今回はハーレー乗りなら、バイク乗りなら知っておいて損はない、ブレーキに関するマメ知識をご紹介します。皆さんの愛車をもうちょっと深く知ることで、乗る楽しさ、愛車への愛着は湧いてくるもの。今からお話する「ブレーキ」と「エンジンブレーキ」の話は皆さん聞いたことがあるかもしれません。「なぜそうなの?」という理由も一緒にご説明いたしますのでお楽しみください。
「ハーレーはリアブレーキを多用する」ハーレー仲間から、ショップのスタッフからお聞きしたことがありませんか。では「なぜリアブレーキを多用するのか」。その理由についてはご存知でしょうか。ハーレーに限らず「車両重量が重く、重心が低い」バイクはリアブレーキを頻繁に使用します。前後どちらのブレーキを頻繁に使用するのか、には車両重量と重心が関係してくるのです。
レーサーレプリカなどに多く見られる重心が高いバイクの場合、ブレーキをかけたときフロント側に荷重が移動してきます。荷重がフロントタイヤに大きくかかるため、フロントブレーキの利きが良く、そのためフロント中心のブレーキ操作になるのです。自転車でブレーキをかけるときを想像してみてください。急なブレーキであるほど、フロント側に体が引っ張られ、リア側は少し浮きぎみになります。これが荷重移動です。リア側に荷重がかかっていない状態で、リアブレーキをかけても制動力は充分に発揮されません。そのため、重心の高いバイクはフロントブレーキを主に使用するのです。しかし、ハーレーの場合は重量が重く、重心が低いため、ブレーキをかけたときにフロント側への荷重移動はそれほど行われません。リア側にも充分荷重が残っているため、リアブレーキがよく利くのです。
フロントブレーキ、リアブレーキをどのくらいの割合でかけるのか、これは好みでさまざまです。リアブレーキは充分に利くのですが、ほとんどフロントだけを使い停止する人もいます。逆にリアブレーキがメインになっている人もいます。前後どちらのブレーキをどのくらいの割合で使うのか、あまり神経質になる必要はありませんので、自分に合ったブレーキ操作を見つけてください。
「ハーレーのようなロングストロークのエンジンにはエンジンブレーキはよくない」。
?この話はご存知でしょうか。「エンジンブレーキを絶対使わないで」というわけではなく、激しいエンジンブレーキは控えましょう、というお話です。そもそも、エンジンブレーキというのは「エンジンが働きたくない、と言っているのに無理やり働かせている状態」です。通常は「エンジン→タイヤ」という流れで伝わる駆動力が、「タイヤ→エンジン」という逆の流れで伝わり、無理やりエンジンが回されている状態、それがエンジンブレーキの原理です。エンジンに負担をかけている状態のため、ロングストローク、ショートストロークを問わず実はエンジンには優しい動きではないのです。
エンジン内部のピストンは混合気の爆発によって上から均等に力をかけられ、ピストンの首を振りながら上下にストロークしています。しかし、エンジンブレーキがかかっている状態では爆発で押さえつける力はかかっておらず、ピストンには均等な力がかけられていません。そのため、ピストンはスムーズには上下せず、シリンダー内部に傷をつけてしまうこともあります。
次にロングストロークエンジンの方がエンジンブレーキの負担が大きい理由について説明しましょう。ストロークとはシリンダー内部でのピストンの移動距離を指す言葉ですが、一般的にショートストロークエンジンに比べ、ロングストロークエンジンの方がピストンの移動距離は長くなっています。そのため、エンジンブレーキ時にはピストンの移動距離が長い分、シリンダー内部への負担が大きくなってしまうのです。 長い下り坂などでエンジンブレーキを使用することは当然あるでしょう。ただ、そういうときもこの話を思い出して、なるべく優しいエンジンブレーキを心がけてください。
ショートストローク、ロングストロークについて (H-D用語辞典より)
ボア寸法の方がストロークより大きいものを「ショートストローク」、ストロークがボアと同じものを「スクエア」、ストロークの方が大きいものを「ロングストローク」という。ボアはシリンダーの内径。ストロークは、ピストンが上下する移動距離。ちなみに、ツインカムの「ボア×ストローク」は「95.3mm×101.6mm」。
ブレーキ操作、エンジンブレーキどちらにも言えることですが、なるべく「急」がつく動きは控えましょう。急な動きはバイクの各部に負担がかかり、部品の消耗が激しくなったり、欠損の原因になったりします。急発進・急ブレーキは燃費が悪く、ブレーキパッドの減りも早く、オイルも汚れやすくなります。永く労わって愛車に乗るためには、丁寧な運転を心がけましょう。