VIRGIN HARLEY |  ヘルメットの着用義務はいつから?二輪車研究室

ヘルメットの着用義務はいつから?

  • 掲載日/ 2008年09月10日【二輪車研究室】

ヘルメットの着用義務の画像

意外と知らない
ヘルメットのアレコレ

我々が当たり前のように被っているヘルメット。法律で着用が義務付けられ、違反の際には罰則も規定されている。ヘルメットを被らないバイク乗りはもちろんいないだろうが、自分のヘルメットがどんなモノなのか、知っている人はどのくらいいるのだろう。ヘルメットにはどのような規格があり、どのようなテストを経て認定されているのか。また、それぞれの規格の安全性などについて正確な情報を知っている人は少ないはず。そこで、今回はヘルメットに関する法律や業界ルール、安全規格まで調査を行ってみた。知っているようで意外に知らないヘルメットのアレコレについて、是非知っておいて欲しい。

1975年から始まった罰則アリの
ヘルメット着用義務化

では、まず国内のヘルメットに関する法律の歴史から。バイクでのヘルメット着用義務は1965年から始まっている。1965年に高速道路での“ヘルメット着用努力義務(罰則なし)”が規定され、1972年には最高速度規制が40kmを超える道路での“ヘルメット着用が義務化(罰則なし)”された。ここまではヘルメットを被らず走行しても罰則がなかったが、1975年から罰則ありの制度が導入され始める。下記が罰則ありのヘルメット着用義務化の流れだ。

日本国内での罰則ありのヘルメット着用義務化の流れ
  • 1975年:政令指定道路区間で、51cc以上のバイクのヘルメット着用が義務化
  • 1978年:すべての道路で51cc以上のバイクのヘルメット着用が義務化
  • 1986年:原付も含めたすべてのバイク、すべての道路でヘルメット着用が義務化

このように年々ヘルメット着用義務が拡大していったのは、1960~1970年代にかけてバイク人口が増えたこと、若年層のライダーによる事故増加などを受けてのこととされている。

ヘルメット着用義務の画像

日本国内のヘルメット事情は上記の通りだが、海外ではどうなっているのだろうか。例えば、アメリカでは州によって法律が違う。ヘルメットの着用が義務づけられている州や、18歳以下のみ着用が義務づけられている州など、州法によってさまざま。ただし、ヘルメット着用義務がない州でも目を守るサングラスが義務づけられていることが一般的だ。次にヨーロッパに目を向けると、以前はイタリアなど一部でヘルメット着用義務がない国も存在したが、EU加盟国は地域全体でルール統一が進んできた。一部の国のモペットなど小排気量車両を除き、今ではほぼすべてのバイクでヘルメット着用が義務付けられている。その他の欧米諸国でもヘルメット着用義務は同様。先進国ではヘルメット着用義務は当たり前となっているのだ。

ヘルメット着用義務の画像

それでは、アジアはどうだろうか。ほとんどの国でヘルメット着用が義務づけられているが、取締りの厳しさなどは国によってまちまちだ。日本と同様に厳しく義務付けられている国もあれば、観光地では取り締まりがほとんどなく、あったとしても罰金だけで済んでしまうような国もまだ多いのだ。興味深いのはインド。ヘルメット着用義務化が進みつつあるが、地域によって義務化の流れはまちまち。宗教上の理由でターバンを巻かなければいけないシーク教徒は着用義務がないなど、お国柄を反映したヘルメット規制となっている。このようにいくつかの特殊なケースはあるものの、罰則や取締りの有無は別として、基本的には世界のほとんどの国でヘルメットの着用は義務づけられており、日本の現状は何ら特別なものではない。事故から命を守る制度として、ヘルメット着用義務については誰もが納得がいくものだろう。

ヘルメットの安全性と
それを示す規格について

次にヘルメットの安全性とそれを示す規格についてお話しよう。バイク用ヘルメットとして道路交通法で規定されているのは以下の通り。

道路交通法施行規則 第九条の五より
  • 【1】左右、上下の視野が十分とれること。
  • 【2】風圧によりひさしが垂れて視野を妨げることのない構造であること。
  • 【3】著しく聴力を損ねない構造であること。
  • 【4】衝撃吸収性があり、かつ、帽体が耐貫通性を有すること。
  • 【5】衝撃により容易に脱げないように固定できるあごひもを有すること。
  • 【6】重量が二キログラム以下であること。
  • 【7】人体を傷つけるおそれがある構造でないこと。

