VIRGIN HARLEY |  トムセン陽子(ラジオDJ)インタビュー

トムセン陽子(ラジオDJ)

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「音楽とともに生きる」と決意した
情熱のDJが語るハーレーライフとは

「音楽には、今までいろんな場面で助けてもらいました。だから今度は私が音楽に恩返ししたいんです」――。屈託のない笑顔の中に、揺るぎない芯の強さと情熱を感じた。ラジオのDJという道を選び、生来の明るさを振りまきながら音楽の楽しさを伝え続けるトムセン陽子。音楽同様、愛するハーレーに対しても“カッコよさ”を求める彼女だが、それはただ単に見栄えだけで言っているわけではない。その生き様が表すとおり、内面の強さを伴うスタイリングを“カッコよさ”という言葉で表現している。そんな彼女にとってハーレーとはどんな存在なのか、その答えは意外なものだった。

Character

ドイツ菓子マイスターというドイツ人の父親と日本人の母親を持つ。高校卒業まで神戸で育ち、上智大学進学から東京で暮らす。チアリーディングに打ち込むなど充実した3年を送ったのち、一時休学してドイツへ留学する。復学後、「音楽に関わる道で生きていきたい」と、現在所属する事務所「FM BIRD」のラジオDJセミナーを受講。大学卒業後、プロのDJとしてスタートを切った。現在TOKYO FMおよびJFN Stations(全国22局ネット)にて「ONCE」のレギュラーを務めている。小学生の頃より合気道を習っており、また中学時に体験した阪神大震災の経験から防災士の資格を持つ。

トムセン陽子 / THOMSEN YOKO

Owner’s Harley – Davidson

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2003年式 FXSTSスプリンガー・ソフテイル
“スーパー・マッシヴ・ブラックホール”

彼女が愛車に名づけたニックネームで、トムセンが大好きな英アーティスト『MUSE』の曲名から命名。黒いボディや車体の大きさが、イメージに近かったことがその由来だ。「『女性なら、軽いからスポーツスターXL883だね』とか言われますが、そういう先入観で選ぶのはイヤだった」と、ショップに並ぶモデルの中から特に大きいこの1台をチョイス。一番の決め手は、全体的に黒くて形がカッコよかったこと。このときは「ソフテイル」とか「スプリンガー」といったものに対する知識もなく、ただ単に見た目の印象が強かったそう。中古車両で、シートやマフラーなど前オーナーによってカスタムされているところがあったが、ショップと相談してクロームパーツを多用し、さらにH-D純正LEDライトを取り付けるなど、煌びやかなオリジナリティを付け加えている。

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【左】Bel-Fast製のエイプバーをチョイス。「本当はもっと高くしたかったけど、最初なのでここで止めておきました(笑)」【右】ラペラのソロシートを装着している。前オーナーから受け継いだものだが、「カスタムパーツとは知らなかった(笑)」と……
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【左】「スカスカなのがイヤだった」と、スポークを増やして計80本にした。さらにH-D純正LEDライトを付けており、夜には足元をはじめ、車体下部が色鮮やかにきらめく?【右】RICH PRODUCTS社製のサンダーヘッダーマフラー。これも前オーナーが取り付けていたものだそう

Interview

さまざまな経験を生んだ大学生活を経て
音楽とともに生きることを決意

ーご出身は神戸なんですね。

トムセン ●ドイツ人である父親が母国でパティシエの仕事をしていて、神戸で仕事をするようになってから私が生まれたんです。神戸で暮らしていたのは高校までで、大学に進学してからはずっと東京暮らしです。

ーその割りに、関西弁が出てこないですね(笑)。

トムセン ●DJですから、そこは使い分けています(笑)。「ここは出しても大丈夫だな」というときには出しますよ。

ー大学ではチアリーディングに打ち込まれていたとか。

トムセン ●最初はチアリーディングなんて頭になくて、小学生のときから習っていた合気道をしようと決めていたんです。中学生のときに遭った阪神大震災によって道場が全壊し続けられなくなったので、その想いは強かったですね。

ーそれがどうしてチアリーダーに?

