6回目のテーマはクラッチ周りのカスタム。見た目にほとんど影響がないパーツだが、ここに手を加えることで、クラッチが軽くなったり、レバーが握りやすくなったり、とスポーツスターの快適性が大いに向上する。手が大きく、握力の強い欧米人向けに開発されているせいか、スポーツスターはレバーが太く、クラッチは特に2003年以前のスポーツスターではかなり重いものだった。近年はそれが少しずつ改善されてきており、現行モデルでは以前のモデルに比べクラッチは軽くなっている。それでも手の小さい人や、握力に自信がない人にとっては、もう少し改善の余地があるだろう。そこで今回は、長距離ツーリングや渋滞に巻き込まれた際の快適さを追求する、クラッチ周りのカスタムについて、ご紹介しよう。
この部分のパーツでクラッチの重さが変わる
2003年以前のモデルのオーナーならご存知だと思うが、当時のスポーツスターはクラッチがかなり重かった。車両購入後にクラッチ周りのパーツ交換を行うことは当たり前のことだったほど。しかし、2004年モデル以降、スポーツスターのクラッチは徐々に軽くなってきているのだ。エンジンやフレームに大きな変化が加えられた2004年モデルで、883モデルのみクラッチダイヤフラムスプリング(以下、スプリング)が変更され、25%ほどクラッチが軽くなっている。883のクラッチのみが軽くなっていることから、この変更がクラッチレバー操作を軽くすることを目的としたスプリング変更ではなかった、と考えられる。従来883と1200で共通だったスプリングをそれぞれの排気量ごとに適正なプレッシャー圧に設定しなおした副産物であり、883、1200のクラッチレバー操作を軽くすることを目的としたパーツ変更が行われるのは2006年モデルになってからと考えた方がいい。
太くて遠い、純正のクラッチレバー
そして、2006年モデルで883、1200モデルともにスプリングが変更され、1200シリーズで12%、883シリーズで17%クラッチが軽くなった。2006年以降のスポーツスターであれば、03以前のモデルほどクラッチの重さに悩まされることはなくなったと言えるだろう。クラッチレバーについては1986年以降で3度の変更が行われている。レバー自体の形状にはそれほど大きな違いはなく、特別どの年式のものがいい、などはない。しかし、レバーホルダーが1995年までと、1996~2003年、2004年以降で変更されているため、クラッチレバー選びの際は年式にあったものに変更する必要がある。ただし、レバーホルダーを一緒に交換すれば年式違いのものを装着することは可能だ。
もっとも手軽にクラッチの操作感や重さなどを変更する方法としてはレバー交換が一般的だ。ノーマルのクラッチレバーは日本人の手のサイズにはやや太く、レバーがグリップから遠い仕様になっている。そのため、クラッチの重さが劇的に変わることはないが、ノーマルの太いレバーから細いモノに交換するだけで、握りやすさは大きく変わる。ゴツゴツとしたレバーが細身のものに変わるだけで見た目の変化も楽しめ、しかもクラッチ操作がしやすくなるのだ。そこで、ここでは見た目だけではない、操作性などの向上も実感できるレバーについてご紹介しよう。
細身のレバーで指がかけやすく、グリップに近いポジションのビレットレバー。クラッチレバーは6角レンチで4段階にポジション調整ができるため、乗り手の手の大きさに合わせてベストな位置に合わせることができる。
適合/1996~2003年モデル用、2004年モデル以降~用の2種類あり
価格/13,000円
現在のような細身のビレットレバーを最初に製作したのがミスミエンジニアリングだ。スポーツスターによるレース出場者が繊細な操作ができるように、と開発されただけあって、指のかけ具合から操作感まで秀逸な製品だ。
適合/1996~2003年モデル
価格/12,600円
?(クロームタイプは17,800円)
細身で握りやすい形状ながら、左右セットで1万円を切る価格で手に入るお得なレバー。カラーリングの種類も豊富で、ポリッシュ、トワイライトメッキ、ブラック、クロームの4種類がある。ガタの出ないベアリング付きモデルもあり。
適合/1996~2003年モデル用、2004年モデル以降の2種類あり
価格/7,825円~(左右セット、カラーやベアリングの有無で種類あり)
握力や手の大きさによって個人差があるが、「クラッチが重い」と感じる人は無理をせずにクラッチの改善を行う方がいい。ただし、ある程度距離を走った車両においては、クラッチをカスタムする前に確認して欲しいことがある。それはクラッチケーブルへの注油だ。クラッチレバーを引く力をクラッチへ伝える役目を果たすクラッチケーブルは、定期的な注油が必要なパーツだ。これを怠るとクラッチが渋くなるばかりか、内部に水が浸入して錆が進行し、ケーブルが切れてしまうことがある。注油をすればそのようなトラブルを未然に防ぎ、じわじわとクラッチが重くなることもない。クラッチケーブルのメンテナンス不足が原因でクラッチの重さを感じている人も多いため、まずはそこを確認しよう。ショップに依頼しても、それほど時間や費用がかかるものではないので、定期的な注油をオススメする。それでもクラッチが重いと感じる人には下記のパーツをオススメする。スポーツスターのクラッチカスタムで人気なのは「VPクラッチ」と「ライトクラッチ」の2種類だ。それぞれの特徴について、ご紹介しよう。
クラッチ盤を押さえつける役割を果たすリテーナー交換し、レバー操作の重さを改善するパーツ。クラッチの切れやニュートラルの入りやすさなどはノーマルとまったく変わりがなく、マニュアル通りの整備が可能なため、人気が高い。ただし、2004年以降のモデルにはプライマリーカバーへの加工が必要。
適合/1991~2006年モデルに適合
価格/31,290円
ノーマルのクラッチレリーズより、ベアリングが移動する溝が浅く、長いものに交換し、クラッチ軽量化を行うパーツ。単純な構造のため、価格が安いのが魅力的。ただし、ノーマルに比べるとややクラッチが切れにくくなることがあり、定期的な調整をオススメする。06以降のモデルにも対応したパーツ。
適合/1994年以降のモデルに適合
価格/9,450円
あまり知られていないが、2006年モデル以降から採用されたクラッチダイヤフラムスプリングは、それ以前の年式のモデルにレトロフィットする(それ以前のモデルにも適合すること)。そのため、左記に挙げる社外パーツでなくとも、純正パーツを使用してのクラッチカスタムも可能。
適合/ダイヤフラムスプリングは883用、1200用で品番が違うため注意
価格/最寄りのディーラーに要問合せ)
以上がクラッチ周りを快適にカスタムするための代表的なカスタムパーツだ。予算的なものを考えれば、まずはレバーを交換し、それでも重いようであれば社外パーツか純正のダイヤフラムスプリングを利用したカスタムを試してみるといいだろう。「クラッチが重いのがハーレー」と言われていた時期もあったが、渋滞の中を長時間走って手首が痛い思いをするよりは、快適なクラッチ周りを手に入れ、一日中だって走ることができる仕様にする方がスポーツスターはもっと楽しくなるはず。地味なカスタムパーツではあるが、スポーツスターの楽しさを引き出すためには、欠かせないのがクラッチ周りのパーツなのだ。