あまり知られていないのだが、法律ではヘルメットに関してこれ以上のルールは策定されていないのだ。安全性を判断する規格としては、日本や海外の団体が規定した独自の規格が存在する。日本工業標準調査会の「JIS規格」や、世界的に認められている非営利機関、スネル財団によって規定されている「SNELL規格」などが日本のヘルメット安全規格として一般的だ。JISかSNELL規格のどちらかを取得していれば、バイク用ヘルメットとしての安全性は確保されていると思っていい(ただし、JIS規格の場合125cc以下用と126cc以上用の2種類があるので注意)。

ヘルメット着用義務の画像

話が少し難しくなるが、安全規格とは別に日本国内でヘルメットを販売する際に各メーカーが取得しなければならないモノがもう1つある。製品安全協会が定めた「SGマーク」や「PSCマーク」だ。SGマークはヘルメットが安全基準に達しておらず、着用者が怪我や損害を負った場合に補償が行われることを示すマークで、125cc以下用と126cc以上用の2種類の使用条件に分かれている。またPSCマークは、ヘルメットが国の定めた最低限の安全基準に達しているかどうかのテストを行い、確認した製品に表示されるもの。PSC/SGマークが入っているものでないと、国内ではバイクの乗車用ヘルメットとして販売することができない。これらのマークを取得していないモノが「装飾用」や「観賞用」などとして店頭に並んでいることもあるが注意が必要だろう。

また、安全性は高いが日本国内で販売ができないヘルメットも存在する。海外のヘルメットメーカーの製品には、日本では一般的ではないアメリカのDOT、ヨーロッパのECE規格などの厳しいテストをクリアしているにも関わらず、国内販売されていないものがある。これは、必ずしも安全性に劣るわけではなく、製品安全協会の認定を受けていないことが理由である場合が多い。海外メーカーでは、ヘルメットの外殻にあえてダメージを与えることで衝撃を吸収し、頭部を保護するという手法をとる場合がある。そういった製品の場合は高い安全性を持つものの、安全性に対する考え方の違いから、日本国内でPSC/SGマークを取得できない例もあるのだ。このようなヘルメットは、仮に十分な安全性を確保していたとしても、万が一の事故の際に日本国内の規格に通っていないことを理由として保険金などが下りない可能性があり、こちらも注意が必要だ。

安全性テストについて

最後に、各ヘルメットメーカーは安全性を確認するためにどのようなテストを行っているのか、各規格によってテスト方法に違いがあるが、代表的なものを紹介するので参考にして欲しい。

衝撃吸収テスト

人体頭部模型(以下、人頭模型)に被らせたヘルメットを各規格で決められた高さから落下させ、人頭模型へのダメージを検証する実験。規格によって落とす高さや、どこにダメージを与えるか、などが違う。

耐貫通性テスト

尖ったものに対するヘルメットの強度を測るテスト。路上にある突起物がヘルメットに当たった際に、ヘルメットを貫通してしまうのでは安全とは言えない。それをテストするため、実際に重量物をヘルメットに落としテストする。

あご紐テスト

転倒時などにあご紐が伸びたり、切れたりしてヘルメットが頭から外れてしまわないかを確認するテスト。あご紐に重量物を取り付け規定の距離を落下させ、あご紐の状態をチェックする。

ロールオフテスト

ヘルメットを脱がすような力を加えて、ヘルメットが脱げないかを確認するテスト。壁に固定した人頭模型にヘルメットを被せ、ヘルメットが脱げるような力を加えてテストを行う。

チンバーテスト

ヘルメットのあご(チンバー)部分の強度を確認するテスト。転倒時にあごを打つライダーも多く、ここの強度が弱いと顔面を傷つけてしまうことがある。あご部分に錘を落とすことで強度を確認する。

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