現代のハーレーダビッドソンは、すべてのモデルがインジェクション仕様だ。以前のキャブレターはアナログ方式だったが、インジェクションはデジタル方式。その制御はコンピューターが担っているのである。
静岡県で沼津と静岡市の2店舗を運営するHSCは、どちらの店舗にも最新のダイノマシンを導入して、インジェクションチューニングを実施している。特に静岡店のシステムは、空調バランスが抜群で、今最も良い環境でチューニングが出来る店と言っても良いだろう。
依頼を受けて最初にやるのは、ユーザーに問診するということ。バイクの状態をしっかり把握するために、細かく書き込んでもらうという。
社長の佐々木さん(左)とチューニングオペレーターの高木メカニック。チューニングはパワーアップよりも、バランス取りが重要だと力説する。
「チューニングルームでマスクをしなくてはならない環境や、気温のコントロールができない環境では、実際の走行状態が作れていないということになりますから、そこは徹底的にこだわりましたね。沼津店も良い環境ですが、静岡店はさらに優秀です。だから本当に繊細なチューニングができますよ」
佐々木社長は最初にシステムの環境がいかに大切か力説する。実際、作業を行っている高木メカニックは、まったくマスクすることなく、安全でクリーンな環境で作業をおこなっているのだ。
走行時と同じように抵抗をかけられるリターダーを装備した、最新のダイノマシンを導入。チューニングルームは、社屋の一番奥にあり、防音設備と空調は完璧な環境である。オープンから3ヶ月ですでに20台以上のチューニング実績。最新のミルウォーキーエイトも入ってくるという。
「防音も完璧ですよ。ショールームのすぐ隣でチューニング作業をしていますが、普通に会話できます。環境を整備することはとても大切で、そこに結果が付いてくると思っています」
昨年12月の開店以来、休むことなくチューニングの依頼が来ているというが、その3割ほどが、他でチューニングを施した再セッティングであるという。そのまままずデータを獲ってみると、グラフはガタガタ。つまり、使用するデバイスは同じでも、ダイノマシンを持たないショップでのチューニングや、通販で手に入れたデバイスを使って、自分なりのチューニングを施してバランスをくずしてしまう事例が多いというのだ。
チューニングとは、単なるパワーアップの方法ではなく、調整作業である。楽器に例えれば、どれほど高価な楽器を手に入れて演奏しても、基本的なチューニングが狂っていれば本来の音は奏でられない。まったく同じことがインジェクションチューニングにも言えるのだ。
新しいエンジンは以前のようなトルクの落ち込みやバラつきは少なくなったものの、やはりチューニングを施すと、さらにパワフルでスムーズなエンジン特性になる。これは最新の103Bエンジンがベースで、ハイフローエアークリーナーとバンス&ハインズ製マフラーを装着した状態でチューニングを施したもの。
バンス&ハインズ製のハイフローエアークリーナーにエキパイ&マフラーを装着した排気量1,745ccのミルウォーキーエイト107にチューニングを施すと、パワー&トルクとも、ふた回りほど底上げされた印象のエンジン特性となった。トルクフルで高回転での伸びも増した印象だ。またミルウォーキーエイト107をベースにシリンダー&ピストン、そしてハイカムに交換して排気量1,966ccまでアップした試乗車が8月初旬に用意される予定なので、ぜひ試乗することをおすすめする。
「キャブレターでもインジェクションでも、求める答えは同じですよ。だから僕らはダイノマシンでキャブレターのチューニングもやりますね。エンジンの可能性を追求するのは、昔からHSCの得意分野ですから」
新旧どんなハーレーでも、調整が第一。それがHSCの求めるポイントなのだ。
HSCは、ハーレー以外にもインディアンやヴィクトリー、ロードホッパーなども扱うスペシャルショップ。メンテナンスレベルが高いことでも有名である。
チューニングが施された試乗車が各カテゴリー別で用意されているので、実際にライディングしてそのフィーリングの違いを体感することができる。