VIRGIN HARLEY |  第2回 リアショックの取り付けサスペンション徹底解析

第2回 リアショックの取り付け

サスペンション講座の画像

第1回のコラムでは、リアショックアブソーバーに関する基本的な構造や役割についてお話ししましたが、その性能を知るには「体感すること」、すなわち「乗ってみること」が一番いいというのは言うまでもありません。またサスの沈み込み具合などを数値で表し、そこから性能の違いを知ることもできます。そこで今回は、ハーレーの中でも人気モデルのひとつに数えられるFXDLダイナ・ローライダーに、オーリンズのリアショック「S36E」を装着し、「体感」と「数値」という点から違いを探っていきましょう。

レディス・ハーレーにも登場してくれたH-Dシティ川越店勤務の小瀧さん、6年前に念願のFXDLダイナ・ローライダーを手に入れたのだが、乗り出してまもなくサスペンションの固さが気になり、これまでに一度他メーカーのものに変えたそう。自身の身長(足つき性)も考慮してのチョイスだったが、乗り心地が向上することはなく、「リアサスペンションは以前から悩みのタネでした」と言う。

サスペンション講座の画像

小瀧 奈緒美さん

ハーレーダビッドソン シティ川越店 営業担当
2001年式 FXDL ダイナ・ローライダー(2004年購入)
走行距離:約23000キロ 身長153センチ / 体重44キロ

我妻店長のヒアリングチェック

サスペンション講座の画像

足つき性と走破性の
両立は可能です!

小瀧さんが気にされていたのが、「サスペンションを換えることで足つき性が変わること」でした。確かに彼女の身長を考えると、車高が低いローライダーは安心して乗ることができる車両です。それゆえ、足つき性の変化は重要と言えるでしょう。現在小瀧さんが付けているサスペンションは284mmなので、305mmだと2cm高くなります。ただ、S36Eはプリロード調整で若干のローダウンが可能ですし、少々足つきが悪くなる反面、走破性や車体バランスなど、数々の恩恵があるのも事実です。このあたり、ぜひ小瀧さんに体験していただきましょう。

リアショックの取り替え手順を追え

サスペンション講座の画像

【01】取り替え前のサスチェック

まずは取り替える前、現在取り付けているサスペンションの現状のショック長を計ります。理由はもちろん、取り替えた後のサスとの差を数値で確認するため。
サスペンション講座の画像

【02】1G乗車での数値チェック

オーナーの体重がかかったときのサスペンションの幅も合わせてチェック。1G⇒283mmで1G乗車⇒278mm…と、5mmの沈み込み。これは固いでしょう。
サスペンション講座の画像

【03】車体を浮かせて数値チェック

バイクを持ち上げ、重力がかかっていない状態での伸び側をチェックします。1G⇒283mmに対して284mmと、これもほとんど伸縮していません。いやはや……。
サスペンション講座の画像

【04】取り替え前後の数値書きとめ

このように、取り替える前と取り替えた後の各数値を書きとめておきます。体で感じることと合わせて数値の確認もできれば、サスペンションの重要性を理解できますよ。
サスペンション講座の画像

【05】いよいよ取り替え作業開始

取り替え前のサスの数値チェックが終わったら、いよいよ取り替え作業に入ります。これまでいくつもの部品を替えてきましたからね、どうです、手馴れたものでしょう?(笑)
サスペンション講座の画像

【06】新品サスを装着します!

そしてオーナーさん念願の新品オーリンズのリアショック取り付け作業に突入。このとき、すべてのオーナーさんが目を輝かせながら作業に見入っておられます(笑)。
サスペンション講座の画像

【07】取り替え後のチェック開始

取り替えたら終了……ではありません。先ほどと同様、各状態での数値を確認していきます。305mmのサスが1G⇒296mmで取り付け。悪くない状態になっています。
サスペンション講座の画像

【08】自分でできるローダウン調整

取り替え前の283mmと比べると、296mmは若干高くなっていますね。小瀧さんから「足付きが気になる」と聞いていたので、ローダウンするようプリロードを調整します。
サスペンション講座の画像

【09】オーナー荷重時のチェック

新しいサスペンションを取り付けた際に重要なのが、オーナーが乗った際(荷重時)の沈み込みです。体重や体型は人によって千差万別なのでここは要チェック!

POINT:バランスの良い沈み込みを探そう

サスペンション講座の画像

沈み込まなくてもダメだし、沈み込み過ぎてもダメ。自分で触ってバランス感覚を養ってくださいね。

新しいサスペンションを取り付けた際に重視せねばならない部分、それは「サスペンションがバランスよく沈み込んでいるかどうか」です。バイク本体の重さやオーナーの状態によってここのバランスは変わってきます。例えばダイナの現行モデルは、2006~2007年を境に車重が50キロもアップしています。オーリンズはこの車重アップに伴い36Eの設定を固めに変更したのですが、小瀧さんの2001年モデルだと逆に50キロ軽いということになり、イメージしているより固く感じるかもしれません。こうしたポイントから乗り味は大きく変わるので、調整が可能なサスペンションを付けている方は、自分の好みの乗り味を追求してみてください。

ノーマル オーリンズS36E
フリーの状態のショック長
(Length)
284mm 305mm
車両に装着した状態のショック長
(1G[ワンジー])
283mm 296mm
ライダー乗車時のショック長
(1G’[ワンジーダッシュ]OR[乗車])
278mm 289mm
被験者データ:身長153cm / 体重44キロ

小瀧さんのインプレッション

サスペンション講座の画像

ウノパーウノ尾山台店近くの石畳で走行テスト。これだけで変化を体感したそう。

衝撃はもちろん乗り味まで激変!

以前サスを取り替えた際に期待したほどの変化がなかったので、正直今回の交換に際していささか疑心暗鬼な部分がありました。それが、これほど変わるとは! 今まで道路の段差やマンホールの上を走るときはかなり気を使っていましたが、まったく気になりません。それどころか、段差を走るのが楽しくなったぐらい(笑)。あとはライディングのバランスも向上しました。特にカーブや右左折の際、リアがしっかり沈み込んでくれているのが分かるので、自ずと姿勢が良くなり、ちゃんと前方を確認しながら曲がれるんです。サスペンションを替えるだけで、こんなに乗り味って変わるんですね!

サスペンション講座の画像

現状を数値化するだけでも認識はずいぶんと変わる。まずは今の状態を知ることから。

日本の道路事情に適している
サスペンションを体感してみよう

冒頭でも書きましたが、サスペンションの性能を知るには「体感すること」が最善の手段であるのは確かです。ただ、「じゃあ買ってみるか」と手軽に買うことが難しい価格であることもまた事実。“サスペンションを換える”ことはカスタムとメンテナンスの両立につながるわけですが、それこそ費用対効果という点から見ても、それ相応の根拠が欲しいところですよね。今回のコラムでお見せした取り替え前と取り替え後のサスペンションの各数値を記したものは、ひとつの基準になると思います。当店ではこのように取り替え前の状態でのチェックも行いますので、ご興味がある方はぜひ一声かけてください。

プロフィール
ウノパーウノ 尾山台店 店長
我妻 修

若い頃からさまざまなバイクを乗り継いできた、根っからのバイク好き。現在はスウェーデンのサスペンション『オーリンズ』のアジア・ディストリビューションである『カロッツェリアジャパン』の社員として、同社が運営するオーリンズ・サスの販売店『ウノパーウノ』尾山台店の店長を務める。

関連する記事

ピックアップ情報