トムセン ●第一志望だった上智大学に合気道部があるのは知っていたので、入学してすぐに見学しに行きました。そうしたら、自分が思っていたのと雰囲気が違っていたんです。そこで「なんか違うなぁ」と思って入部をためらったんです。そんな折り、ちょうど新入生同士の友達と一緒に「ねぇねぇ、どの部活に入る?」って話をしていたときに、知り合って間もない友達から「陽ちゃんってさ、すごくチアっぽいよね」って言われたんです。彼女にとっての私の印象がそうだったんでしょう、それを聞いて「そうか、そういう選択肢もあるか」と思い、チアリーディングサークルを見学しに行きました。そうしたら活気がすごくて! その場で入部を決めたんです(笑)。

ー確かに、アメフトの試合で見るチアリーダーの応援合戦は迫力が違いますよね。

トムセン ●大学のアメフト部の応援にも行っていましたが、どちらかと言えば「チアリーディング」というスポーツをするサークルでした。「ジャパンカップ」というチアリーディングの大会があるんですが、体育系大学が上位を占める中で4位に食い込むなど、実力校のひとつに数えられるほどだったんですよ。

ーご自身のプロフィールにも「チアで培った元気には自信がある」と書いてらっしゃいますよね。

トムセン ●3年間、週5日は部活に通うなどチア漬けの日々を送っていました。だからあのサークルで教えられたことは本当に多いですね。チアはとにかく声がデカイんですよ。ほかのスポーツでも練習前の準備体操とかありますけど、チアはその準備体操の段階からすでに始まっているんです。最初に見学したときもすごい声量で、そして超笑顔! それが印象的でした。「常に笑顔、常に元気を与え続ける」ことがチアの素晴らしさです。

ー3年間チア漬けの日々を送った後、ドイツに留学されたそうですね。

トムセン ●父親の国のことをもっと知ろうと思ったんです。小さい頃は、自分の半分がドイツ人だと言うのがコンプレックスで、日本で生まれ、日本人として育ってきたので抵抗感がありました。でも大人になるにつれ、「日本のことしか知らないというのはよくないな」と思い、大学ではドイツ文学を学ぶことにしたんです。それで、チアを引退したのをキッカケに休学して渡独しました。

ー留学という形ですか。

トムセン ●交換留学です。トリアーという、ドイツとルクセンブルクの国境近くにある小さな町で、そこのトリアー大学に入りました。そこでは語学留学が主な目的だったんですが、実は大学に合気道部があって(笑)。

ーそこで入部したんですか。

トムセン ●もちろんです(笑)。日本の部活動というよりは、町に大きな体育館があってそこで活動するサークルのような感じでした。なので、ほかの競技をしに来る人たちとも交流が持てたりして楽しかったです。

ーラジオのDJに進もうと思われたのは、どこからだったのでしょう。

トムセン ●2年の留学期間を経て、帰国してからです。あと1年大学に通わなければいけなかったんですが、そのときに「DJを目指そう」と思いました。実は大学2年生のときに「自分の好きなことを仕事にしたいな」と思い、思うがままに書き出したんです。そこで書いたのが、「人と話すのが好き」、「語学の勉強が好き」、そして「音楽が好き」の3つが出てきて、「あれ?これって……DJ?」って思い、それからおぼろげながら「DJになりたい」と思うようになったんです。

ーそこが原点だったんですね。

トムセン ●すぐに実践はしなかったんですが、ドイツ留学していたときもテレビよりラジオの方を聴いてばかりいて、DJという職業をすごく意識するようになっていました。帰国してからいろいろと調べて、大学に通いながらアナウンスアカデミーや今の事務所が運営しているDJセミナーを受けたりしたんです。その後、事務所から声がかかり、こうして今プロのDJとして生きるようになりました。

