今回ご紹介するのは兵庫県尼崎市在住でスプリンガーソフテイルを愛するTribalさんだ。お会いしてみて驚いたのはTribalさんの趣味に対する真摯な姿勢だった。好きなことには本気になって情熱をささげる、簡単そうだがなかなかできることではない。情熱を注ぎ続けた結果、趣味ではじめたレザークラフトはもう趣味の域を越えてしまっている。「ハーレーに出会ったことで、自分の世界が広がりました」そう語るTribalさんの世界を、是非皆さんに垣間見て欲しい。
Tribal●もともとはアメリカンバイクは好きじゃなかったんですよ。バイクは、速く走ることしか考えていませんでした。でも、毎朝通る道で、いつもハーレーを見かけて。毎日眺めているうちに、「ハーレーもいいかも」と気になりはじめてたんです。それからですね、憧れを持ちはじめたのは。実際ハーレーを買うまではちょっと時間がかかってしまいましたけれど、やっと、やっと手に入れたハーレーが今の「スプリンガーソフテイル」です。
Tribal●それまではカバーをかけて路上駐車だったので、盗難が怖かったんです。しかも僕のハーレーは「スプリンガーソフテイル」なので、路上駐車だと「スプリンガーフォーク」が錆びるのも怖かったんですよ。だから、一軒家を建てるときには居間にガレージを造ることだけは譲れませんでした(笑)。おかげで屋内保管ができるようになりましたし、居間でくつろいでいるときにも自分のハーレーが目に入ってくる、それが一番嬉しいです。気持ちがいい景色ですよ。でも、家にいると自分のハーレーを見てしまうので、つい「あそこをカスタムしたい」って考えてしまいますけれど(笑)。
Tribal●雨に降られることもありませんし。明るい室内に置いているので、夜中でもハーレーを触ることもできますから。時間を忘れてつい徹夜で作業をしてしまうこともありますよ。
Tribal●いえ、単にお金がピンチなだけです…。「鬼の84回ローン」でハーレーを買って、自分の家まで建ててしまって。毎月のお小遣いはほとんどないんです。でも、カスタムはやりたい(笑)。そうなったら「自分の手を動かす」しかないですよね。できるだけ自分でやって、塗装やどうしようもない部分だけはプロにお任せする、そういう工夫をしないと、家族の目もあるので僕にはカスタムなんてできないんですよ。
Tribal●普段の仕事がデザイン関係、というのもあって「造る」、「デザインする」というのは身近なことなんです。だから抵抗なく「自分でやってみよう」 というように思えるのでしょうね。バイクをいじることも、ハーレーに乗る前から自分でやっていましたし、「自分の手を動かして作業をする」のが性に合っているんでしょう。
Tribal●自分で造り始めたのは、ハーレーに乗り始めてからですね。昔から革製品やインディアンジュエリーが好きで、行き着けのお店に遊びに行っては気に入ったものを買って、集めていたんです。でも、ハーレーを買ってしばらくしてからね、ふと思ったんですよ。「自分で造りたいなぁ」。
「自分で革を選んで、切って、縫ってみたい」、と思ったんです。お店に並んでいる革製品には、自分が欲しいものに限りなく近いモノはあっても「100%自分の感性にあったモノ」はないんですよね、当然ですが。100%自分のイメージ通りのモノが欲しいのなら「自分でやる」しかないだろう、と思ったのがきっかけです。もちろん、そんなに簡単にイメージ通りのモノが造れるわけもなく、その考えは甘かったですけれど。
Tribal●思い知らされました(笑)。でも、知識もなく、いきなり自分でやりはじめたわけではないですよ。やるからには本格的に勉強してみたくて、僕の行き付けのお店で知り合った、TONYさんという方に教えてもらうことにしました。本当のプロが造る作品を見せてもらって「これはとんでもない世界に足を踏み入れちゃったな」と思いましたね。それまではお店で完成した作品だけを見ていましたが、できあがるまでの工程を見てしまうと「1つの作品にこんな手がかかっているのか」と驚きました。
Tribal●1枚の革からカバンや財布を造る、口で言うのは簡単ですが難しいですよ。何を造るのかによって、まず革の種類を選ぶことから始まります。それから「革の裁断、面取り、縫製・・・」と手間と時間をかけて完成するんですよ。さらに刺繍やカービングも施すとなると、1つの作品を造り上げるのに膨大な手間と時間がかかります。販売されているものが高いわけです。僕はまだ、基本も身についていませんから、1つの作品を造りあげるのには特に苦労してしますよ。
Tribal●オーダーを受けて造ることはありますね。今も友人に頼まれている注文が貯まっていて、友人とはいえ「お客様」ですから、早く造らないといけないんですが…なかなか進まなくて。
Tribal●そうですね。仕事後、しかも子供が寝てからしかできませんし、勉強しながら造っていますからね。それほど数は造ることができないんですよ。造れば造るほど、僕の寝る時間は減っていきますから(笑)。でも、お願いされると引き受けてしまう。最近は友人からサドルバックの注文も受けてしまって…かなり手がかかるので、これはちょっと大変なんですけれど(笑)。
Tribal●ハーレーに乗る時間はちゃんと確保していますよ。あくまでハーレーが僕の趣味の軸ですから。ハーレーに乗れなくなってしまうと、趣味でやっているレザークラフトもやる意味がなくなってしまいます。「自分がハーレーに乗るときに身に付けたいモノ」を造りたい、そう思って始めたわけですからね。最近は友人からの注文の作業ばかり、で自分のためのレザークラフトの時間がなくなっていますが、本来は自分がハーレーに乗るときのための作品も、少しずつですが手がけていますよ。
Tribal●ハーレーがなくなったら…やることが何もなくなってしまいますね。休みの日は家でゴロゴロと。「ダメなパパ」になってしまうでしょう(笑)。
Tribalさんは本当に話し好きな人だ。今まで20人近くの人にインタビューをしてきたが、インタビューが終わるまでに、いつもの2倍くらいの時間がかかってしまった。どんなテーマの話を振ったとしても延々と話すことができる(であろう)Tribalさん(笑)。そんなTribalさんに自分の好きなテーマの話を聞いてしまったから、もう大変だった。もし皆さんがTribalさんにお会いする機会があれば、長期戦になる覚悟を決めてTribalさんと戦って欲しい(笑)。(ターミー)