たことがない私に多いに刺激を与えてくれる方だった。いつか海外を自分のハーレーで走ってみたい、私はそんな夢を持っているのだが、アレンさんと話をし、その想いがさらに強くなった。(ターミー)

ピックアップ情報