ートムセンさんにとって、音楽を好きになった原点はどこなのでしょう。

トムセン ●中学生のときにテレビから流れてきたコマーシャルの曲ですね。そのときはおばあちゃんの家でうたた寝していたんですが、流れるように耳に入ってきた曲が素晴らしくて「なんていい曲!」と、幼いながらに衝撃を受けるほどでした。それから誰が歌っていたのか必死で調べましたよ。その後、同じCMを見て歌っている人たちが『CHAGE&ASKA』だと分かったんです。それからは私にとって、彼らはただのアーティストという域を超えた特別な存在であり続けています。これが、私と音楽を結びつけた原点だと言えると思います。

ー遡ると、そこにたどり着くわけですね。

トムセン ●そうですね、「音楽ってなんて気持ちがいいんだろう」と思うようになったのはあのときです。

女性だってビッグツインに乗る!
自信を与えてくれる大切な存在

ーハーレーについて聞かせていただきます。バイクに興味を持つようになったのは、いつからでしょう。

トムセン ●まだ神戸に住んでいたときのことで、隣りの家に住んでいたお兄ちゃんがハーレー乗りだったんですよ。いつ見てもガレージを開けてハーレーをいじっていて、それがあって「バイク=ハーレー」と思うようになりました。ただ、それですぐに乗りたい!と思うことはありませんでした。

ーハーレーを思い起こさせるキッカケがあったのですか。

トムセン ●そうです。DJとして仕事をするようになった中で、伊津野 亮さんというベテランDJさんと一緒にラジオ番組を持つレギュラーの仕事がありました。そんなある日、伊津野さんが「最近ハーレー買ったんだよ」と言ったんです。ここでまた「あ、またハーレーに出会った」と思いましたね。「いいですよね~、ハーレー」って何の気なしに返したら、彼が「陽子ちゃん、ハーレー似合いそうだよね」って言うんですよ。それで「確かに、バイクへの憧れはあるんですよ」と言うと、「だったら教習所を紹介してあげるよ」と。「え!今!?」って驚いたんですが、これも何かいいキッカケかもしれないと思い、その週末には伊津野さんに連れられて教習所に行き、トントン拍子で入校しちゃったんです(笑)。

ー急展開なうえにトントン拍子ですね(笑)。

トムセン ●こうして話していると、チアのときもそうですけど、なんだか私って人に言われてその道に進む傾向がありますね(笑)。

ーまずは中型二輪免許からですよね。最初からハーレーを目指していたんですか。

トムセン ●本気で「ハーレーに乗りたい!」って思うようになったのは、教習所に通い出すちょっと前のことです。伊津野さんが横浜の『クリスタルオート』というショップのお客さんで、その仲間内で集まっている横須賀のバーベキュー大会に参加させてもらうことになりました。で、友達と電車に乗って(笑)その場所へ行ってみると、遠くから20~30台のハーレーがすごい音を立てて現れたんです。そこでヤラれましたね、この瞬間「ハーレーに乗ろう」と思いました。

ーインパクトが強烈だったんですね(笑)。

トムセン ●強すぎましたね。そのまま中型→大型とステップアップしたんです。さらに免許を取る前にクリスタルオートを訪れて、そこでこの愛車FXSTSソフテイル・スプリンガー“マッシヴくん”に出会ったんです。

ーマッシヴくん?

トムセン ●この子の名前です、私が名づけました(笑)。女の子だと、取り回しやすさや軽さから「スポーツスターがいいよ」って薦められるんですが、“女性だから”っていう理由が気に入らなくて……。だから、「女の子なのに、こんな大きいハーレーに乗っているの?」と言わせたくて、マッシヴくんを選びました。

ーそれってトムセンさんにとって、言わせたいツボなんですか?

