第1回のコラムでは、リアショックアブソーバーに関する基本的な構造や役割についてお話ししましたが、その性能を知るには「体感すること」、すなわち「乗ってみること」が一番いいというのは言うまでもありません。またサスの沈み込み具合などを数値で表し、そこから性能の違いを知ることもできます。そこで今回は、ハーレーの中でも人気モデルのひとつに数えられるFXDLダイナ・ローライダーに、オーリンズのリアショック「S36E」を装着し、「体感」と「数値」という点から違いを探っていきましょう。
レディス・ハーレーにも登場してくれたH-Dシティ川越店勤務の小瀧さん、6年前に念願のFXDLダイナ・ローライダーを手に入れたのだが、乗り出してまもなくサスペンションの固さが気になり、これまでに一度他メーカーのものに変えたそう。自身の身長(足つき性)も考慮してのチョイスだったが、乗り心地が向上することはなく、「リアサスペンションは以前から悩みのタネでした」と言う。
小瀧さんが気にされていたのが、「サスペンションを換えることで足つき性が変わること」でした。確かに彼女の身長を考えると、車高が低いローライダーは安心して乗ることができる車両です。それゆえ、足つき性の変化は重要と言えるでしょう。現在小瀧さんが付けているサスペンションは284mmなので、305mmだと2cm高くなります。ただ、S36Eはプリロード調整で若干のローダウンが可能ですし、少々足つきが悪くなる反面、走破性や車体バランスなど、数々の恩恵があるのも事実です。このあたり、ぜひ小瀧さんに体験していただきましょう。
沈み込まなくてもダメだし、沈み込み過ぎてもダメ。自分で触ってバランス感覚を養ってくださいね。
新しいサスペンションを取り付けた際に重視せねばならない部分、それは「サスペンションがバランスよく沈み込んでいるかどうか」です。バイク本体の重さやオーナーの状態によってここのバランスは変わってきます。例えばダイナの現行モデルは、2006~2007年を境に車重が50キロもアップしています。オーリンズはこの車重アップに伴い36Eの設定を固めに変更したのですが、小瀧さんの2001年モデルだと逆に50キロ軽いということになり、イメージしているより固く感じるかもしれません。こうしたポイントから乗り味は大きく変わるので、調整が可能なサスペンションを付けている方は、自分の好みの乗り味を追求してみてください。
ノーマル | オーリンズS36E | |
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フリーの状態のショック長 (Length) | 284mm | 305mm |
車両に装着した状態のショック長 (1G[ワンジー]) | 283mm | 296mm |
ライダー乗車時のショック長 (1G’[ワンジーダッシュ]OR[乗車]) | 278mm | 289mm |
ウノパーウノ尾山台店近くの石畳で走行テスト。これだけで変化を体感したそう。
以前サスを取り替えた際に期待したほどの変化がなかったので、正直今回の交換に際していささか疑心暗鬼な部分がありました。それが、これほど変わるとは! 今まで道路の段差やマンホールの上を走るときはかなり気を使っていましたが、まったく気になりません。それどころか、段差を走るのが楽しくなったぐらい(笑)。あとはライディングのバランスも向上しました。特にカーブや右左折の際、リアがしっかり沈み込んでくれているのが分かるので、自ずと姿勢が良くなり、ちゃんと前方を確認しながら曲がれるんです。サスペンションを替えるだけで、こんなに乗り味って変わるんですね!
現状を数値化するだけでも認識はずいぶんと変わる。まずは今の状態を知ることから。
冒頭でも書きましたが、サスペンションの性能を知るには「体感すること」が最善の手段であるのは確かです。ただ、「じゃあ買ってみるか」と手軽に買うことが難しい価格であることもまた事実。“サスペンションを換える”ことはカスタムとメンテナンスの両立につながるわけですが、それこそ費用対効果という点から見ても、それ相応の根拠が欲しいところですよね。今回のコラムでお見せした取り替え前と取り替え後のサスペンションの各数値を記したものは、ひとつの基準になると思います。当店ではこのように取り替え前の状態でのチェックも行いますので、ご興味がある方はぜひ一声かけてください。
若い頃からさまざまなバイクを乗り継いできた、根っからのバイク好き。現在はスウェーデンのサスペンション『オーリンズ』のアジア・ディストリビューションである『カロッツェリアジャパン』の社員として、同社が運営するオーリンズ・サスの販売店『ウノパーウノ』尾山台店の店長を務める。