トムセン ●超ツボ!(笑) だから迷うことなく購入することにしました。まだ免許を取っていなかったんですけど、「これください」と(笑)。

ー免許取得前に車両購入……よくあるパターンですね(笑)。

トムセン ●本当は納車前に免許を取得できるはずだったんですが、最終試験に落ちてしまって……。結局免許が取れたのは納車当日で、試験に合格してから鮫洲へ免許交付に行き、そのままお店に行って納車を済ませ、乗って帰ってきました(笑)。

ー勢いがすごいですねぇ。

トムセン ● その3日後には、ショップ主催の山中湖ツーリングに参加していました。総勢100台の大ツーリング!

ー初ツーリング、どうでした?

トムセン ●もう、めっちゃくちゃ怖かったですよ!初の高速道路でしたし、よく生きて帰ってこれたなぁ、と。「早くハーレーに乗って遊びに行きたい!」って気が急いていたんですが、いくらなんでも納車から3日後は急すぎましたね。

ー普段はどんな感じで乗っているんですか。

トムセン ●マッシヴくんって、気軽には乗れないんですね。乗るときはいつも真剣勝負、「よし、今日は乗るぞ!」って気合いを入れて走りに行きます。でも、ひとりで遠出はしないんですよ(笑)。いつも誰かと走ったり、ひとりのときは近場をまわるぐらいですね。近場といっても、いたずらや盗難が怖いので街中には行かないです。ツーリングもそんなにしたことはないんで……。逆にお聞きしたいんですけど、東京近郊でオススメのツーリングスポットはありますか?

ー関東で、ですか? そうですね、例えば日光東照宮なんかは有名ですよね。あと個人的には、茨城県の銚子までぬれ煎餅を買いに行ったりとか(笑)。

トムセン ●ひとりで行くんですか?

ーええ、ひとりです。僕は基本的にひとりで走るのが好きなので……って、そんなに珍しいですか(笑)。

トムセン ●いやぁ、私がひとりで走ることがないので、参考になるなぁ、と(笑)。

ー僕の話はいいです(笑)。こうしてお話を聞いていると、芯の強さが伺えるのですが。

トムセン ●逆ですよ、弱いんです。だから強くなりたいと思っているんです。

ーそれは、ご自身が歩まれているDJという道を進む上で、ですか。

トムセン ●そうですね。音楽はいつも私のそばにあって、いろんな場面で助けてもらっているので、今度は私が音楽に恩返しをしたいんです。それは大好きなアーティストだけじゃなくて、世の中にある音楽に携わっているものすべてをひっくるめて、「こんなに素晴らしい音楽があるんだよ」ということを、『トムセン陽子』というDJを通して紹介していきたい――そんな使命感を抱いています。

ーではトムセンさんにとって、愛車マッシヴくんの存在はどんなものでしょう。

トムセン ● 私に自信を与えてくれる存在です。誰もが「いつかは達成したい」と思うものを持っているじゃないですか。「ハーレーに乗る」ということは、私にとって達成したい目標のひとつでした。だからマッシヴくんの存在は、達成できたひとつの証なんです。マッシヴくんと一緒にいると、「よし、これからも頑張ろう!」って思えるんです。

Interviewer Column

トムセンさんの第一印象は、冒頭にも書いたとおり“屈託のない明るさ”だった。どちらかと言えば、同性に好かれるタイプの女性…だと思う。インタビューの最中、彼女の笑顔が途絶えることはなく、さらにはこちらに問いかけてくるなど、旺盛な好奇心も伺わせてくれた。残念ながら日中はラジオを聴くことがないので分からないが、こんなに朗らかなDJが楽しそうに音楽を紹介する番組は、間違いなく聞き手を幸せな気持ちにしてくれることだろう。惜しむらくは、まだひとりでマッシヴくんと遠乗りをしていないことか。インタビューの最後に、バージンハーレーの読者撮影会への参加を要請しておいたので、読者の皆さんは要チェックの方向で。

文/VIRGIN HARLEY.com 編集部 田中宏亮
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